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三倍

 7…。


 6…。


 5…。


 カウントダウンが5を切った。もう直ぐ、戦いが始まる。胸のドキドキが飛び出しそう。

 どうする私!? 

 部長さんの方が、戦いの経験が上…。操縦技術も上…。なら、私にできるのは?


 考え中…。


 できるのは、短い間だったけど、今までやってきた事を全部ぶつける。それしかない!

 方針が決まったら、前みたいにドキドキがワクワクに戻った。


 カウント0!


 その瞬間にペダルを目一杯踏み込む!


 シリンダーが伸び、タイヤの付いたアームを下げ地面に押し付ける。『ギャウゥゥゥゥゥ』とタイヤが高速空転から『ググッ』と機体をし出す。


 まだ『赤い奴』は動かない。何かある!? でも、考えない、今の私を全部ぶつけるって決めたんだ!


「行けぇぇぇぇぇ!」

 トリガーを引く。『ダッ!ダッ!ダッ!』とライフルが火を吹く。


 『赤い奴』は、左脚を軸に右脚を後ろに下げる様に半回転。こちらに左側を向け、弾丸をかわした。

「日向さん。上手くなりましたね。正確な射撃です、故に読み易い。」

 今度は右脚を軸にして左脚を後ろに下げ、こっちに正面を向けた…と、ライフルのマズルフラッシュが見えた。


 ヤバい! シールド、間に合え!

 モニターに映るシールドの面積が減ると、同時に耐久力が下っり[ALERT]を表示した。

「今のは、シールドが弾かれた…。あのライフルは凄い威力だ…。」

 また、マズルフラッシュが見えた!

「受け続けるとまずい。」

 咄嗟に右脚を軸に、左脚を後ろに引き一回転して、ライフルのダメージを減らす。


「今のは…。どこかで…。」

と、部長は驚いた口元が微笑っていた。


 モニター室では、

「あー!」

と、副部長。

「おーっ!」

と、小南。

「はっ!」

と、美星。

「ほう。」

と、百地。

「今のって、どこかで見た気がするんだけど…。」

 皆に小南が問う。

「今のは…。」

 副部長が記憶を辿る。

「確かに見た事がありますね…。」

 美星も思い出そうとする。

「あ…。あれは…。」

「知っているの百々っち?」

「あの動きは、この前のイベントの模擬戦の動画で四本腕でやった奴ですね。」

 小南、美星、副部長が思い出したという顔になった。

「あの動きをするなんて。今回も驚かせてくれますね。」

と、美星が皆に。

「うん、うん。」

 モニターに視線を戻す小南。そのまま、この話は終了した。


「桃河さんのやったのを見様見真似でやったけど…。」

 上手くタイミングが合ったものだと思った。

「でも、次は上手くいくとは限らない。」


 機体を前後左右に振り回避行動をとりながら、距離を詰める。

「接近戦なら、あのライフルは使い難なるはず。」

 勝手に決め付けて、

「いけぇぇぇぇぇ!」

 トリガーを引き『ダッ!ダッ!ダッ!』と連射する。当たらなくても、少し反撃のタイミングをズラせれば。


 『赤い奴』が、左右に機体をゆらゆらと動かし攻撃をかわす。それも、最小限度で。確か、[見切り]とか言うはず。だから、初期位置からそんなに動いてない。

「やーぁ!」

 『ドーン!』と、ミサイルを発射。ホーミングあるから、かわしにくいはず。

「まだまだぁ!」

と、ライフルを撃ち込む。


 ライフルの攻撃をゆらゆらと見切る『赤い奴』。そして、ライフルの銃口が上側に向き火を吹く。

 そして、『ちゅどーん!』とミサイルが撃ち落とされた。ミサイルって落とせるんだ! そんな事できるなんて考えもしなかったけど、これだけリアルなんだからできても不思議じゃない。


 感心している場合じゃない!

「当たれぇぇぇぇぇ!」

 ライフルを撃ち、ミサイルを発射。そこから、再度ライフルにミサイル。


 『赤い奴』は、ゆらゆらと最初のライフルの射撃をかわし、ミサイルを撃ち落とした…。と、私がやったみたいに右脚を軸にして、『くるり』と二度目のライフルの攻撃を一回転でかわし、正面を向いた時にミサイルに向かってライフルを撃った。当然、ミサイルは撃ち落とされた。流れる様な一連の動作。


 やっぱ、部長さんは凄いな。

「それでも!」

と、ペダルを踏み込む足を緩めずに、前に出て距離をつめる。


 機体を前後左右に斜め方向とできるだけの回避行動で、『赤い奴』のライフルをかわし近付く。


 『シュボボー!』と煙を吐きながら肩に装備されているロケット砲が飛んで来る。左にかわしながら、ライフルで反撃する。



「これぐらい近付ければ…。」

 ライフルとミサイルをいっぱい撃つ。出し惜しみはなし。

 そこからシールドを構え『赤い奴』へ一直線に突っ込む!


 『赤い奴』は、ライフルの弾をかわしながら、ミサイルを落とし、更にこっちを向いて撃ってきた。モニターのシールドが揺れ、[ALERT]が出る。


「もうちょっとだから!」

 シールドでガードした陰で、ライフルを剣に持ち換える。


 攻撃に耐え『赤い奴』を目の前に捉えた。

「いけぇぇぇぇぇ!」

 剣を振りながら『赤い奴』の右側に滑り込む。『赤い奴』からすると左側。


 背後からに近い角度で剣で斬る。と思った瞬間に『赤い奴』は、左に機体を旋回させ、左肩の装甲を差し出した。


 『ど~ん!』と爆発し、振り下ろした剣が跳ね上がり、機体が少しよろけて『赤い奴』から離れた。


「な、何? 剣が爆発した?」

 私の装備している剣は、爆発するような奴じゃない…。


 あぁぁぁぁぁ! また、思い出した!


 美星先輩に質問した装備の一つだ。確か、[リアクティブアーマー]って名前で、内部からの爆破でダメージを相殺する装甲…。こんな風になるんだ。


 回想で一瞬、手が止まっていた。

「やば!」

と、我に返る。


 『赤い奴』は、ライフルをポイって捨てた。


「えっ!?」

 驚いている間に、右手に剣(?)と左手にピストルを装備した。右の剣は、長方形の中華包丁を四倍ぐらいに伸ばした変わった形。

 これも、後で[鉈なた]だと知った。何でも、突くはできないけど少し短い刀身ながら威力はあるとか。


 『赤い奴』のピストルの銃口が、こっちを向き火を吹く。


 はっとして、一気にペダルを踏み込む。『ギュルギュル』と空転からの『グオォォォォォ!』と高速ダッシュ! 左に機体を疾走はしらせる。


「ライフルじゃないなら、少し距離をとって…。」

 自分に納得させるように口に出した。私の機体は加速して、二機の距離が離れる。

 その証拠に『赤い奴』が見る見る大きくなる!

「!?」

 驚きを通り越してパニック!?

 私の方が先にダッシュしたハズなのに、『赤い奴』が目の前にいる!? 移動補助装備は、どう見ても付いてない…。な、何で!?


 またまた、思い出したよ…。もうっ、某サッカー漫画じゃないのに、回想シーンばっかり!!!


 日課を終え、部室に入ると聞こえてきた。

「あれはですね。」

と美星先輩が、副部長さんに。

「うんうん。」

「私的な見解ですが…。」

 聞き手に回っている副部長さん。

「あの戦艦って新造じゃないですか。」

「うん。そうね。」

「なので、乗組員は不慣れだったと思うんでよ。」

「確かに…。」

「それで、レーダーの設定が変わっているのに気が付かなかったのでは?」

「設定?」

「そうです。それまで使用していたよりもアップになっていた事に。」

「うんうん。」

「だから、一つの目盛りがそれまでの距離よりも短かったとしたら…。」

 副部長さんに問い掛けた。

「同じスピードでも、速く動いている様に思う…。」

「それが、真実だと思うんですよ。実際は一.三倍ぐらいだと後から設定されましたから。」

「説得力あるぅ。」

 少しけ反る副部長さん。

「あくまでも私的な見解ですが。」

「じゃあ、三倍の速度っ言うのは…。」

「噂には尾ひれ尽きますから、一.三倍が伝わるうちに三倍だけが独り歩きしたとすれば…。」

「なるほど、筋は通ってる。でも、やっぱり三倍って響きが良いよのね。」

「それは確かに。」

 全く何の話か解らなかった。

「あら、お帰り日向さん。」

 気が付いた副部長さんが迎えた。

「何の話ですか? 三倍って?」

「お帰りなさい。あっ、それはですね。」

 美星先輩が答えてくれた。

「赤くて角が付いている機体は、通常の三倍の速度で移動できる…、ってネタ?」

 最後は疑問形になってた。

「ネタかな?」

 副部長さんも疑問形だ。

「赤くて角が付いている機体は、通常の三倍の速度で移動できるですか…。」


 ネタなんだと思い、忘れてていた。今までは!

 でも、目の前で起きている事は、ネタじゃなくて現実だし!


 白兵距離に入った『赤い奴』は右の鉈で斬り掛かってくる。


「シ、シールド!」

 『がいぃぃぃぃぃん』スピーカーから出た音は間に合ったと言う事。

「一旦、距離を…。」

 手の動きが口に出た。操縦桿は反対に倒す。

 『ギュルギュル』とタイヤが空転して、運動エネルギーを受け止める。一瞬の後、機体は反対方向へと加速する。


「や、やっぱりぃぃぃぃぃ!」

 私の機体の方が先に加速してるのに、目の前に『赤い奴』が居る! これって、ネタじゃなくて何かの魔法とかじゃないのぉ!?



 落ち着け私…。こんな時は、そうアレ!

「ヴァァァァァルカン!」

 トリガーを引くと頭部の銃口から連射された。呪文の効果で威力と命中率が上がっているはず!


「そう来ましたか。」

 回避行動を取りつつ、距離を置く。モニター越しに機体を見る目は鋭く、口元は微笑ってる。

「良い判断です。」


 メインのカメラを破壊されるのを嫌がるのは共通だからね。


 距離が離れたのを確認しつつ、遮蔽物の陰に入る。

「すー。はー。すー。はー。」

 新呼吸して、先ずは落ち着こう。直に仕掛けて来るかな?


 『赤い奴』の方が速い秘密は? 本当に赤くて角が付いてると三倍速い?

 いつの間に考えてた。

 はっとして、今は考える時じゃない、頭をニ、三度左右に振り切り変える。速いのは判ったから、それを計算に入れて戦う! それが、今できる事だ。

 操縦桿を『グィ』と握り直す。


 しばしの沈黙。

「来ない?」

 ライフルに持ち替えると、ペダルを踏み込み、遮蔽物の陰から飛び出す。


 そして、見たのは、

「あっ! ライフル拾ってる!」

 あっさりと手放したライフルを『赤い奴』は拾ってい、構えると撃ってきた!


「こっちもぉ!」

 回避行動を取りつつ、ライフルで反撃する。


 今度の『赤い奴』の行動は、回避行動を取りながら移動していた。


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