戦う
「今の白兵武器で基本的な事は終わりです。次の段階へ進みます。」
「はい。」
返事はしたものの、次の段階って何だろう?
「機体と装備は、日向さんと同じで。AIレベルはノーマル。セットアップ位置はランダム。」
モニタールームで部長が、美星に指示を出す。
「了解しました。」
カタカタをキーボードを叩き。
「準備できました。」
「日向さん、武装は全て使用可とします。」
「はい。ミサイル撃っちゃても良いんですね。」
「自由にやってみてください。」
「はい。」
最初に撃った時に、楽しかったから早く撃ってみたかった。
「スタート。」
部長が目で合図を送ると、美星は頷きエンターキーを叩いた。
始まったらしいけど、何も起きない。モニター右下のレーダーを見るが、ターゲットは映ってない。
何でだろう? 故障じゃないよね?
動いてれば見付けられるかも。操縦桿を前に倒してペダルを踏む。
しばらく動き回っているとレーダーの端っこに反応が出た。距離が離れ過ぎていると映らないんだ…。
よしと反応の方へ、操縦桿を倒しペダルをグイッと踏む。景色が飛ぶ様に流れる。
ここを通れば早く行けるかもって思い、平原を駆け抜け一気に近付いて行った。
反応のある森の近くまで来た。
そろそろ、見えるかな? と、思った瞬間に森からターゲットが飛び出して来た!
同じ機体って言ってたから、やっぱり【リョウサン】だ!
「見付けた!」
グリグリで狙いを…。
相手の【リョウサン】の構えたライフルの先が数回光り、肩から煙が尾を引いて、こちらへ飛んでくるのはミサイル。
スピーカーが『カンカン』『ズボッボボ!』と鳴き、モニターに赤い[ALERT]の文字が数個点滅。
あれれとあたふたしていると、煙の尾を引いたミサイルが当たった!
『バウボス!』
『チュドーン!』
追加の赤い[ALERT]の文字がいっぱい出た。
更に、ライフルこちらを向いて光る。『カンカン』
『ズボッボボ』
の音をスピーカーが吐き出し、モニターの赤い[ALERT]の文字が増える。
左上のロボットの形をした機体の状態を表しているものの、あちこちが緑色から黄色に変わり、あっと言う間に赤くなった。
状態を表しているロボットの形のものは、コンディションゲージって言うらしい。後で教えてもらった。
続いて、また肩から煙を引きてミサイルが飛んで来た。
『チュドーン!』
その音が合図の様に、モニターの風景が赤く染まった。
その後は、操縦桿を動かしても、トリガー引いても機体は、うんともすんとも言わなくなり、モニターに[LOST]の文字が大きく出た。
キョトンとしていると
「状態をリセットしますね。」
オペレーターさんの声で我に返った。
「ああ、ちょっと待って下さい。」
と制してから、さっき起きた事を考えてみる…。
今のは…。
私、攻撃された?
考え中…。
あっ、『私、今…。戦っているんだ!』その証拠に、部長さんは『ターゲットを撃って。』って言わなかった。
今までやってたのは、ターゲット…、的を撃つ練習だったんだ。
そして、今やってるのは実戦!
背中が、ゾクゾクって来た。生まれて初めての感覚。抑え切れない高揚感。
こんな時は、確か『ワタシ、ワクワクすっぞ!』って表現するはず。
何が起きたか判ったので、状況を思い出してみる。
今のは、私が不用意に無防備で近付いたのが悪かった。撃ってくださいと言ってたようなものだし。そこをいい様に撃たれたと。
確か森から飛び出した機体は、私と同じだったはず…。
脚のタイヤで、目の前を左から右へ移動しながら撃った。
ん? ふと、疑問が…。
タイヤで移動してたなら、なんでこっち撃てたんだろう? 横向きには移動出来るようになってないはず…。
う~んと唸る。
何か見落としてないかな?
キョロキョロとコックピットの中を見る。
そして、足元を見た時…。
私の頭の中の何かの固まりが、粉々に砕けた感覚。そう、パリーーンって感じに。
目線の先にあったのは、三つ並んだペダル…。
真ん中は、『ビューン』てする時に使うペダル。
左右の奴は、部長さんが「しばらくは、使わない。」って言ってたペダル。
そう、「しばらく」は終わっていたんだ、と気が付いた。
進んでいる方向と違う方向を攻撃する手段の上半身を捻る。それが、さっきやってた方法なんだ。
でも、ペダルは三つ、私の足は二本と考えながら左右の足で、踏んでみる…。
えっと、『ビューン』てするのに真ん中を踏んで…。右に、捻るとすると…。
あっ、真ん中を左足で踏んで、右を右足で踏めばいいのか…。逆は、踏み足を逆にするだけ…。
解ってみれば、簡単なことだったけど…。自分で発見した嬉しさに、頬が緩む。
たぶん、まだ色々あるに違いない!
この時、私は気が付いて無かった。私に、大変な事が起きていたことに…。
大変な事、それは…。
私がパンツィーに、ドはまりしていた。
気が付いた時には、既に引き返せないところまできていた…。
こんなに、筈じゃなかったのにぃぃぃぃぃ!
「動きませんね。」
美星の問い掛け。
「そうね。」
返す部長。
「何かあったんでしょうか?」
「また、考えているんじゃないかしら。」
「ちょっと、声掛けしてみますね。」
「日向さん。気分でも悪いのですか?」
あまりにも、長い時間考えていたので心配してくれたオペレーターさんが声をかけてくれたみたいだ。
自分の中では、あっという間だったのに。きっと、時を飛ばした何がいる…。
「あっ、すみません。リセットしてください。」
考えは纏まった。後は、思った通りに動かせるか?
前に部長さんが言った、『考えるな、感じろ!』だな、きっと。
それに気が付いた、今の私はちょっとカッコいいに違いない。
例えるなら、初めてロボットに乗ったのに直ぐに動かせて、敵のロボットをやっつけたパイロットみたいになれた気分。
だが、現実は甘くなく…。
操縦桿で移動させながら、ペダルで上半身を捻って相手に向け、グリグリで狙いを付ける…。
なんて、直ぐにできるわけもなかった。
でも、いいようにはやられなかったよ。普通ぐらいにはやられたけどね!
しばらくの間、実戦練習が続く。
「当たれぇぇぇぇぇ!」
最初の内は喉が枯れて痛くなったけど、呪文だからと頑張ってたら平気になった。
でも、最近は命中の呪文の効き目が、ちょっとだけ弱い。中々、当たらない…。
いや〜ぁ、操縦っ難しい!
でも、そこが楽しいと改めて奥の深さを染々と。




