行方
さっきの攻防の後、いつの間にか動かなくなった二人。正確には二機ね。
睨み合っていた。違うね、見つめ合ってたんだ。
今のやりとりが、愉しくて仕方なかったから。桃河さんも同じだと思う。
操縦桿を倒し、ペダルを踏む。タイヤが唸りを上げ空転からのグリップ。弾かれた様に動き出す。それも、同時に。それは、まるでシンクロナイズドスイミング。息ピッタリの二人だ。
私は機体を前後左右にと回避行動を取りながら、ヘビーライフルを撃ち込む。
それをかわしながら、シールドから『ギャンギャン』と撃ってくる。
そんな攻防が少し続いた。
そして、戦いは終局へと。
「当たれぇぇぇぇぇ!」
気合いの入った呪文と共にトリガーを引く。
『ドゥ!』と撃ち出された弾丸は、『ギャンギャン』へ命中…する瞬間にシールドで受けた。と、思った瞬間に我が目を疑った。
「これなら!」
左の操縦桿を目一杯引き、ダッシュペダルを踏み込む桃河。
残った左のシールドでヘビーライフルの弾丸を受けた瞬間に、右脚を軸にして左のシールドを後ろに引く様な軌道。
つまり、反時計回りに機体を旋回させた。
「今のは…。」
驚いていたが、頭の中では今の動きを考えていた。
出た結論は、
「ヘビーライフルのダメージと威力を両方共に受け流した…。」
と、口に出してた。
ここに来て、なんて動きをするんだ桃河さんは。背筋が、ゾクゾクってした。
ワタシ、ワクワクしてきたぞ!
今の動きに見惚れていた、ほんの一瞬(だと思う…)が、私の反応を遅らせた。
「行きますわよ!」
『ギャンギャン』が旋回した勢いを使い加速して、一気に間合いを詰める。
「ヤバッ!」
回避行動と共にヘビーライフルで狙う。
「遅い!」
間合いに踏み込んだ『ギャンギャン』は、左の剣を振り下ろす。
それは『グシャー!』と私の機体の右肩に食い込み、切断した。
[ALERT]が表示され、警告音が鳴る。
咄嗟の判断で反撃した、自分を褒めよう。
左のシールドを水平に上げ、『ギャンギャン』に向けてグレネード弾を、
「まだだぁぁぁぁぁ!」
と、撃ち込んだ。
『ちゅどーん!』と爆発! それは、当たったって事だ。
操縦桿を引き、素早く機体をバックさせ、間合いを開ける。
モニターの、グレネード弾の所にも☓(ばってん)が付いた。今ので終わりだ。
残っている武器は、両薙刀だけになったって事か…。
私はシールドを捨て、武器を持ち替えた。
シールドを『ぽぃ』っ投げ、その手で腰の後ろに装備されていた[Z字]に折り畳まれている両薙刀を取り構えた。
すると『ジャキーーン!』と一直線に伸びる。カッコいい!
こっちは最後の武器だけど、向こうはまだシールドも残っているし…。やっぱり、四本腕はズルい。
「その両薙刀は、趣味入ってますわね。」
「確かに。」
機体の状況の確認を中断して、桃河さんの問い掛けに顔を上げ、『ギャンギャン』見た。
「あっ。」
思わず声が出た。なんでかって、『ギャンギャン』の右腕が肩の下辺りから無かったから。
さっきのグレネード弾は右腕をふっ飛ばしていた。
「お互いに、右腕を破壊するなんて気が合いますわね。」
「そうですね。」
会話しながら、お互いの隙きを探っていた。
また、睨み合っていた。
ジリジリと操縦桿を握る手に力が込もる。
「行けぇ!」
と、私。
「はっ!」
と、桃河さん。
発した呪文は同時。
二機が『ギュイーーン!』と、同時に前へと出て、間合いに踏み込む。
そして、刃が交差する直前。
「ここだぁ!」
私は機体の右脚を軸にして左脚を後退させ、反時計回りに旋回する。さっき桃河さんがやった応用だね。ようするにタイミングをズラしたって事。
「流石と今は褒めましょう!」
ズラされたタイミングを補う様に左脚を軸にして旋回する『ギャンギャン』。
そして、お互いの刃が交差する。
「とぉぉぉぉぉ!」
振り下ろす両薙刀。
「やぁぁぁぁぁ!」
繰り出される剣。
決着の時は来た。
私の一撃は『ギャンギャン』の左肩口からの斜めに深く入った。
桃河さんの一撃は、私の機体の左脇腹に浅く入った。
「今日は、私の勝ちですね。」
両薙刀は更に『ギャンギャン』に食い込んで行く…。
「あら、言いませんでしたか?」
「あっ!」
また、フラグが!
「勝ったと思った瞬間が負けた瞬間だって。」
気が付いた、食い込んで行くって思ってた両薙刀の背中に抜けた刃の部分が、残っているシールドで止められていた。
いつの間に!
そして、頭上から影が落とされる。それは、サブアームで振り下ろされる剣だった。
剣が首元に刺さり、そこから『メリメリ』と機体を貫く。
「ど、何処に剣が…。」
ふと、目に入ったのは『ギャンギャン』の吹き飛ばされた右腕。そこに握られているはずの剣が無い!
「サブアームで拾ってたんですね。」
「ご名答。」
「いつの間に…。」
「吹き飛ばされ、よろけた時に。」
「まさか、そんな使い方できるなんて…。」
「私も、こんな使い方できるなんて思いませんでしたわ。」
咄嗟に思いつくなんて、流石桃河さんだ。
そして、モニターが赤くなり、[LOST]に続いて[GAME OVER]の文字が出た。
また、負けちゃった…。でも、今回も楽しかったー。




