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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
囚われのお姫様編
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僕と奪われた月と願い星5



「ーーフレイ殿下!ねえ、ちょっと飛ばし過ぎじゃない!?こんなハイスペースでずっと飛び続けてたら、さすがにフェリルが参っちゃうよ!」

「構わない!フェリルにはスピード補助と身体能力アップの魔法を重ね掛けしてある。今は一刻も早く、そしてまだ王国内におられるうちにユーフェリア姉上を敵の手から奪還する。ーーそれが何よりも絶対の最優先事項だ!」


ーーそう。一分一秒でも早く姉上を救い出さねば!

 こうしている間にも一体どんな目にあっている事か!いつも凛とした方だが、彼女は僕と同じくまだ未成年の少女で実は意外と泣き虫。きっと恐怖に打ち震えておられることだろう……!


「うんうん!王子様は攫われた婚約者のお姫様が心配で心配で堪らないってぇ、事ですね!ひゅぅーっ!このガドゥラケル、これでも草葉の陰でずぅーっとお二人の事を応援してました!あんなよちよち歩きのちびっこちゃん達だったのに、とってもご立派に成長しちゃいましたねえ……!」

「後ろの人、実は死んでんの!?ていうか、この速度と風圧でなんで普通に会話が成立してるの!?」

「ガドゥラケルだからだ。今はそんな些事はどうでもいい」

「あ、そ、そう………」


 

 持てる限りの最大速度で西を目指す王女救出先陣メンバー。

 母ミュゼットから受け取った道しるべの精霊が指し示す光は、見晴るかす限りの遠い空の遥か先。多少限界を超えてでも急がねば、愛する姉上は取り返せない、もしかするとこの先もう二度と会えなくなる。ーーそんな不吉な予感がしていた。


「しかし、小飛竜の操縦の腕もしっかり一人前ですね!王子としての公務を毎日きちんと熟しながらも、たったの4年でよくぞこのレベルまで身に付けたもんです!さすがは兄上自慢の甥っ子ちゃん!」

「兄上?誰が誰の兄…」「あ!その国王陛下から伝言です!」


 何やら看過してはならない単語を耳にした気がするが………まあ、それよりも“国王陛下からの伝言”、とは一体どんな?


「伝言って、えっ、だってそんなのいつ来たっけ!?同時に学園の校庭から出立したわけだし、それからもこの人ずっと後ろを飛んでたよね!?」

「ガドゥラケルだからだ。それで、伝言の内容は?」

「ええー…」


 慣れろエルディ。そして今はそんな事を気にしている場合ではない。


「ではお伝えしまーす!ーー『本日まで王立学園に籍を置いていたトライアルト王国のシルヴェスト王子、この件を受けて緊急に再調査したところ、こ奴は全くの偽者であると判明した!この者による悪辣なる我が王国への暴挙を直ちに食い止めよ!これは王命である!エルドラシア国王は今の現時点を以ってして、この王命を速やかに遵守するに必要と思われるありとあらゆる権限を、我が義息子のフレイ王子に与える!』ーー以上!国王陛下より下されたお言葉の全文となります!」

「「ーーッ!!」」

 

 咄嗟に言葉が出ないとはまさにこの事か!

 出会った当初から不審感を感じていたシルヴェスト王子だが、やはりその身分は真っ赤な大嘘だったと……


「し、信じられない!一国の王子身分を丸二ヶ月も騙って、あのアドロス学園長の厳しい審査をも完全に欺き通していたっての!これ、絶対トライアルト王国も一枚噛んでるよ!」

「ああ。もしくは…本物のシルヴェスト王子を亡き者にして入れ変わっていた、その可能性も否めない……!」


 身震いが襲ってきた。あの男はシルヴェスト王子などではなかった。ではその本当の正体は、その真の目的は一体何なのだろう?

 

 このエルドラシア王国の王女を誘拐して、そして何にどう利用する腹づもりなのか?……いや、あの男の求めるものは、そもそも“王女”としての姉上ではないのかもしれない。

 あの男が姉上に初めて接触したのは、まだ彼女がレストワール公爵令嬢の身分であった時。この時すでに奴は性別を偽っていたという。最初から嘘ばかりで塗り固めて近付き、時期が来ればこうして引っ攫っていくつもりだった?

 もしかするとその目的はユーフェリア姉上彼女個人であり、彼女の飛び抜けて優秀な頭脳、なのか……?


ーーけれど明確な答えの出ないままに、事態は急変する!

 雲一つ見当たらぬ快晴の空に、瞬きの一瞬でそれは出現した。



「フレイ殿下!あれ!前に突然、巨大な魔法陣が!!」

「何!?」

「おわわー!前方におかしなもの、発見!!



 真っ昼間のそこへ、まるで朧月のように薄ぼんやりと白く輝く魔法陣。

 偉大なる神の起こした奇跡の自然現象にも見えるそれは、目指す道しるべの先に突如として現れたのだ。

ーーあたかもそこが辿り着くべきゴールであるかのように!



「あれは精霊のつむいだ転位魔法陣ッスよ!おおっ!さすがはミュゼットさん、人に不干渉が掟の大精霊クラスを動かしちまったんです!」

「精霊の転位魔法陣!?ーーた、確かに!あの魔法陣の形状は人のでも竜のものでもない凄く特殊なタイプだけど!でもなんでそんなものが!?」

「ガドゥラケル!……母の尽力によるものという事は、ではあの転位魔法陣の行き先が姉上の元へ通じる道、そうなのだな!?」


 返答を聞くまでもなく、絶対そうだと確信していた。

 その証拠にこの左手首の組紐ブレスレットから伸びる光は、あの転位魔法陣のど真ん中へと一直線に伸びていて、更には自分のこの絶対幸運のスキルが確信をもって“是”、と告げていたのだ。


「え?意味が分からない!だったらどうして最初っからこの転位魔法陣を出してくれなかったの??道しるべ役のその精霊の存在理由って、じゃあ何なの!?」

「いやあ、精霊って奴は気まぐれですからね!しかも大精霊クラスなんて、人の思い通りになるわけがありませんよ!」


 エルディが動揺の悲鳴を上げるのも無理はなかった。

 これでは何かの手の上でいいように踊らされ、確かに振り回されているようにも思える。ーーだが考えてみれば、あの王立学園の敷地周辺にはアドロス学園長の結界が張り巡らされており、こんな大掛かりな魔法陣は発現不可能だった筈!


「気まぐれ…などではない。恐らくだが、この場所、この時間帯、この条件下でしか、あの転位魔法陣は出現が適わなかった、何となくそんな気がする。それだけとても特殊な類いの魔法と、そう感じる。だから絶対に罠では有り得ない。ーーよし!このまま最大速度であれに突っ込むぞ!」

「ああ、もう!フレイ殿下がそう言うならっ!!」

「了解っスよ!このガドゥラケル、例え悪の巣窟だろうと地の底の闇の深遠であろうとも、どこへだってお伴致しますからねーーーっ!!」

「キエッ!キェエェェーーーッ!!」


 

 全員の同意を得た僕は、勇ましく吠えるフェリルを再び駆って一直線にその転位魔法陣へと突っ込んで行った!

ーーけれど、その魔法陣を抜けた先には………



「は!?ここっ、この山並みや河川、王国の東端の地方なんだけど!!」

「何!?姉上の居場所は“西”の筈!ガドゥラケル!ここはっ、ーー」


 振り向けど、後ろにガドゥラケルの姿はなかった。そして朧月のような魔法陣もすっかり跡形もなく消え失せてしまっている………

 

「え!?あの騎士の人、続けて転位魔法陣に入った筈なのに何で出て来ないの!?別の場所へ飛ばされた!?そんな仕組みの魔法陣なんて聞いた事もないよ!やっぱり罠だったって事!?」

「いや、少し落ち付けエルディ。ーーそしてあれを見ろ」



 困惑する最中、その眼下に異様な速度で走る一台の馬車が目に入った。

 単に急用で道中を急いでいる、ともみえるその馬車は、ーーー



「ーーエルディ。見付けた。あれだ。あの馬車に、攫われた姉上が乗っておられる」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 




「止まれ!そこの馬車よ、直ちに停止せよ!ーー警告する!速やかに停止せぬ場合、王命に則り攻撃手段を取る!神妙に従え!」



 貨物用のその馬車は、上空からの警告に全く反応を示さなかった。

 それどころか更に速度を上げ、まるでこちらを振り切るかの如く無茶な疾走を続けていく。業を煮やした僕は、危険を承知で小飛竜の高度を限界まで下げてその馬車に接近してみると、ーー「助けて!」という姉上の叫び声が……!

  

ーー僕に救いを求めて、彼女が必死にそう叫んでいるのだ!


「ホントにユーフェ嬢が乗っている!西というのはやっぱり間違いだったんだ!護衛騎士の捜索隊もキットソンの小飛竜の応援も、全て反対方向に向かってて無意味に!君の絶対幸運のスキルにも間違いはあるって事?」

「分からない!ーーだが今はとにかく姉上をお助けせねば!」

「う、うん!そうだね!」



ーーけれどそれは敵わなかった。


 疾走する馬車から撒かれた青い煙を吸って、フェリルは突然もがき苦しみ出して、そのまま真っ逆さまに地上へと墜落してしまったのだ。



 


ようやく本編に追い付きました。

今後、色々と意外な人達が動き出していきます。

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