ビンゴ
コックピットから出ると、丁度桃河さんも出るところだった。
ん?
何か変?
その答えたは、直ぐに判った。変に感じたのは、客席が静まりかえっていたから。コックピット入るまでは、凄い賑わっていたのに。
ちょっとの間。
「あっ…。あまりの素晴らしい戦いで、我を忘れて魅入ってしまいました!」
慌てて司会者が、
「[アシャー少佐]と[マーベク少佐]に拍手を。」
その直後、客席から割れんばかりの拍手が起こり、歓声が上がった。
桃河さんは大きく手上げ振っていた。私は、恥ずかしいので小さく手を上げて振った。
それは、しばらく続いた。
一段落したところで、
「引き続きまして、ビンゴ大会を行います。」
司会者が上手く割り込ませた。
「皆さん、スマホにアプリの準備葉良いですか?」
客席から『おー!』と…。返事だよね。
それにしても、スマホでビンゴ大会できるなんて、私って時代から取り残されてる?
「それでは、ポチッと。」
司会者がスマホらしきものの画面を押した。あれ、色々と出来るんだなと感心。
舞台の大型モニターが、ビンゴ大会仕様になった。
「では、お二人はこちらへ。」
舞台隅の司会者のところへ呼ばれた。
「それでは、お二人に交互にビンゴの籠を回してもらいましょう。」
司会者が持っていたスマホらしきものを渡された。
渡されたものは、やはりスマホか、小型のタブレット。区別は付かないよね。
画面には、二本の両矢印が円くなっていて、その左右に色の違う矢印があり、それぞれに[混ぜる]と[引く]とあった。
「私が先にやりますから、見ていてください。」
「あっ、はい。」
スマホらしきものを桃河さんに渡した。
「さあ、ビンゴ大会を始めましょう。」
司会者が盛り上げる。
「では、どうぞ。」
合図で、桃河さんは画面の円を指で[混ぜる]方向に数回『ぐるぐる』やってから、今度は[引く]の方へ回した。
舞台の大型モニターに、あのビンゴの玉が入った籠が出て、桃河さんの操作に合わせて動く。
ビンゴの籠から出た玉を見て、
「第一回目は!」
司会者が大型モニターに映った数字を読み上げた。
「はい。」
桃河さんがスマホらしきものを渡してくれた。
同じ様に画面を操作した。
同じ様に出た玉の数字を読み上げる。
これが繰り返された。
数回目。
今までとは違う音楽が流れ、大型モニターに[BINGO!]の文字が踊った。
「最初のビンゴ出ました!」
と、司会者。
「では、舞台の上へ、どうぞ。」
客席から一人の男性が上がって来た。
「記念品を[アシャー少佐]と[マーベク少佐]のお二人から渡してもらいましょう。」
スタッフさんが近付いて来て、
「これを。」
記念品を渡された。
「おめでとうございます。」
桃河さんと二人で手に持った記念品をビンゴした男性に渡した。
と!
「皆さん。今回のビンゴ大会は記念品だけでなく、このお二人の少佐との記念撮影もあります。」
……。
今、なんて言ったの司会者さん!?
「おぉぉぉぉぉ!」
「絶対に当てるぞぉぉぉぉぉ!」
「やったー!」
客席が今までで最高に盛り上がった。
本当の嫌な予感の正解は、これだったみたいだ…。
桃河さんと私の間に、ビンゴした男性が入る。
「笑顔。笑顔。」
と、桃河さん。
笑顔作ろうとすると、ホッペがピクピク…。無理だぁ。
「では、撮りますね。」
と、スタッフ。
「記念撮影したものは、後でデータでお送りいたします。お楽しみに。」
司会者が、また盛り上げた。
ビンゴ出るなぁ! と呪いをかけながら回した。
でも、記念品が無くなるまでビンゴ大会は終わらないんだよね…。だ、駄目じゃん!
そして、記念品が無くなるまで繰り返される記念撮影!
最後の方は、悟りを開いたみたいになって、無表情だったらしい。
「これが、最後の記念品になります。」
司会者の台詞が、救いに聞こえた。これで終わりなら、頑張れる…。
無事に最後の記念品贈呈と記念撮影が終わった…。
「これにて、ササラセ精機の次期主力機体発表会を終わらせていただきます。」
ようやく、待っていた台詞が聞けた気がする。
「それでは、最後にお二人の少佐に惜しみない拍手を。」
客席からの拍手と声援を受けながら、私達は舞台袖へと消えた。




