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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
囚われのお姫様編
80/119

私とイエニスの研究塔2



 取り敢えず、うん、ゆっくり深呼吸をしてみようか。

 落ち着け、落ち着け~、私は大丈夫、きっとまだ頑張れる。

 

ーーはっ!そういえばっっ!

 この怒涛の展開で右から左へとポロッと聞き逃していたけれど、確かあのアーシェさん、私が目を覚ます直前にこうも言っておられた。

「大丈夫!貴女にはあの幸運の王子様がついているもの!」、ーーと。


 その“幸運の王子様”って、きっとフレイ君の事だよね?

 何故かっていうと、フレイ君にはそんなイメージがあるから。特別な強運持ちっていうか、運の神様にもの凄~く愛されてそうっていうか。 

 フレイ君は見た目は冷静で落ち着いたカンジなのに、意外と無謀で迅速果断タイプ。時に誰もがあっと驚くほど思い切った決断を下す、ーーそんなところがあった。

 

 軍馬の熱病騒動の時がまさにそうだったよね。私なんかが口にした治療方法を信じてくれて、そして彼は即座に王国各地の駐屯地に伝令を飛ばしてその治療方法を周知徹底させた。

 万一、それが間違っていたとしてもこの自分が全ての責を負いますからと。そこまで勇断で人の良い彼がそんな風にして選び取ったものは、勿論その後で得た結果もそれに伴うフォローの仕方までもが文句なしに正解で。

 

 それに何となく不思議に思っていたけれど、今までフレイ君が私に贈ってくれたものは、ちょうどその時期に凄く興味のあったものや、ホントに私の好みドストライクのものばかり。王宮でもこれといった用事がない日に限って、タイミングよくお茶やお散歩に誘ってきたりとか。逆に外出先で偶然鉢合わせて、その後は一緒に観光地を見て回ったりした事もあったっけね。

 

 あと、彼は人との縁にも凄く恵まれていると思う。あの人見知りの激しいエルディ君はいつも異常なレベルでベッタリだし、将来有望な騎士となるアルバート君は、卒業後はすでにフレイ君専属をキッパリと公言している。私が尊敬する侍医のリュカさん、たまーに見掛けるとっても強い風避け兜の騎士さんも、フレイ君を陰からずっと見守ってるカンジだし。ーーつまり、彼は優れた人材を味方に引き寄せる強運の王子様でもあるわけだ。


 だからアーシェさんの言った“幸運の王子様”はフレイ君を指している。今度という今度こそは、絶対に思い違いではないと思う。

 ならばイエニスに連れて行かれても、フレイ君が私にはついているから大丈夫、そういう意味だったんだよね。

 じゃあフレイ君は、あの高さから落ちても大怪我を負う事なく無事でいる、って事なんだ………

 

 そこまでの結論に至ると、ようやく身体の震えは止まってくれた。

ーーよし!今はとにかく明るい希望を持ち、先ずはこの塔らしき建物から脱出する方法を考えてみよう!、ーーと決心したその矢先に。

 まるで肩透かしを食らうかのように部屋のドアがノックされた。



「失礼致します。殿下の命により、姫様のお支度に伺いました」

「「「同じに。只今より、お部屋に入室させていただきます」」」

「ーーあ、は、はい!」


 え?あ、あれ?今、2人や3人の声じゃなかったけど!?

 いやまさか、と思いつつもやはり予想通り。ゾロゾロと入室してきた侍女達は、その数およそ20名以上の団体様だった。しかも、その彼女達の格好がこれまた………

 まあ、ここは取り敢えず突っ込ませてもらおうかな。



ーーたかが朝の身支度に、こんな侍女軍団は絶対要らんだろっ!!





*********





 ええと。先ずは用意されたぬるま湯で顔を洗い、香油を塗って肌を軽くマッサージされた後は薄ーくお化粧を施される。髪のセットは是非ともご遠慮申し上げたい気分だったが、圧巻の侍女軍団達に否と言える勇気なんぞこの私にはない。

 そしてそんな苦難の果てに彼女達が持参した衣裳籠から出てきたのは、ーーそれはそれはファビラスなインド風のドレスだった。

 

 ちょっとだけ説明させてもらうと、大陸の最東端に位置するこのイエニス王国は実は雨季と乾季があり、ほぼ一年中暑い国。冬が約一ヶ月ととても短く、その他は夏季のみという極端な気候の風土となっている。

 その為か、服飾文化が自ずと地球でいう中央アジアや中東圏のものに似ているのだ。だからドレスもインド風。

 

 シリーの寄越したおよそ20名ほどの侍女軍団達(何故こんなに?)、そのうちの半数によって私が着付けられたのはバンジャビ・ドレス。

 身体に一枚布を巻付けるあの有名なサリーとは少し違っていて、薄手の布全面に施された煌びやかな刺繍はそのままに、高級シルク素材のざっくりとしたロングドレスだった。

 その上にはドレープたっぷりのストールの羽織り、そして驚くべき事に下にパンツが用意されていた。まあ、ドレスが足首まであるので、これは肌透け対策用の所謂スパッツのようなものみたい。

 でもこの世界では、戦闘職以外の女子がパンツを履くのはもの凄く珍しいんじゃないかな。

 

 因みに身支度を手伝ってくれた侍女軍団達は、テント状の大判ストールを頭からすっぽりと被るブルカ風(※中央アジア辺りの民族衣装)の衣裳。目元の部分だけメッシュ仕様で視界は確保されているものの、私からは彼女達の顔形が全く見えない……

 私の前々世であるミシェルの時代では、ここまで閉鎖的なお仕着せではなかった筈だけど……?

 薄手のストール生地とはいえ、上半身を全て覆い隠すそのスタイルはさぞかし暑苦しそうだ。



「着替えを手伝ってくれてありがとう」

「それが与えられた職務でございますので」

「あの、貴女達のお名前は?」

「私どもは姫様のお世話のみを仰せつかっております」

「……ええと、もしかしてこの国の女性は、そのようにストールで顔を隠すのが一般的なのですか?確か数百年前……あ、いえ。昔はもう少し開放的なスタイルだったと、そう何かの資料で目にした覚えがあるのですが?」

「姫様の身支度が整い次第、こちらでユージリーン殿下とご朝食のご予定となっております」

「そう、ですか。……あの。私の事はどこの誰と聞かされて…」

「お世話にご不足はございませんか?ーーでは、これで失礼致します」

「………………」


ーーコ、コミュニケーション完全拒否かいっっ!

 

 塩対応の侍女軍団達を唖然と見送る。

 情報を与えないように事前に不要な会話を禁じられている?いや、もしかしてこれは、突然帰国した自国の王子殿下が女性を連れ帰って来た、しかもその王子妃候補とやらが“異国人”、って事に彼女達なりに猛反発している……!?


「いやいや!私の方こそ嫌ですけど!絶対に断固拒否!」

「嫌?ーーあら?そのドレスは気に入らなかったかしら?」

「ひゃいっ!?」


 まさか独り言に返事を返されるとは!

 侍女軍団達と入れ違いにシリーが部屋に戻ってきた。うわああ、びっくりし過ぎて思わず変な声が出てしまった。


「サイズはちゃんと合っていたようね。それね、動きやすいドレスってテーマで私がデザインアレンジしたものなのよ。うんうん、ユーフェに凄く似合ってるわ!」

「シリーがデザインを!?、っと、違った。……ええと、ラージリーン?」

「今まで通りにシリーで構わないわよ。響きも似てるしね」


 くっ!エキゾチックな異国の美形王子がそこに立っていた。

 彼が着ているのはインドのシェルワニ風の民族服だった。首回りに絢爛豪華な金や銀の刺繍の入った襟のない上衣は膝下までと長く、同色の白ズボンはゆったりと太めで風通しの良い仕立てとなっている。


ーーああ。そう、そうだった。

 イエニスの貴族男性は主にこういう伝統衣裳を好んで着ていたっけ。といっても、王女だったミシェルが実際に王宮で暮らしていたのはたったの9年間。9歳の時に父であるイエニス王が弑逆されて命からがらに他国へと落ち延び、その後は二度と母国の土を踏む事はなかった……

 

「ユーフェ?しかめっ面してどうかした?ああ、昨日は結局、半日以上何も食べてなかったからお腹が空いてるのね。じゃあ早くこっち来て座って座って!」


ーーっだから!それは誰の所為だっての!?

 人を攫った事なぞすっかり忘れて果てているようなその態度、私からすれば本当に理解不能だ!彼は未知の宇宙人なのか!誘拐の意味をちゃんと分かっているのだろうか!?

 

 でもその説明をすると言っていたし、お腹が空いているのは事実だった。何とも言えないモヤモヤした気分を押し込めつつ、促されるがままにベッドがある空間から続き部屋となっているフロアに移動する。

 そこはこじんまりとしたリビングルームだった。そして先ほどの侍女軍団の、私の身支度担当以外が用意したであろう朝食が、目に入った……のだが。

 


「わ、わあー、ホントに朝っぱらからお菓子とケーキだった!」


 ガラス製のローテーブルの中央には種類豊富なカットフルーツが美しく盛り付けられていて、ところ狭しと並ぶ大皿には食べ切れないほどのお菓子とケーキが乗っていた。ここはスイーツバイキング会場か!


「バイキング旅行か!え、シリーって、そこまで甘党だった!?」

「ばいきんぐ……?甘いものはそれなりに好きだけど。でもこれはね、栄養価の非常に優れたお菓子やケーキなのよ。御飯代わりにお菓子やケーキを毎日食べたい!、という世の貴婦人方の欲望を叶える研究をしているの。さあ、ユーフェ。是非とも好きなものを取って試食して、忌憚のない感想と鋭い意見を聞かせて頂戴な?」


 御飯代わりにお菓子とケーキ……!

ーーななな、なんという興味深い研究だ!!


「だがシリー!糖質とカロリーの違いを分かってない!世の貴婦人方は甘いものを三食食べてても太りたくない、そしてできれば健康も美容も損ないたくない、そういう自堕落かつ素晴らしく我が儘なお菓子をご希望なの!栄養価が優れていてもこれでは絶対太る!問題ありまくりだよ!」

「何ですって!?カロリーは変わらないのにどうして!?」


 腑に落ちないといった顔をするシリーに、私は小1時間ほど炭水化物と糖質と脂質の違い、余分な贅肉、つまりエネルギーとして消費されず脂肪となって体内に吸収されやすい性質などを、図に書いて懇切丁寧に説明する事となった。

 あ、勿論、栄養価の優れたお菓子とケーキは美味しく頂きました。



ーーあれ?私は一体何をやってるんだ!?




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