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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園婚約期編
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私と彼の、守られなかった約束3


 今さら説明するまでもないと思うけど、小飛竜とは竜の遠い親戚でその名の如く竜のミニバージョン。それでも空を自由自在に翔け抜ける姿は勇壮で格好いいし、性格も普段は意外と温厚。この世界で私が最も大好きな生き物でもある。

 

 アルバート君の話によれば、ここ最近外部から飛来してくる野生のその小飛竜に、ある共通した不可解な症状が見られるとの事。

 

 キットソン候爵領と言えば小飛竜の有名な育成地。それに確か、代々のキットソン候爵家の当主自らが牧場経営主を務めていて、その子息達も幼い頃から家業を手伝う傍ら、必然と小飛竜に慣れ親しんでいる、ーーという話を以前、フレイ君から聞いた事がある。

 彼にとっては家族の一員とも言えるその小飛竜達が、もしかすると新種の感染病に侵されつつあるかもしれない……。それはきっと心配で堪らない筈だよね。

 勿論、今すぐにでも調査に赴きたいところだけど………



「ごめんなさい。私は現在、登校以外の外出を極力控えている状態です。病体と思わしき野生の小飛竜がいるという、そのキットソン候爵領に足を運ぶわけには参りません。」


 放置されていた昔と違って、今の義父である王様からそのような場所への訪問許可は絶対に出してもらえないだろう。

 もし万が一、私が病に感染すれば同じ王城で暮らす王様やフレイ君に移してしまうという危険性もある。公爵令嬢とはいえ、まだ一貴族身分に過ぎなかったあの軍馬の感染症の時のように、もう気軽に自分勝手な行動はできない……

 心苦しくも、キットソン候爵領への訪問に難色を示せば、


「それは勿論です!王女殿下が未知の感染病が発症するかもしれぬ危険な地に、わざわざおいで下さる必要などございません!自分はただ、父が送ってきたこの調査書に目を通して頂き、聡明な貴女のご意見をお聞かせ願えればと思いまして!」

「えっ、そんな事くらい……!何も畏まってお願いされるまでもありません。微力ですが、私でよければ喜んでご協力致します。」

「ご協力頂けるのですか!?ああ!ありがとうございます!」


 王女の私に頼みに来るなんてよっぽどの案件だと思う。

 調査書に目を通して過去の資料から病名候補を選出したり、思い付く限りの予防策を提案するくらいお安いものだ。私で役に立てる事があるなら精一杯やってみよう。……できれば大した病ではない事を祈るばかり。不甲斐なさと歯痒い気持ちで去っていくアルバート君の背中を見送っ…………てか、歩くの早ッ!!

 

 校舎内は走るの禁止だから早歩きだけど!何故一歩が5メートル以上も進んでいるの!?瞬きをしていたら残像しか見えない!

 ーーこ、これが闘神とやらの極地……!凄い!正直、侮っていたわ!


 さすがはフレイ君の取り巻き。新魔法アイテムをホイホイ作ってしまえるエルディ君にしろ、やはり彼もただ者ではなかったか!?

ーーと、正直慄きながら自分の席に戻り、彼に手渡された調査書にさっそく目を通す。


ーーふむ。野生の小飛竜に感染症と疑わしき症状が出始めたのは、まだここ2、3ヶ月前の事らしく。実際の死亡例は今のところまだ未確認。そして、主な症状は要約すると以下の通り。



1. 狩りなどに必要な集中力と忍耐力に著しい低下が見られる。

2. 遠ぼえが出せず、吠え声はかすれ、喉の粘膜部分に腫れがある。

3. 熱はないのに頻繁にくしゃみと鼻水を出している。


 熱病とは異なるこれらの不可解な症状が、外部からの小飛竜の全体の3割の個体に見受けられるとの事。

 ………ん?だが、時間帯や場所によって上記の症状が大幅に緩和している時も、ある……?



「は!?ーーこれ、もしかしてアレルギー症状では!?」 

「何を熱心に読まれているのですか?」

「わきゃっ!」


 今度はフレイ君が私の席の前に立っていた。

ーーええ!?調査書に没頭していて全然気付かなかった!

 彼の顔を見た途端、私の顔がボンッ!、と真っ赤に染まる!


「エルディに引き続き、次はアルバートですか……。あの、ユーフェリア姉上。珍しくこの校舎までやって来た彼から、一体どんな手紙を受け取られたのですか?まさか、その……」

「きゅ、きゅきゅ、きゅー…」

「きゅ?」

「な、何でもないよ!ーーいや、あった!ええと、小飛竜に関してのご相談だったの。これはお手紙というよりその調査報告書でね……」


ーーあっ!そういえばフレイ君も小飛竜を所有していたよね。

 

 まだ地を駆けるのみだけど、今までその小飛竜君に何度も乗せてもらった事がある。その子は大丈夫なのだろうか?

 尋ねようと口を開けば、そこで休み時間終了の鐘が鳴ってしまう。ーー仕方ない、次の休み時間にでも話の続きをと思うものの、何故か目の前のフレイ君は席に戻ろうとしない……ん?どうしたの?


「……すみません。以前より自覚はありましたが、自分はかなり嫉妬深いようです。あの、姉上、例え彼らであっても、どうかあまり男性の傍近くには……」

「へ!?……あ、う、うん。」


 これは……あらら。フレイ君に焼きもちを焼かせちゃったのね。

 というかずっと見ていたの。そうなの。気恥ずかしいような、こそばゆいような。でもちょっと嬉しいような………

 

「心配しなくても私の婚約者はフレイ君です。彼らにも好みがあるでしょうし、間違いなんて天地がひっくり返っても起こりません。大丈夫ですよ?」

「はい。そこは疑っていませんが、見ていて平気かどうかは別問題でして。あ、こんな鬱陶しい束縛男は嫌ですよね……やはり今のは聞かなかった事にして下さい!」

「えっ!フレイ君、ちょっ……」


 そんな可愛い事を言い捨てて立ち去っていくフレイ君。

 

 ええと……そうだね。そうだよね。

 これは私が迂闊だったと思う。やたらむやみに異性に近付いちゃダメと。よし、今後は十分気をつけて行動しよう!

 



*********



 

ーーけれど、重なる時は重なるもので。



「ユーフェリア殿下!本日も大変麗しくご聡明で!ああ!思わず床に平伏したくなる心地です!お会いできてこのアーネスト!至極、光栄の至りであります!」

「ええ!誠に!このギリアンめも同じく!……と申しますか、今日の我らの女王様はまた一段と美しくあられます!こう、内から輝いて見えるというか……何か素晴らしき吉事でもございましたか?」

「アーネスト様、ギリアン様!余所の校舎に突然大勢で押しかけ、そのように騒いでしまっては王女殿下にご迷惑です!ーっなので殿下!我らを叱って下さい!睨めつけ呆れ見下し、むしろいっそ踏み付けて下さい!」


 お次は3限目の授業後の休み時間。

 ちょうど2年前の今頃に、アルバート君に矢を射かけて怪我を負わせるという大事件を起こした、あのいずぞやの三馬鹿トリオが私を尋ねて来た。ていうかギリアンさん、鋭いな!

 

 深く反省して賠償金を支払った彼らはあの後、心を入れ替えて真面目に真剣に騎士鍛練に励み続け、現在では順当に騎士訓練学科の上級課程コースに進んでいると聞く。

 けれどおよそ月一くらいのペースで三人揃って王宮の私のもとに訪れ、こんな感じの大袈裟な美辞麗句(?)を一方的にベラベラと喋りまくるのだ。さすがに王立学園では校舎も遠いし、教室まで押しかけてくる事もなかったのに、何故今日に限って………?


 年下で小生意気な私なんかに本気で叱られたり踏まれたいわけではないだろうに、彼らは一体何をどうしたいのだろう??


「あの、アーネスト様、ギリアン様、パーシヴァル様。こんな事をされていて、次の授業に間に合うのですか?何か私に大事なご用件がおありなら、手短に済ませた方が……」

「遅刻のペナルティーなど!アメジストのように気高く煌めくその貴女の瞳に映る栄誉に比べたら、些少も恐れるものではございません!」

「そうです!何やら先刻、キットソンの小伜が貴女にお会いしに行ったとか!それを耳にして居ても立っても居られず!我らもその幸福に是非あやかりたく!」

「は、はあ……?」


 てことは結局用件はないのね。ホントに何がしたいのかしら?

 けれどそんな人の気も知らずと、彼らは私の足元で一斉に片膝を突く。


「「「さあさあさあ!殿下!どうぞ我らにまた活をお入れ下さい!」」」

「活って何!?ーーしません!やりません!ご遠慮します!こんなパフォーマンスはクラスの皆様にご迷惑ですから、どうか今すぐお止め下さいませ!」


 そこでハッ!と気付いて私はフレイ君の方を振り返る。

 


ーーあ、いかん!彼は、凄く、こちらを気にしている!

 



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