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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園婚約期編
49/119

私と郊外オリエンテーション4

スタートしたけどすぐゴールイン。

そして真ん中だけフレイ君視点。


 どん底最底辺だった彼女達の好感度がちょっと上がった?


 まあ、ここまで来ればメンバーチェンジはできないと嫌でも理解したわけだし、めいいっぱい振りかざした王女のありがたーい権威が脅しとなって効いてるのかもしれない。

 いや、うん!コミュニケーション自体が取れないより全然マシ!痛烈なお説教でも飴を差し出す手が小刻みに震えていようとも、ああ!アプローチがあるって、なんて素晴らしいんだろう!

 それによく考えてみれば彼女達はまだ14、5歳の少女達だ。

 山の天気と女心は何とやら、箸が転がっただけでも可笑しい多感な思春期の乙女達。現に今、支給された魔法光球で突然にキャッチボールを始め……



「いや!え!?リリシュさんにルヴィーナさん?貴女達はなんで魔法光球でうふふアハハと遊んでらっしゃるの!?」


「ええっ!ち、ちがっ、遊んでなんてっ、わた、私!」

「違います!私達は魔法光球の強度をテストしてるんですッ!」

「あ、そ、そうでしたの?」


 あー、びっくりした。

 そういえばこのおどおど小動物系美少女と真面目優等生タイプ、どちらも運動は得意そうには見えないけど、実際はどうなのかな?

 因みに私は得意ではない。だって頭使う方が断然好きだし。


「キャッチボールレベルの衝撃は問題ないようですが、常に魔力を注ぎ続けなければダメなようです。移動しながらの維持は少々キツイですね……これについては1人当たりの負担時間を決めて、3人で交代していくという事でいかがでしょうか?」


「あ、あの、リリシュちゃん、それでしたら、」

「いいえ。魔法光球の維持は私が1人で担当します。リリシュさんとルヴィーナさんは早く走る事だけに専念して下さい。」


「は!?お1人でだなんて、絶対に無理です!そもそも王女殿下は魔法のコントロールが苦手なのでは?これまでの実技授業を拝見していましても、失礼ながら基礎段階でよく失敗されています。」


 リリシュさんって、私の事よく見てるんだなあーー。

 確かに彼女の言う通りだ。私は王族なので生まれ持った保有魔力量は特別多いが、魔法のコントロールが壊滅的に不得手。今まで独学で学んできた結論はそうだった。


ーーけれどこの魔法学科で教えを受け、私は気付いたのだ!


「リリシュさん、その点はご心配に及びません。先ほども述べましたが、私は魔法の基礎はすでに十分に身に付いています。いえ、論より証拠かしら?この言葉が嘘偽りでない事を、今からしっかりと貴女達に見せて上げましょう!」


「え。は、はい??」





*********





「では第三十三回、魔法学科郊外オリエンテーション実践演習スタート!!クラスの皆さーん!くれぐれも怪我のないよう、十分お気をつけていってらっしゃーい!!ーーってぇ!女子の一組だけのスタートですか!ほう!これは随分と面白い駆け引き勝負になっちゃってますねえ!それとも早くもクラス全員、ユーフェリア殿下の魅力にノックアウトされてしまいましたか!?」


 

 溌剌はつらつとして如何にも楽しそうなクライシス教師の進行の下、ようやく始まりを迎えたこの郊外実践演習。

 

 ユーフェリア姉上の魅力云々とのお言葉だが、確かにそれは違えようのない事実だ。先ほどの彼女のあの毅然として光り輝くような玲瓏なお姿。不敬極まりないクラスメートへの厳しくも温情溢れる采配。そこからは誰が見ても聡明たる女王の片鱗が垣間見え、その後の男子達は実践演習の存在も忘れて長く姉上に見惚れていたほどで。

ーーまあそれも無理はない、と思わず口零す。


「ふっ、姉上が本気となられたならば、これは当然の結果だ。」


「あ、やっと復活したの?自分で暴走しといて勝手に撃沈って、ホントどうなの?彼女の女王様モード見ちゃってまた抑え切れなかったんだろうけど、あれは相当やり過ぎだし正直引くんだけど?」


「ぐっ、自分でもまたやってしまったと深く反省している。……やはり、その、今後は避けられてしまうだろうか………」


「そんなの自業自得なんじゃない?………でも、まあ、どうだかなあ。転位魔法の件で脅された僕が言うのもなんだけど、彼女ってやっぱ甘いんだよね。」


 呆れ顔から徐々に苦笑に変わるエルディ。その表情は、友人の僕が知る彼からすれば相当親しみが込められていて。


「スタートロスなんて僕にとってハンディにもならない。けれど君を含めたチームとして考えたのか、もっと優位で姑息な条件提示の駆け引きだってできただろうにしなかった。僕の王宮無断侵入に対しても無条件で悪意なしと判断してて、これといった処罰なしってそこに住む王女としてどうなの?」


 それは確かに。……前から思っていたが、ユーフェリア姉上はこちらが心配になるほど危機感が薄い(襲った自分が言うな、であるが)。

 

ーーしかし、エルディへの駆け引きについてはどうだろうか?

 

 彼という気難しい友人は、相手から強く出られれば出られるほど、それに比例して頑なになってしまう傾向がある。姉上のお言葉を借りれば、“ツンデレ”なこのエルディは、あのように緩い脅しで実はちょうど良いさじ加減だったりするのだ。

 けれど、それは言わないでおく方が賢明だろう。実際、姉上も無意識でやっておられたように思えるし……


「ていうかさ!あんな聞くも腹立たしい自国の王女への不敬発言に、口頭注意のみって、それってどうなの?ーーああ!やっぱりスッゴく心配なんだけど!」


「あはは!全くその通りよねえ!うちの国で王族相手にあんな不敬発言なんてしたら、高位貴族であろうと即刻打ち首よ?裁判もなしで即執行!ホント、ユーフェったらお人よし過ぎて、いつかとんでもない罠に嵌められちゃったりしそうよねえー。それが天然なあの娘の良いところなんでしょうけど、さすがにちょっと心配ね!」


 唐突に割り込んできた声にエルディと2人で眉を顰める。

 向ける眼差しに、自然と冷たさが滲み出ていて。


「シルヴェスト王子よ、貴殿の生まれたトライアルト王国は、それほど苛烈で容赦ない君主制のお国なのだろうか?この自分が知る限り、そちらの国王陛下は温情ある常識的なお方とお見受けするのだが?」


ーー気に入らない。何もかもが気に入らない。

 姉上に親しげにシリーと呼ばれているこの胡散臭い王子に、自分は理由の付けられない不可解な感情を抑え切れないでいる。

 始業式のあの日、留学してきた彼を初めて目にしてから今日までずっとだ。彼が姉上を“ユーフェ”と気安く呼び捨てにしているのもあるのだろうが。


ーーけれどそれらを含めて全てが全て、何もかもが気に入らない。

 あからさまに敵意の感情を彼に向けた、ーーその時。


「あっらー?私は過去の前例を口にし、ーー!?」



ーードオオオンッ!!

ーーピカアアアッ!!

ーーズオオオンッ!!



「何だ!?姉上達の向かわれた方角に異変が……!?」

「え、はあ!?複数の属性魔法が同時発動!?」

「攻撃魔法…ではないようねえ。一体どういう事!?」





*********





「ーー王女殿下!?何故こんなとんでもない事態になっているんですか!?納得のいくご説明をお願いします!!」

「ななな!あ、あわわわわっ!」


 スタートから間もなく。魔法光球の維持の為に展開した私の魔法の数々を目にし、堪らず叫び声を上げるリリシュさんとルヴィーナさん。

 しかしルヴィーナさんはどもってばかりだなあ。

 酷いあがり症なのか、それとも単に滑舌が悪いのかな?


「リリシュさん、ええと、ちょっと落ち付いて下さいな。驚かせてしまいましたが、この場で展開している魔法は全てミッション遂行に何の障害にもならない雑多な魔法ばかりです。気にせずにさっさと先に進みましょう!」


「これらの一体どこが雑多ですか!そう言われても無視できないのでツッ込ませていただきますが!とにかくまず、身体中に力がみなぎっています!不思議な音楽が上空から発生しています!足が変に軽いです!不自然に強い追い風が吹いています!ーーほ、他にも、ええと!ルヴィーナさん、お気付きでしたらお願いします!」


「はい、あの!ひ、日差しが急にちょっと和らぎました!遠くの視界がよぉぉっく見えてます!そして何故か空気が爽快で、どこからともなく花の香りも漂っていて!ーーあとあと!不必要に全身がスッキリ爽やかなんですぅぅぅ!!」


「そこまで分かるって凄いわ!でもあと残り一つ、気配を最小限に抑える隠遁魔法も展開してるんですが。そんなに興奮して騒がれてては台なしですよ?」


「ですから!魔法をそんなに無駄遣いする意味が分かりません!」


「殿下はふざけていらっしゃるのですか?これほどの種類の魔法を、しかも同時に発動できるとは正直驚きですが、ただのご自慢ですか?確かに大変素晴らしい才能とは思いますけれど、大半が余計で鬱陶しいです!今のこの場と状況をお考えになって、できれば即刻取り消して下さいません?」


 おお?ついにルヴィーナさんがどもらずに喋り切った!

 そしてリリシュさんは相変わらず言いたい放題な娘だなあ……


「バックミュージックとか何だソレで多少鬱陶しいのは私も認めます。ですが仕方ないのです。ーー納得いかないようなので詳しく説明しますが、実は私は魔法保有量があまりにも人より多過ぎて、これくらいの魔法を無駄遣いしなければ使いたい魔法が上手く発動しないのです。」


「「え???」」


「例えば、そうですね。私が常時保有する魔力量を1000と致しますと、この魔法光球の維持にかかる魔力は10に相当します。この場合、注ぐ魔力量を1/100に絞らなければならないわけで、私にとってその配分コントロールが非常に難しいという事実を、最近になってようやく気付きました。びっくり目から鱗です。」


「「ま、魔力保有量が、1000!?そして魔法光球の維持が10相当!?」」


「例えですよ?でも事実、そんなカンジの割合なんです。魔法を正式に習っていない私には魔力を1/100に絞る、という調整は相当難易な技でして。だからいつも私の魔法は爆発したり消失したりと上手く発動しませんでした。けれどその、他にも例えば10相当の雑多な魔法を10ほどまとめて同時発動すれば合計が100以上となりますよね。これで絞る魔力量が晴れて1/10となり、これなら何とか私でも配分コントロールが可能となる、というわけなのです。」


「こ、こんなにたくさんの魔法を発動してて、まだ1/10……?」


「チート!悪役令嬢様が完全無双過ぎるよっ!一体全体どうなってんの、どこ目指してどこへ向かってどうしたいっての!?うちはもう、このテンプレ外台風キャラに恐怖通りこして拝みたくなっちゃってんですけど!ーーう、うわあああ~んっ!!」


 リリシュさんは口を開けたまま茫然自失。そしてルヴィーナさんの方は突然ぶつぶつと早口で何事か喚き出し、その後はわんわんと泣き始めてしまった………

 

 えー、便利な魔法だってあるのにそんなにダメだったかな?

 思春期真っ盛りの乙女達はよく分からない。自分も一応は乙女な年齢だけど、前世を足すと精神年齢が彼女達よりもはるかに上なので、これがきっとジェネレーションギャップとかいうものなんだろう。

 ああ、分かり合えないって、キツイなあ………


 

 その後、何故か投げやりのヤサグレモードになった彼女達が、私の導き出した最短コースルートを鬼のように爆進。

 

 途中で見舞われた激しいスコールも「豪雨が何?こっちは後ろから台風並みの追い風が吹いてますけど!豪雨も吹き飛ばす爆風ですけど何か!?」と怯まず突き進み、更に運悪く藪から襲ってきた蜂の大群に「こっちの女王様はそっちの女王蜂様とはバグレベルに桁違いスペックで格が違うんですよ!とっとと消え失せなさいいいっ!」と気迫だけで追っ払ってしまう始末。


ーーあれ?この世界にバグとかスペックとかの単語あったっけ??


 というか、私の補助魔法効果を差し引いたとしても、貴族令嬢とは思えないくらい体力と脚力のあるリリシュさんとルヴィーナさん。

 逆に情けなくも後半へとへと状態になった私が、仕方なく回復魔法+10αを使おうとした直前、険しいお顔で左右から無言で腕を引っ掴んだチームメンバーの彼女達。そのまま半ば引きずるように私の手を繋いで一緒に連れていってくれたおかげで、私達は無事に首位でゴールインした。




まだ彼女達との溝は続く。

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