狩り
「はっ! はっ!」
でっかい木の根っこを踏み台にしてジャンプ。着地と共に、木々の間を縫うように、また駆ける。
只今、森の中を全力疾走中。スタミナがどんどん減っていく、そろそろ苦しくなってきた。
でも、ペースを落とすわけにはいかなかった。何故って?それは…。
「ピーーィ!」
合図の笛の音が森に谺する。
右前方って言っても、三十メートルは有にあるけど。その辺の茂みの中から上半身を出し地面を指差している百地先輩が見える。
指差している場所が目的の場所だと、スタミナ切れの体に鞭を打つ。
『バザザザザーーー!』と私の後ろの茂みが割れ二足歩行のでっかい恐竜が飛び出した。その大きさは私だと軽く丸飲みにされる程。口も大きいけど。
「ヤバ!」
追い付かれる! なんとかあそこまで保って!
後、十メートル!
後、五メートル!
後、一メートル!
ギリギリ間に合った!
目的の場所を駆け抜けた時、『ドサァァァァァ!』と言う大きな音と共に、
「グワッー!」
と、呻き声。
振り向くと、でっかい恐竜が落とし穴に落ちて、地面から上半身(?)だけを出した状態になっていた。
「今です!」
副部長さんが茂みから自分の体よりも、でっかい弓を構えて出て来た。矢を番え引き絞る。矢に力が込められ『ズダーー!』と恐竜へ撃ち込まられる。
「いくよ!」
少し離れた場所に腹這いになって、長い銃身の付き身長よりも長くなった弓銃を構え、間髪入れず『ズキューーーン!』と狙撃する小南先輩。
「参ります!」
背中の二振りの剣を左右の手で抜き恐竜に駆け寄り、まるで踊っている…、よりも舞っているかの様に無数の剣撃を放つ百地先輩。
そして、私は駆けていた勢いを『ザシャーーー!』と両足で殺して、振り返り恐竜に向かい駆け、背中に背負った剣を頭上に抜刀する。
その剣は大きく、鉄塊と呼ぶのが相応しいモノだった。結構、重いんだこれが。
恐竜の手前で止まる勢いを利用して、鉄塊の大剣を振り下ろす。
それは『ズバシャーー!』と恐竜を斬り付け、『ズシャーン!』と大地をも斬った。
「あんぎゃー!」
苦しむ恐竜。後、少し!
私は体を左に回転させ、その遠心力を利用して大剣を振り上げ、再度頭上に構える。
「いけぇぇぇぇぇ!」
『ズバシャァァァァァン!』と大剣を振り下ろした。恐竜を斬り付けた大剣は『ズシャァァァァァン!』と大地が揺らす。
「グオォォォォォ!」
苦悶の鳴き声を上げ、恐竜の体から力が失われ『ドサッ!』と落とし穴の中へと倒れた。
「やった! 倒した。」
ガッツポーズの私。
「南無…。」
印を結ぶ百地先輩。
「やりましたね。」
ぴょんぴょん跳ねる様にコッチへ来る副部長さん。
「やりぃ。」
右手の人差しと親指を伸ばして[銃]を作り、『ばきゅーん!』のポーズをする小南先輩。
「そうそう、戦利品〜。」
と、手を離したが地面に深々と刺さっていた大剣は倒れなかった。最後のは、超思いっきり振り下ろしたからね…。
恐竜に近付いて行くと
「待って、待って。」
と、後から副部長さん。
「折角だから写真撮りましょう。」
振り向くと、ウエストバッグからスマフォと自撮り棒を出して用意していた。
「準備完了。集まって。」
恐竜をバックにして撮影が始まった。
「撮るよ、笑って〜。」
『パシャリ!』
「ポーズ変えて〜。」
『パシャリ!』
「もう一枚ね。」
『ガブリ!』
ん? 真っ暗になった…。全く身動きがとれないし、何だかネバネバする。
「ひ、日向さんが!」
副部長さんの慌てた様な声が遠くで聞こえる。
「喰われた!」
小南先輩の声も遠い。
「最後っ屁って奴ですね。」
やっぱり、百地先輩の声も遠い。
どうやら私はあの恐竜さんの最後の力で喰われたらしい…。
…。
く、喰われた!? ヤバい! 逃げ出さないとだ!
クネクネと藻掻きながら、体を動かしてみる。
動かし続けていると『ポン!』と頭が光の中に出た!
「で、出られた…。」
見回すと、そこは…。
私の部屋!? そして、身動きがとれなかったのは体に巻き付いた布団…。しかも、床の上だ…。
寝ているうちに布団が巻きついて、床に落ちたらしい。どんだけ寝相がわるいんだ私はと反省。
ベットの方は、アカ助がど真ん中で寝ていたのは言うまでもないよね。
はあ、また朝から疲れた。
その日は、体が怠かったけど…。若さで振り向かない、でなんとか乗り切る。
夢を覚えているって事は眠りが浅いのかな? それとも、内容が濃すぎるから覚えているのか…。両方思い当たる、気がする…。




