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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
囚われのお姫様編
86/119

裏側の僕と牙城の神竜1

 

「ところでユーフェリア姉上。言い忘れていましたが、実はこの砦には現在、あのエルディも潜伏しているのです」

「あっ、エルディ君も?そうなんだ、彼も来てくれてるんだ!」

「はい。彼は今、月の大精霊殿と別行動を取っていまして」

「はい?……月の、大精霊さん、と??」

「それで姉上、どうか心してお聞き下さい。昨日から既に砦の情報収集にあたっていた、そのエルディが言うには………」




*********




 フレイ殿下が囚われのユーフェリア嬢と秘密裏に接触し、イエニス王国を蝕む大地の呪いを解消する為の頭脳会議をしていた裏側で、砦に潜入した僕も誘拐犯達の真の目的を調べようと精力的に動いていた。


 

ーーしかし先ず、日付は丸一日前に遡る。


 連れ攫われたユーフェリア嬢が乗せられた荷馬車の屋根に乗り付けた僕とフレイ殿下。でも生憎と二人とも身体はミニサイズ(あ、決してちびじゃないから!)、しかも荷馬車全体に魔法無効化の効果が掛かってて、悔しいけど今は彼女の奪還を見送るしかなかった。

 そして夕暮れになってようやくと、荷馬車はエルドラシア東国境沿いの宿場町に立ち寄る気配をみせた。

 ほぼ半日も休みなく馬を走らせたわけだし、そろそろ限界だろう。

 替え馬の用意がない以上は水や餌に休息を与える必要があり、御者台に座り続ける男達にも明らかに疲れの色が見てとれる。なので、ここで誘拐犯一行は必ず宿を取って一泊するものだと思った。


 だけどそうはいかず、彼らは予想外の行動を取る。

 あの偽者だったトライアルトの王子は、その宿場町のとある宿に併設された大型の厩舎に荷馬車ごとそのまま進み入り、事前に準備していたらしい足元の転位魔法陣を発動させた。



「馬車ごと転位させるって……!ま、まあ。おかげで屋根上の僕らも転位のおこぼれに預かれたわけだどさあ!あの偽者王子、かなりの熟練魔法の使い手だったんだ。え?じゃあ、魔法学科に留学する必要性なんて、端っからなかったんじゃん!」

「そ、それをエルディが言うのか?……や、まあ、それはそうと、確かに彼は高位ランクの魔法師であるようだ。実はあの描かれた転位魔法陣は正規のものにアレンジが加えられていた。最低限の魔力で発動するよう、また、発生する魔力波動を極力抑える旨の文面が読み取れた。こちらの追っ手を回避する為だと思われるが、もしかするとあちら側、イエニスサイドにも悟られたくない事情があるのかもしれない」

「え?魔法陣の文面まで見てなかった。そ、そうなんだ……」


 すごい……。フレイ殿下は荷馬車の屋根から、しかもほんのちょっとの間で、その目にした転位陣を驚くほど正確に分析していた。

 魔力も魔法も僕の方が彼よりも得意分野なんだけど、フレイ殿下はこういう場面でいつも重要なところを決して見逃さない。きっと彼の生まれ持つ“絶対幸運のスキル”が、本人も意図せず無意識に働いているんだと思う。

 つくづく思うんだけど、彼は昔からあらゆる点において優秀過ぎる。

 まさかそんな未来は天地がひっくり返っても来ないとは思うけど、何がどうあっても僕は彼だけは敵に回したくないな……



ーーバシィィッ!!!


「え!なになに!?天幕破った?どしたの、フレイ殿下!?」

「くっ!あのくせ者王子、姉上にあのようにべたべたと触れて……!」

 

 下を見れば気絶したユーフェリア嬢を、偽者王子が横抱きにして荷馬車から外へ運び出していた。彼女はあいつの制服の上着に包まれていて、気を使っているのか直接素肌には触れてはいないようで。

 え? あれって、べたべたというほどのもの……?


「エルディ。今すぐ、ここら一帯を君の神聖魔法の“審判の業火”で焼いてしまおう。大丈夫、正しき道を行く僕らは審判の炎では決して裁かれず、罪深い奴らだけが塵芥の灰と化すであろう」

「はあああッ!?そんな魔法使ったらダメでしょ!?で、できるけど絶対やらないよ!下手したらこの宿場町が壊滅するから!そんな恐ろしい事、非常事態でもやらないからね!」


 うわあー、めちゃくちゃヤバい……

 フレイ殿下は昔からユーフェリア嬢の事となると普段の優秀さは一体どこへやら。外れちゃダメなタガがガタンと外れ、いつも大暴走するんだよなあ。

 どうにかして一刻も早く彼女とコンタクトを取って、彼をせめて一般常識の通じる通常モードに戻さないと……



 頑張ってフレイ殿下を説き伏せて思い止まらせたその後、ミニサイズの僕らは慎重に身を隠しつつ、屋根上から転位先の建物内へと侵入を果たした。



「ここは……古城というか、すごく巨大な砦なんだね」

「そうだな。予想するに随分と昔に戦争使用を目的として造られた建造物で、こうして見渡せる範囲内だけでもかなりの数の兵が詰めている。……恐らくあれらは、イエニス王国軍の正規兵ではないだろうか?門にいるあの兵士達、軍服の襟元に縫い付けられた徽章デザインが、以前目にした事のある文献のそれと同じだ」

「その兵士達、堂々と砦内を進むあの偽者王子に即座に敬礼してたよね。手続きもなく、門番に顔パスって。ーーつまり、彼はそういう身分の者って事?」


 どうやらここは、イエニス王国が所有する砦と思われた。

ーーそしてもしかすると、三数白年前のあのヒースクリフの解放戦争時代においては、イエニスが起こした侵略戦争の、その主要砦として使われた建物なのかもしれない。

 当時、義勇軍の一員として実際にイエニス軍と戦っていた僕には、兵士達の持つ武器や装備の特徴、それに人種的な顔つきなんかに見覚えがあった。

 

「エルディ。僕が知るこの王国の情報では、イエニス王家は伝統的に後宮があり、当代の国王には複数の王子王女達がいる筈。けれどこれまでに病死や事故、果てには暗殺や処分すらも相次ぎ、現在ではそのうちの何人の王族が生き残っているのか定かではなく。イエニスの王宮は、別の名を“死神が住まう伏魔殿ふくまでん”、と呼ばれているのだとか……」

「伏魔殿………」


 実は僕も前世の記憶を取り戻してから色々と調べているけど、イエニス王国の情報はあまり出てこない。

 大昔に侵略戦争を起こした軍国主義国家で、現在でもかなり閉鎖的な政治体制を敷いているとか………そもそもこの国に入国するにはとても厳しい審査があるみたいで、正攻法では先ずムリだった。

 それで覇王竜のはーちゃんに頼み込み、現在調査中の段階で………


「そういえばはーちゃん、今頃は心配してるだろうな。もう魔法も使える状態だし、一度連絡を取ってみよ、ーーー!?」

「エルディ?急に立ち止まって、どうした?」


 既にユーフェリア嬢が奴によって砦内に運び込まれていった。

 これから砦内に囚われるであろう彼女の行き先を確認する為にも、ここはさっさと後を追うべきなんだけど………


ーーしかし僕は、砦内部ではなく外部となる外壁付近、遠目で巨大な大木が見える向こうの一角が、突然どうしようもなく気になった。

 

「……………この気配。うそ、ここに神竜が、いる……」

『ああ、おるな。だがしかし、そのお力は随分と衰えているようじゃがの』


 道案内役だった月の大精霊が僕の呟きに応えた。

 彼女が宿るはフレイ殿下の身につける手首のブレスレット。ミニサイズになった彼に合わせて都合良く小さくなっていたそのアイテムが、何故か不意にぼんやりと光り出した。


「!?」

「エルディ?ーーーこれは一体!?」

『元神竜であらせられる少年よ。あの方角へ、緑樹竜様のもとへ、このわらわを連れて行くのじゃ』



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