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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園婚約期編
62/119

俺とワケあり過ぎる姉弟会議2

後半、読み飛ばし注意でお願いします。


 ガドゥラケルは実は俺の双子の弟だ。

 けれど彼の存在は決して公にしてはならない、世に秘匿せねばならない深い事情がある。初代ヒースクリフ王に連なる血統の、それも成人を迎えた代々の直系筋にのみ、今まで口伝でしか伝えられてこなかったある重要なエルドラシア王家の秘密。


「ーー確かにそうやって2人並んで座っていればまあまあ似ているわね。でも本当にそっくり瓜二つだったのは、精々10年くらい前まではなくて?」


 クレア姉が俺とガドゥラケルを見比べて率直な感想を述べる。隣のミューゼも姉に同意とばかりに頷いた。


「今はオルフ兄とよく似た顔の、年の離れた従兄弟か甥っ子。」

「つまりそれは俺がオッサンになったと言いたいんだな?ーーっちくしょう!何で俺以外の姉弟はこうも年を取らないんだ!クレア姉もミューゼも俺と同様に竜の血は出なかった筈なのに!」

「これは日頃の努力の賜物よ。あとは化粧とドレスのセンスね。」

「オルフ兄、女性の年齢を話題にしてはダメ。」


 いや、努力や化粧では説明つかないくらいの見た目なんだが。

 俺と年の近い筈のクレア姉もミューゼも、とてもユーフェやフレイを産んだとは思えないほど若々しい。そう思って愚痴れば、


「まあまあ。王様もまだ十分にお若いと思いますよ。というか寧ろ、男はそれくらい渋い年の方が女性にモテるし、一番口説ける異性対象者の年代が幅広ーくなる。王様なら尚更です。頼りがいや権力や財力というやつでイチコロですよ。俺なんて付き合っても大抵すぐにフラれるんです。最初はそれが魅力的だと釣れるんですが、いくらなんでもミステリアス過ぎるとか、この先の将来が見えなくて不安だとか、後は永遠に浮気に悩まされそうだとか~!まあ、確かにその通りですし!あはははッ!」


「「「っ笑い事じゃない!!!」」」


 ガドゥラケルの相変わらずの軽さに全員がツッコミを入れた。

 コイツは出会った当初からこんなんだった。基本的にちゃらんぽらんで自由気ままで快楽主義者。だけど不思議とどこか憎めない奴。


ーー今から34年前の事。

 先々代の側妃の腹から双子として産まれた俺オルストフとガドゥラケル。だがすぐに弟のガドゥラケルのみ、口の固く王家に堅実な地方の裕福な商家に預けられ、決して目立たず可能な限り表に出さぬよう言い含められて育てられる事となる。だが、そんな窮屈な生活など到底我慢きかぬやんちゃ小僧だった彼は、毎日のようにその屋敷を抜け出しては下街で遊びまくっていたという。幼少期より好奇心旺盛で何をやらせても器用に熟し、その気安い軽さから人脈も多く頭の回転も早い。その頃からすでに女子にモテまくっていたようなのだが、しかしこのガドゥラケルが特に優れていたのは尋常ならざるその身体能力だった。

 

 病気知らず、傷の再生能力がずば抜けて高い、体力も筋力も反射神経も動体視力までもが異常なレベル、そんなガドゥラケルの驚異的な身体能力だが、実際に世に明らかになったのは案外単純なきっかけで。

 ある日、たまたま街で見かけた騎士という職業に興味が湧き、先ずは剣士になってみようと早速その足で商業ギルドを訪ねて登録。そして自己流で剣を振り回して魔物や害獣討伐に無我夢中になって打ち込んでみればあっという間に頭角を現し、僅か3年でランクSの冒険者剣士になっていた。

 この時のガドゥラケルは15歳。史上最年少の天才剣士と注目されていたのだが、いつもトレードマークのように左目に眼帯を付けていたし、女にモテるからと髪も伸ばしてサラサラに手入れして横で束ねていた為、実は自国の王子である俺と顔がそっくり瓜二つ、という事実を世間にも当の俺にも全く気付かれてはいなかった。

 


ーーそして俺が成人の16歳を迎える直前になってようやく。

 アメリア女王の手引き(俺達が8歳の時に実母は病死)により、ガドゥラケルに引き合わされる事となった俺とクレア姉と妹のミューゼの3人。



「彼が竜?ーーこれが、竜眼?」

「そうです。信じられない話ではありますが、実はエルドラシア王家には竜の血が流れているのです。初代ヒースクリフ王が人でなく、竜であったと伝えられていまして、彼がエルドラシア王国を建国した後に人の子の養子をとり、その子に自分の竜の血を分け与えたのだと聞きました。つまり、二代目のエルドラシア国王は竜が作為的に作った人とのハーフと、そう言えるのでしょうね。」


 

 初代ヒースクリフ王が人でなく、竜だった!?

 アメリア女王が語るお伽話のような口伝に半信半疑の心地だったが、実際に先祖返りしたような特徴を持つ弟ガドゥラケルを見て、俺は嫌でもその場で納得せざるを得なかった。


ーーだが、それでも、一体何故。

 その説明通りに彼が本当に先祖返りの竜であったとしても。

 王家に生まれたこのガドゥラケルを成人の今の今まで王宮から遠ざけ、しかも隠し続けねばならない理由があったのか……?

 

 後からこの時の事を冷静になって思い返してみれば、自分にまさか双子の弟がいて、しかもこの成人の年まで日陰者として扱われ、血を分けた兄弟にさえ存在を秘匿されていたという理不尽な事実に、彼の肉親として非難と抗議の声を上げるべきだったのだが。


「それは要らぬ気遣いですよ。俺は例え選べたとしても王族なんて窮屈な身分は断固お断りですし、夢だった騎士にもこうしてなれたんです!しかも特別重要機密任務を担う王様直属の騎士!ーーイエイ♪なんてすっげえカッコイイ職種!今更この地位を手放す気は、ぜえぇっーたいありませんから!ていうか俺、普通に年を取らないから平凡な生活はムリっしょ?うん!あっははははッ!!」


「「「ーっだから、笑い事じゃないっての!!!」」」


 再度、盛大なツッコミが入った緊張も何もないその場で。

 かつての眼帯も現在の胡散臭いトレードマークの風避け兜も外された弟ガドゥラケルの、素の風貌が晒されていた。

 

 俺と同じ金色の髪に花菖蒲のような青紫色の瞳。けれどその左の眼球だけは、瞳孔が大きく、しかも縦に見開かれている。



「いつ見てもすげえ魔力を感じるよな、ーーその竜眼。」






*********


 




ーー断れば国際問題に発展する世界最強の貴人って、誰!?



 私はもうじき王立学園へと到着する馬車の中で考え込んでいた。

 親友のキャメルからの手紙には、私達の魔法学科2年生のクラスに編入生がやって来るとの事で。ーーそれも今日から!?


「“貴人”、と書かれているからには高い身分か地位に就いてるお方?ええと、シリーのような王族って事かしら?ーーねえ、フレイ君。編入生が誰なのか予想つく?」


 けれど例えどこかの王族であったとしても、伝統ある王立学園の定めた正規の手続きも踏まずとこんな中途半端な時期に強引に?

 どう考えてもおかしいよね、そんな感情を滲ませて前に座るフレイ君に意見を尋ねてみれば。


「あの……そのシルヴェスト王子、の事、なのですが……」

「うん?シリーがどうかした?」


 フレイ君が言いづらそうに口ごもる。

 シリーとは、私が長年に渡って女の子だと思い込んでいたペンフレンドのシルヴェスト王子の愛称だ。隣国トライアルト王国の第七王子で、ビジュアル系の色男な見た目なのに口を開けばオネエという残念なクラスメート。

 そういえば、この間はそのシリーとキャメルと3人で手作りカップケーキを作ったっけね。

 

「ユーフェリア姉上。……あの、もし、もしもの話なのですが、僕とシルヴェスト王子、双方の言い分が全く異なる事があるとすれば、姉上はどちらの言葉を信じますか?」

「そんなの、フレイ君に決まってるじゃない!」

「え!?」


 即答した私にフレイ君はびっくりした顔をした。

 でもそんな質問、全然悩むまでもなく答えは決まってるんだもの。


「ええとね、人を比べたり選んだりするのはおこがましいとは思うんだけど、でもやっぱり信じるなら絶対にフレイ君だね!ーーそれでもし、例えフレイ君の言葉が間違ってたとしてもいいの、それは別に関係ないの。だってその時は、また2人で一緒に正解を考えればいいわけでしょ?」

「………僕の方を、信じてくれるの、ですか?」


 なんでそんな意外そうな顔をするのかな??

 私とフレイ君は同胞で婚約者で運命共同体なのに。彼は私の事をこの世の誰よりも親身になって考えてくれていて、私の危機には過去の王宮だろうと駆け付けてくれた人なのだ。


ーーだから、この世の誰よりも彼を信じるに決まっている。


「フレイ君は、私にとってこの世で一番だもの!だか、ーー!?」



 その先の私の言葉は、彼によって遮られた。

 気付けば馬車の座席に背中を強く押し付けられ、覆いかぶさるような態勢で私はフレイ君にキスをされていた。






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