能力
「見つかっちゃた。」
操縦桿を引きペダルを踏み込み、『ギュイーン』と機体を回避させる。
「今度は、私が逃げる番。」
私の放ったミサイルが『ちゅどーん』と壁を破壊する。派手に崩れたのは、廃墟の設定で脆くなってたから…。多分。
ライフルも撃ち込んだけど、当たってる気がしない。
爆発の崩落の土煙から尾を引き出て来るのは、当然【楽美兎】。
こっちに、向けたのはガトリング砲。直後、砲身が回転し薬莢が躍り出た。放たれる弾丸は光の線を空中に描く。
「なんの!」
回避行動を取りながら、ライフルを撃ち込む。
何だろう…、この違和感は…。何か引っかかるのは…。う~ん…。
なんて考えてる間は無く、放たれる続けるガトリング砲を回避し反撃する。
バック走行しながら、【楽美兎】は大きな柱の陰へと移動した。
左半身を柱に隠しガードし更に連射。
シールドがあるとはいえ、ガトリング砲の銃撃の雨にいつまでも耐えられるはずもなく、こちらも瓦礫の陰へと入る。
「あの機体…、狂暴兎だ。最初見た時に、垂れてた長い耳は可愛いって思ったけど…。」
ん? こ、これは、あの…。自分の言った台詞で気が付くパターン!
「耳垂れて無かった…。」
さっき見た【楽美兎】は、ピンと耳が立ってた。そ、そうかぁぁぁぁぁ! 耳が違ってるんだ!
違和感の正体は解ったけど…。あの耳はアクセサリーかな? なら、別に意味は無い…。
でも、アクセサリーじゃなくて装備なら…。耳の装備…。耳は音を聞く…。音…、音!
「もしかして…、音で私の居場所が解る!?」
また考えが声に出た。こんな時は、確か…。
そうそう、石とか手近なものを投げて…って、これゲームだからそんな細かい事出来ないし…。
何かないかな…。
何か…。
!?
あった!
今まで一回も使ってなかった武器が。カチカチと直ぐに切り換える。
「これだ。使わないから外そうと思ってたけど、まさかこんなところで使えるなんて…。」
私が選んだのは[対アーマーダガー]。予備の白兵武器だけど、投げられるはず。
「とりあえず、やってみよう。」
離れたところを狙って、左手で『ビュッ』と投げる。
『ビュー!』と暫く飛ぶ。そして、投擲の勢いの落ちたダガーは、壁に当たり『カランカラン』と地面へ落ちる。
じーっと観察。
『ズガガガッ』の轟音と共にダガーが落ちた辺りの壁が吹っ飛ぶ。
「や、やっぱりだ。音で居場所を特定してる。」
「おっ、今のは…。」
小南が感心する。
「判ったみたいですね。」
部長が頷き、
「日向さんなら…。」
副部長が続き、
「転生者凄えな。」
八束が驚き、
「転生者恐るべし。」
百地が締めた。
「あれに気が付くなんて、転生者は伊達じゃないね。」
エロ部長も楽しそうに、
「でも、勝つのはうちの幸さ。」
「音が違ってた…。」
トリガーから指を離し、またヘッドホンに集中する。
「動く音で場所が解る…。だから『有利過ぎる』って言ったんだ。」
これってアレだよね。ほら、小さい頃から磨かれてきた才能が他で使えるってパターン。確か、ピアノをやってたとか言ってたし…。
「隠れてても無駄って事だし…。だったら!」
操縦桿を倒し、目一杯ペダルを踏み込む!
「正面突破! 接近戦なら耳の良さは関係無い!」
『ギュイーン』の音が機体を前に推し出す。
「バ〜レちゃった。」
ゆっくりと口に出す。
「こ〜んな時は…。こ〜れ。」
トリガーが引く。【楽美兎】の背中から長い尾を引きながら、いくつものミサイルが垂直方向に撃ち出された。
走行出した機体の直ぐ側を壁の穴と共に弾丸が追ってくる。
「なんの!」
ライフルとミサイルで、手当たり次第に壁やビルを攻撃!
流石、設定廃墟だ、直ぐに崩れる。
その時、自分の発射したミサイルと弾丸が巻き起こす爆発音と壁が崩れる崩壊音が、兎野幸の能力をカットした! 日向葵は、反撃に転じる!
何とかの笛の音が、かき消されるのと同じパターン!?
「今だ!」
一気に、向きを変え【楽美兎】に向かう。
「そこだ!」
トリガーを引こうとした瞬間、機体の近くが『ちゅどーん』『ちゅどーん』と爆発した。
はっと気が付く、
「ミサイルが!!!」
そう、頭上からミサイルが雨の様に降ってきていた。
「読まれてたぁ!」
『ズダダダダ』とガトリング砲も火を吹く。
「ヤバ、ヤバじゃん。」
兎に角、回避行動! 降って来るミサイルを回避しつつ、ガトリング砲もかわす…。
致命傷は避けたけど、ダメージを告げる黄色い[ALERT]がそこそこ出た。
ミサイルの雨が一段落した。
「当たれぇぇぇぇぇ!」
反撃のライフル!
やったね、そこそこ当たったよ。
どうやら、【楽美兎】は【リョウサン】に比べて動きが重い感じだ。まあ、装甲もゴツゴツして分厚そうだからね。って事は、装甲に阻まれてダメージは少ない?
「や〜られた。」
黄色い[ALERT]を見ながらゆっくりと口に出す幸。
「お〜返し。」
トリガーを引く。
シールドを構えガトリング砲のダメージを抑えつつ、ジグザグの回避行動をとりながら、突っ込む!
「いけぇぇぇぇぇ!」
ライフルもいっぱい撃ち込む。
「おまけ!」
ミサイルもいっぱい撃つ。
「来〜た。」
同じく回避行動を、とりながらガトリング砲で反撃。更に、背中のミサイルが放たれ頭上から獲物を狙う。
お互いの機体が、ミサイルの爆発を避けながらの銃撃戦と言う、リアルロボットの様な激しい戦い!
「あっ!!」
声を上げたのは、体育館にいた人の大部分。
【リョウサン】の放つミサイルの中の数発が【楽美兎】から反れた。
皆が『外した』と思ったのが、間違いだと気が付くのに、そんなに時間はかからなかった。
確かに【楽美兎】には当たらなかったから、外れたと表現するのは間違っていないけど。
「そこ!」
グリグリを動かしつつ、ミサイルを続け様に発射する。
【楽美兎】は、その動きの鈍さに似つかわしくない動きで回避する。
「外〜れ。」
直後、モニターを埋める程の瓦礫が降って来くる。
「あ〜れれ。」
【楽美兎】は、崩れて来た瓦礫に押し潰されそうになり、バランスを崩し動けなくなった。
「上手く、いった。」
咄嗟に思い付いた、その名も『瓦礫を崩す作戦』。
それは【楽美兎】を狙うミサイルの中に、瓦礫を狙うミサイルを潜ませる作戦。
「チャンス!」
一直線に【楽美兎】に【リョウサン】を疾走らせる。
ライフル、ミサイル、そして射出式グレード弾…。もう、全部撃っちゃえ!
『ダダダダーーッ』『ドドドドーン』『パシューッ』ありったけ撃ったら!
「これだぁぁぁぁぁ!」
両手に持っていたライフルとシールドを『ポイッ』と捨てる。
そして背中の剣を抜き、両手持ちから腰溜めにした剣を相手に向ける。
『ジャキーーーン』と共に、切っ先に輝く十字の光が回転する。
そう、それは最強の『勇者の構え』。




