認定
開閉スイッチを押して、ハッチを開き外へ出た。
視線の端に入ったのは隣のハッチが開き、あの白い人も出きた。そして、ギャラリーに向って一礼して、手を振り始めた。
「応援、ご苦労様ですわ。」
お礼をするとギャラリーから割れんばかりの声援が白い人に投げられる。
ファンクラブの人達って言ってた気がするけど本当だったんだ。
私は大尉の所へ戻ろうと歩き始めた。
「あの、すみません。」
後から声がかかった。
「は、はい。」
振り向くと、二人の男性が立っていた。同い年ぐらいから、もう少し上ぐらい? 一人は痩せ型で背が高い。もう一人は背はそんなに高くないけど、ふくよかな体形。共通してチェックのシャツにジーパン。背中にリュックを背負っている。
「あの、写真良いですか?」
背の高い方の男性が、手にしたスマホを操作していた。
「わ、私!!」
「はい、オタクさんを撮りたいのですが。」
「こ、困ります!」
両手を目の前でブンブンと振り断る。
「お願いします。」
二人でハモった!
「駄目ですってぇ。」
「そこを何とか。」
ふくよかな方も積極的に来る。
しばらく、繰り広げられる攻防戦。
当然、
「貴方達!」
声がかかる。
「ひっ。」
驚く二人に釣られ『ビクっ!』と私も驚いた。人間驚くと本当に漫画みたいになるんだと初めて知った。
気が付くと二人の男性の後に、あの白い人が腕組みして立ってる。立ってるだけで、威圧感半端ないな。
恐る恐る振り向く二人。
「貴方達、確か私のファンクラブじゃありませんでした?」
「え、あの、その。」
「どういう事ですの!」
「す、すみませんでしたぁぁぁぁぁ!」
速っ! 運動が苦手そうな二人が凄い勢いで逃げてった。
「あ、ありがとう御座いました。」
頭を下げようとした時に、食い気味で、
「別に助けたわけじゃありませんから、ファンクラブの者の素行は私の評価なので!」
お、怒ってるの!? それともツンデレ?
白い人が、つかつかと近付いて来て目の前に。
そして、右の掌を軽く胸に当て、左手は腰の後に回し軽く頭を下げ、
「私、笹々瀬桃河と申します。」
「はぁ…。」
……。
しばしの沈黙。
「あなた!」
右の人差しでビシッ!
「こちらが名前を名乗ったら、名乗るのが常識でしょう!」
「ご、ごめんなさいぃ!」
両手で顔をガードし、
「わ、私は向日葵って言います。」
「よろしい、向日葵さんですね。」
「は、はい。そうです。」
「では、葵さん。あなたに私の事を名前で呼ぶ事を許可します。」
な、なにそれ? どういう事? キョトンとしてしまった。
「葵さん、あなたに私の事を名前で呼ばせる。この意味が分かりますか?」
「わ、分からないです。」
正直に答えたよ私。
「では、教えて差し上げましょう。あなたに名前で呼ばせる理由は…。」
ゴクリ。固唾を飲む音がこんなに大きいなんて。
「葵さん。あなたを私の『ライバル』と認めたからですわ!」
「ほえ!」
今日一番の驚いた顔になった!
「今の対戦で分かりました。私をあそこまで追い込むなんて…。大尉に弟子入りしようとしただけの事はあります。」
「で、弟子入りは…。」
桃河さんは、いつの間にか身振り手振りが付いて、目を閉じて自分の世界に入っていて聞いてなかった。
「特に最後は良かったですわ。私に切り札を使わせるなんて…。」
目を開きこちらへと向き直り
「と、言う事で。」
ポケットからスマホを取り出して、
「連絡先の交換を…。」
「ご、ごめんなさい。私スマホ持って無いんです。お母さんがまだ早いって…。」
「ストーップ!」
強い口調と右の手の平で遮り、
「私は葵さんのお家の教育方針をとやかく言うつもりはありません。お母様がまだ早いと言うなら、そうなのでしょう。」
モヤモヤってお母さんの顔が出て来た。あっ、ダブルピースした! 本当に教育方針なの?
「あっ、はい。」
桃河さんって「今時、スマホ持って無いんだ。」とか言わないんだ。




