表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園婚約期編
61/119

俺とワケあり過ぎる姉弟会議1


 ユーフェとフレイが王立学園へと登校した後。本殿宮の俺の執務室にはここ数年来、全く訪れる事のなかった賓客が訪れていた。

 

 先々代の正妃であり、先代エルドラシア女王アメリアが産んだ第一王女クレメイア。そしてその2つ下の妹の第二王女ミュゼット。

 先々代の側妃が産んだ俺とは腹違いの姉妹となる。

 

 世間では大の不仲とされているその姉妹だが、謁見や会談用に豪勢に誂えらえられた横長テーブルの俺の向かい側で、2人はそこが定位置であるかの如く肩を並べて座っていた。

 


「よく来たな、と言いたいところだがクレア姉!その感情が高ぶると部屋丸ごと凍らせる癖、いい加減何とかしてくれよ!なあ、知ってるか?氷点下ではペンも凍って文字が書けなくなるんだぜ?後で解凍してもインクが変質して書きにくくなるし。……あーあー。俺、このペンすっげえ気に入ってたのに。」


「うるさいわね。ペンくらいいくらでも弁償するわよ!それよりも、オルフ!貴方、保護者のくせに監督不行き届きではないの!?何故うちの可愛い可愛いユーフェリアが!このミューゼのチート息子なんかとあのようにいかがわしい仲になってるのかしら!」


「……クレア姉、うちのキラキラ天使で完璧息子になんか文句か?このミュゼット、母としていつでも受けて立つ。」


「フンッ!あのしれっとした胡散臭い子のどーこが天使なのかしら!?私がいくら魔力で威圧しても何食わぬ涼しい顔して!その上、隙あらばうちの娘に気安くベタベタと触ってくっ付いて!政治的な理由から仕方なく仮初の婚約を結ぶ事は許可したけど!こうして訪ねてみれば既にもう2人が一夜を共にっっ!ーーちょっと!オルフ、どういう事なのよ!」


「へ!?いやいや、クレア姉!それは誤解だと思うぞ?フレイはあれで意外と超ヘタレだし、ユーフェのあの優秀な頭脳は色恋事にはとんとサッパリ。何よりも向けられる好意に対して犯罪レベルでニブい!うちの子に限ってというつもりはねえが、それ絶対に誤解だろ!」


「「うちの子じゃない!!私の子っ!!」」


 おお、すげえ息ピッタリだ。

 それもその筈か。氷の女王と妖精姫、昔からそう呼ばれているタイプの違う王家の美人姉妹は、案外と気性が似ていて気が合っているのだ。


「あー、ま、まあ、形式上は今は俺の子であるわけだし。俺だってあいつらを我が子のように可愛いと思ってるからな!ーーで?そんで、最近はどうだ?定期的に魔法通信文でやり取りしてるが、こうして久しぶりに俺達姉弟が全員揃って顔を合わせたんだ。単なる噂話や取るに足らない些事でも何でも構わんから、情報があれば聞かせてくれ。いつも本当に助かっている。」


 居住まいを正して俺は頭を下げた。

 このクレア姉と妹ミューゼの2人、実は国王の俺の統治協力者だ。

 

 深い理由あって10年は再婚するつもりがなく、また、王家にかけられた呪いの所為で後継者も望めない、そんな盤石でない地位の国王の俺の為にあえて仲の悪い振りをし、王国内の貴族間勢力を絶妙にコントロールしてくれているのだ。

 古くから王家と密接な繋がりがあり、莫大な権力も資産も有するレストワール公爵家とセヴォワ公爵家。その二大貴族家の裏のトップのこの2人を協力者とするならば、王国内の情勢を揺るぎないものとする事は容易くなる。王宮にいながらにして、それぞれの傘下にある貴族家の情報は逐一手に入るし、不穏な動向や表に出にくい問題も万事筒抜けだ。そして常に互いに目を光らせ睨み合わせ、牽制させ続ける事で国王の俺に対する不満からも気を逸らさせる効果もあるわけだ。





*********





「ーーと、まあ、こんなところね。以前うちの可愛い娘にお灸を据えられたあのロゼルバイジャン、ノベルスター、ボルドーの三家の馬鹿息子達も今では大人しいものだし、他は特にないわね。」


「あー、あいつらか。報告を聞いた時は呆れ果てたもんだったが、今では更正して真面目に騎士の修練に励んでるみてえだな。卒業後の進路希望は王宮近衛騎士……ユーフェの熱狂的な信奉者になったとか何とか……」


「ほぉーーーっほっほっ!そんなの当然ね!やっぱりうちのユーフェリアは世界一魅力的な娘ですもの!」


「いや、だから報告書まで凍らさんでくれ!高揚しただけでも絶対零度の冷気放つって、ホント危ねえっての!なあ、知ってるかクレア姉?紙って一度ふやけるとどうやったって元に戻らんのだぞ?」


「うっ……何度も、ごめんなさい。」

 

 いい加減に悪いと思ったのか、シュンと眉を下げたクレア姉。

 頼むから誰か彼女の魔力暴走を何とかしてくれ。クレア姉の魔力は過去に類を見ないほど異質らしく、通常の魔力コントロール方法や制御アイテムなんかではどうにもならないらしい。

 おかげで結婚当初は毎晩のように最愛の旦那様に凍傷を負わせ、それでも文句も言わずと頑張って最愛の妻を孕ませた時には、仕事一辺倒で唐変木のレストワールのやつの事を大いに見直し、俺は心の底から尊敬したものだった。ああ!おまえは男の中の男だ……!

 そして、その後に産まれた最愛の我が子ユーフェも、抱っこをしただけで低体温症に、添い寝なんてすればうっかり氷づけにしてしまいそうになり、結局は育児を人任せにするしかなかったんだよな………


ーーまあ、それ以外にもクレア姉がユーフェに近付けない、決して関われないとある重大な誓約があったわけなんだが。

 だがその誓約もついに無事に果たされ、早朝にも関わらずクレア姉は大手を振って娘に会いに来た、というわけなんだよな………

 

 そんな風にしみじみと感慨に耽っていると、先ほどからどんどん暗い表情になっているミューゼが口を開いた。


「精霊が今、ミューゼに教えてくれた。……よその国で、小規模な小競り合いがあったと。サーヴァント王国の国境沿いで地方軍が、隣国イエニス王国の軍と睨み合っている。」


「!!、イエニスが!?……それがホントならヤバいな。」


 サーヴァントはエルドラシア王国の西隣の友好国。

 いよいよ戦争が始まれば支援は当然必要だし、地理的にもそのままイエニス軍がこっちに進軍してくる可能性がある。


「イエニスはここ10年くらい前から急にあちこちの小国に手を出し、領土の拡大と国力の増強を推し進めている。過去にもそういう歴史があったが、うちの初代ヒースクリフ王が解放軍を立ち上げてこてんぱんに負かしたという。……そんな害悪にしかならん危険な国、いっそ何でその時にしっかり滅ぼしといてくれなかったものか。」


「それはそうと。戦争になればまた、人がたくさん死ぬ。孤児も増える。ミューゼは援助に動く。それがよその国でも、する。」


「ああ。止めはせん。ミューゼは声が聞こえるからな。再びセヴォワの財政が傾こうともそん時はそん時だ。うーん、きっとあの有能なフレイがまた何とかしてくれるだろうよ。」


 ミューゼは精霊や死者の姿をその目に映し、声も聞く事ができる。

 遠い国の戦争での犠牲者達の声も聞こえてしまう彼女は、時に家の財産を投げ打ってでもそれら敗戦国の憐れな民の援助をしてしまうのだ。それで過去にセヴォワ公爵家の資産を使い尽くしそうになったわけなのだが、絶対幸運のスキル持ちのフレイが手を尽くしてあっという間に持ち直させたらしい。

 だがフレイにはそんな事情など到底話せず、単に金遣いの荒く贅沢ばかりしている母として認識されている。ーーまあ、公爵家の財産はそこの領民が日夜汗水を流して納めた税金だ。関係のないよその国の民の為に使っていいものではないからな。


「しかしもっと詳しい情報が欲しいな。“影の者”を使おうか……」


「あっ、なら俺がひとっ走りして調査して来ますよ?……っと。や、えーと、すみません。余計な口出しを。」


 そこでようやく口を開いた男に皆が一斉に注目してしまう。

 俺の横に座っていた市井育ちの彼は、何十年と経っても俺達に遠慮している。


「余計ではないわよ。腕の立つ騎士の貴方ならば斥候も難なく熟せてしまうでしょう。よくユーフェリアの護衛もしてくれてるわよね、礼を言います。」


「うちの息子には胡散臭がられている。でもとても助けになってる。」


「おお。美しい姫君方にお褒めいただき、このガドゥラケルは光栄の限りです!いやあ、けどホントにどちらもお子様とそっくりで!」


 そういって他人行儀な言葉を発する男。

 名をガドゥラケルという彼は、この場ではいつもの顔を隠す風避けの兜を被ってはいなかった。

 

「そっくりって、ガドゥラケル。ーーおまえこそ、やっぱり俺にそっくりだわ。双子の兄弟なんだから似ていて当然か。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ