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副部長

 日課のランニングを終え、部室に帰る。

 その日は、いつもと違っていた。


 扉を開けると、副部長さんがぴょんぴょんと飛び跳ねて、近付いて来て迎えてくれた。

「お帰りなさい〜♫ 日向さん。」

 手を取って上下に振られた。なんだか、凄いテンションが高い。

「今日はね。私のお薦めの機体を使いましょう。」

 なるほど、だからテンションが高いのか。同じ機体を使う人を増やそうとしているとか企んでいるって部長さんが言ってたな。

「ささっあ、行きましょう!」

 手を強く、引っ張られる。

「あのタイヤが…。」

「あっ…。」


 タイヤを降ろして、そそくさとコックピットに入ると、待ちかねていた様に。実際に待ちかねていた。

「日向さん。今日はね。私のお薦めの機体を試しましょう。」

 モニター越しに見ても、さっきりよりも嬉しそうに見えるの気の所為せい

「では、【USI‐04−弩万どま】を選んでください。」

 いつの間にか慣れた手つきで、機体を選択する。

 昨日使った機体がスリムだったからか、この機体の印象は…、

 凄いゴツい!

 それ以外の言葉を私は持っていない。

 私がいつも使っている『リョウサン』を二回りぐらい大きくした感じがする。

胸板も厚く、腕も脚も太い。如何にも重量級ですよ! って感じだ。

「見ての通り、その機体は重装甲、重火力に高い耐久力。ちょっとや、そっとじゃびくともしないけど、その分機動性が犠牲になってます。」

「でね。武装のお勧めをS−1にセットしておきました。」


 武装を選択。

 右腕に、円筒形に並べられた細い筒が、根本で本体の大きな円筒形で繋がり、更にそこから弾がベルトで繋がったのが、背中に繋がっていた。確かに、ガトリング砲だった様な…。

「右の武装が、右腕ガトリング砲、両肩ミサイル。左が、両脚ミサイル、ロケットハンマー。特種で、フルファイアー!」

「ロケットハンマーに、フルファイアー!?」

 何とも心躍るキーワード二つも!

「ロケットハンマーは、その名の通り大っきいハンマーにロケットブースター付いてます。あてると大ダメージ確実です。」

 説明する話し方が、更に弾んだ。

「フルファイアーは、当然装備されている武器を一斉に発射です!」

 頭の中で、もやもやっと想像してみる。

「カッいいいです!」

「でしょ、でしょ! でも…。」

 やっぱりあった、でも!

「弾が、あっという間に無くなります。」

「なるほど。」

 リアルな分、リスクは当然あると言う事は最近よく解ってきた。

「ここぞ! って時に使うと、カッコよさが五割増しです!」

「それは、凄い!」

 ワタシ、ワクワクしてきたぞ!

「とりあえずは、機体を動かして挙動に慣れるところから、始めましょう。」

「了解です。」



 さてさて、この機体の性能とやらを試してみよう。

 操縦桿をそっと前に押す。

『あれ? 動かない?』

 あっ。よく見るとモニターの風景が少しずつ流れてる。この機体の動きは、遅い。

 今度は一気に前に操縦桿を傾ける。そこそこには動くけど。移動に関しては期待できない?

 ペダルも試してみようと、グイッと踏み込む。

もっさりと言う表現が正しいのかは不明だけど。『もっさり』のイメージは、ゆっくりよりも遅い感じ。


 最初はもっさりで加速。

 JOJ…違う! 徐々にスピードが乗ってくると、結構速。最高速度はリョウサンの変わらないんじゃあ?

 これだけ速いなら、使えるんじゃあ…。と、思い始めたところへ森の木々が迫って来た。


 操縦桿を左に倒して、回避行動。

 ん? 真っ直ぐに木が迫って来る!

 あれれ? 曲がらない!?

 慌てて、操縦桿を後ろに入れタイヤを逆回転させる!


 速度が落ちないぃ!

 えっと、物理の授業で習った『慣性の反則』ってだっけ?

 違ってたら、誰か突っ込んでて。余裕無いから!


 機体を急速ターンさせて、向きの前後を入れ替えペダルを目一杯踏み込む!

 スピーカーが、

「ギャウ!ドギャウゥゥゥゥゥ!」

 脚のタイヤの軋む音を出した。

 何とか、木にぶつからなかった。ふう、焦ったー。


 小窓の副部長さんが、

「その機体は、前方にダッシュする時に限り、背中と脚のブースターが補助して

加速できます。が、今みたいに旋回性能が恐ろしく低いです。上手くコントロールしてくださいね。」

 やっぱりか…。こんなに重い機体なのに速いと思ったよ。

 あっ、回避行動とりながら、接近できないから装甲が厚いんだ。

 こういう仕様の機体なんだと、納得。


 頭の中で、もやもやっと考えた。

『ド~~~ン!』と突っ込んで、『ババババァァァァァ!』と撃ち込む。

 カッコいいかも。


 でも、やってみると。

 ところがギッチョンチョン! 上手くいかない…。

 闇雲に突っ込んでも、相手が避けて攻撃を食らってしまう。

 分厚い装甲のお陰で、それほどのダメージは無いけれど。蓄積されたダメージが、そのうちに機体を破壊する。


 いつもの思考ルーチンへと、無意識に移行して手が止まる。

 ブツブツ…。何か無いかな? この現状を変える何かが…。

 えっと、前方へのフル加速は、そこそこ速くて止まらなくなる…。

 止まらなくなる…。

 その時、私の頭の中の何かが、何かに、何かした!


 モニタールームで見ていた副部長は、隣で静かにみていた部長に

「始まりましたね。日向さんの思考ルーチンが。」

 にこやかで、嬉しそうな笑みを浮かべ

「どんな答えを出すか、楽しみです。」



 だいたい、考えが纏まった。いつもの通りに動きは付いてこないだろうけど…。

 やらないって選択肢は無いからね。


 先ずは、前方へ全力疾走! からのぉ! ダッシュペダルを離して、右上半身旋回ペダルを踏みながら、グリグリで狙いを付ける!


 思った通りだ…。

 この機体は速度出ると、ダッシュペダル離しても速度落ちるのが緩やかだ。

 確か、『慣性の鉄則』とかって言うはず!


 全力疾走に近い速度を保ちながら、上半身を右に旋回させて狙いを…。

 その時、モニターに大きく『ALERT』の文字が黄色で表示され、小さい文字が周りに何個か出た。

 そして、モニターの風景が回った!

「ドンガラ、ガッシャンコ!」

 スピーカーはお決まりの音を出し、モニターは赤いの『ALERT』をいっぱい出した。


 な、何が起きたの!?

 きょとんとしていると

「今のは、機体のバランスが崩れて転倒しちゃたんですよ。」

と副部長さん。続けて

「速度に対する上半身の旋回限界を超えてしまったと言うわけです。細かく、操縦桿とダッシュペダルでコントロールすれば、もう少しは耐えると思いますが。」

「な、なるほど。」


 モニタールームでは、その後に副部長はちらっと部長を見た。

「今のは、教えても良いと思いますよ。自分で出せる答の範囲では無いので。」

「まだまだ、私も考えないとです。つい考えないで、言っちゃいましたから。」

 反省していた副部長。


 機体のバランスも考えないと駄目なのか。直ぐには無理だな、何回もやって覚えないとだ。


 今回、よく解ったのは…。

 この機体は、転ぶとそれだけで相当なダメージ! 下手な攻撃よりもダメージが大きい…。


 その後は、リセマラ(リセット・マラソン)になった。


 何回転んだやら…。

 試行錯誤している内に

「今日は、このくらいで終わりましょう。」

と副部長さん。

 最近は終了の手順もきっちんとできる様になったよ。


 モニタールームへ行くと

「どうだった?」

 副部長さんがぴょんぴょん跳ねながら寄って来る。

「火力と装甲は魅力的です! 楽しい機体だと思います。」

「でしょ、でしょ。今日のは、突撃タイプにセッティングしたけど、突進用のブースター外して、空いたところに大きな大砲とか、ミサイルをいっぱい付けて、離れた所からバンバン撃つ! って、武装セッティングも楽しいわよ。」

「それも有りですね。」


 もやもやって、考えたよ。

 『ドドドーッ』ってミサイルをいっぱい撃つのを。

「でも、仲間を撃たないようにするのが難しい。」

と、笑った。

「あっ、そうですね、仲間が戦っている所に撃ち込んだら…。」

「昔の偉い司令官がね、『味方の弾に当たる様な間抜けは、我が軍には居らん!』って言ってたから、その辺りは考えなくても大丈夫だと思うけど。」

「そ、そうなんですね…。」

 返事に困った。


「帰りましょう。校門閉められますよ。」

 部長さんが良いタイミングでアシスト。








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