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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園婚約期編
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私と郊外オリエンテーション2


 魔法の基礎も覚束ない私と同じグループでは足を引っ張られてハンディキャップだ、それにもしかすると王女殿下の身を狙う襲撃者らに、自分が巻き添えを食うかもしれない。

ーーだからチームを変更してほしい。

 

 要約すると、そんなカンジの主張を魔法学科2年、全生徒(およそ40名)の前で堂々と言い放つリリシュ・ラッティナ嬢。


ーーこれ、もう完全に王族に対する不敬罪なんだけど?

 

 それともこのオリエンテーション中は貴族マナーは無礼講という、あの事前説明を彼女は歪曲して解釈してしまっているんだろうか?

 ねえ、リリシュさん。マナーに目を瞑るのと、不敬罪や他人への侮辱行為を見逃すのとでは、全然意味が違うんだよ?

 そして私についてはまだ我慢できるけど、“勉学に遊び気分の派手な取り巻きの方達”って、それは一体誰の事を指して言っているのかな?場合によっては国際問題なんだけど、分かってないんだね。


 そんなリリシュさんに、温和なエフィー先生の口元の弧が次第に消え失せていき……

 


「リリシュ嬢、ご自分の今の発言がどれだけ自分勝手で無礼であるのか、もう少し頭を使って考えなさい。こちらの王女殿下が初対面で“ユーフェリア嬢”、とお呼びする事を私などにお許し下さる気さくな姫君でなければ、貴女は即刻牢獄行きですよ。」


「ろ、牢獄行き……!? 私は間違った事は言っていません!そんな暴挙、通るわけがっ!」


「暴挙ではなく、王族が振りかざす至極真っ当な権威で適切な処置です。……それにリリシュ嬢は安全面の不安を感じているようですが、このオリエンテーション実施演習場であるグレイスケルの森は本日最高レベルの警戒体制が敷かれています。万一の場合の注意事項と対処方法はマニュアルなのでご説明しましたが、部外者や賊の侵入などほぼ限りなく不可能となっておりますので、心配ご無用です。」


「ああ。確かにエフィー先生のおっしゃる通りだ。素人目には全く分からぬかもしれないが、この森全体にかなり高度な侵入防止結界が張り巡らされている。これはもう、国王陛下ちちうえが主催する式典会場レベルの厳重さではないか?」


「それだけじゃないよ。刃物全般に及ぶ武器類の探知魔法、第二級以上の攻撃魔法の即座使用停止と使用者の位置情報確認、他にも細かな類いの防衛魔法が幾つかと、おまけに複数の上位使役獣が影で身を潜めて見守ってるんだけど。……アドロス学園長って、ホント凄いね。」


「あらあら!それは当然よ。だってうちのトライアルト王国でも高名な大魔法師として知られた方ですもの。だから王子の私がわざわざ留学して来たのよ? それを“遊び気分”とは心外よねぇ。ーま、そうでない事はこの私達のグループの達成順位で、彼女にしっかりとご証明させてもらおうかしら?」


 エフィー先生の補足に更に秘されていたであろう補足を付け足すフレイ君、エルディ君、シリーの3人。

 彼らこの3人が同じグループって、反則ではないかしら?

 リリシュさんの言う遊び気分って、何をやらせても優秀かつ簡単にこなしている彼らを皮肉ったんだと思うけど。

 でもね、全然そうじゃないんだよ?


「とにかくグループの再編成は行いません。リリシュさんは不利だと主張していますが、私は公平で最上のグループ分けだと思っています。提示された条件と環境下でお互いの利点を最大限活かし、欠点はカバーし合う、どれだけより良いチームワークが築けるか、それがこのオリエンテーション実践演習を行う目的でもあるのです。よろしいですね?」


「エフィー先生!生徒に平等である筈の教師までもが王女殿下に組みすると!? きっと先生は騙さているのです!“高貴なる知の姫君”、などと世間では呼ばれていますが、ですがこのお方は!」


「お黙りなさい。ラッティナ男爵令嬢、それ以上の王族に対する侮辱発言、もはや看過できません。」


「!!!」


ーー私はリリシュさんへ向かって歩を進めた。


 顎を軽く引き、毅然と背筋を伸ばして粛々と歩を進めると、丁度そのタイミングで一陣の向かい風が舞い、私の長い黒髪と膝下までのフレアスカートをフワリと靡かせて行く。

 舞台役者のようなその姿に、魔法学科の生徒全員が釘付けになる。


「……やはり、殿下は権力で私を黙らせるのですか?」


「あら? それは当然でしょう? 私はユーフェリア・レストワール・エルドラシア。このエルドラシア王国の王女なのです。リリシュさん、よろしくて? ーー現オルストフ国王陛下が筆頭王位継承者候補として迎え入れた養女であり、正式な王女身分を与えられているこの私に対し、上辺だけでも取り繕えぬというのならば、リリシュ・ラッティナ男爵令嬢は、本日限りでエルドラシア王国の貴族籍から外れるべきです。」


「なっ……!!」


「このエルドラシア王国が王政である以上、王族を敬えぬ貴族を捨て置くわけには参りません。不敬が野放しにされ、日々常習化していけば最悪の場合は反乱や弑逆を招き、その結果当然国は荒れるでしょう。そうなれば罪なき多くの王国民が犠牲となる。私の述べた言葉が、どこか間違っているでしょうか?」


「!!…………いいえ!あの、た、確かに殿下のおっしゃる通りです。短慮からの失言を深くお詫び致します。も、申し訳ございません!」


 さすがに言い過ぎだとようやく気付いたのか、急に顔を真っ青にして私に頭を下げるリリシュさん。

ーー本当に分かってくれたのかなあ……?

 でもこれ以上の断罪はこちら側にマイナスとなる。


「今回のみ、寛大な心を以ってして貴女の発言を聞かなかった事にします。ーーけれど、リリシュさん?」


「……は、はい。何でしょう?」


「もう一つだけ言わせてもらえれば、私は魔法の基礎は十分と言っていいほどちゃんと身に付いております。ーーそもそもリリシュさんは、この実践演習で要は1位を取れれば何も文句などないのですよね?」


「え、それは……」


 意図が分からず目を瞬く彼女に、私はニッコリと笑ってみせる。


「ふっ、よろしいですわ。今回は特別に私の本気を見せてあげましょう。“高貴なる知の姫君”、その通り名が伊達ではない事を、貴女のその曇ったお目めでようくご覧になりなさい?」


「うわっ!ーーフレイ殿下!フレイ殿下!どうどう!正気を!正気を取り戻して!終わってから!帰ってからにしない!?もう婚約者だし、同意があって人目がなければ問題ないと思うから!ね!ね!……多分??」



ーー?????


 エルディ君が必死になってフレイ君を宥めている。彼らは何をそんなに興奮しているのだろう??






*********






 さて、オリエンテーションのミッション内容は、各グループごとに一つずつ渡される手の平サイズの白い魔法光球を維持しつつ、このグレイスケル森を突破するというもの。

 魔法光球を消失させてしまった場合は、スタート地点で再びエフィー先生から受け取ってやり直し。


 この魔法光球は非常に扱いが繊細で難しく、常に一定の魔力を注いでいなければ消えてしまうし、人の手の上でなければ維持し続ける事ができない。木々や岩、動物や鳥などの物体が強くぶつかった場合は消失する。

 つまり、壊れやすいアイテムを持ったままの障害物競争である。

 

ーーちょっと面白そう。やっぱ魔法の存在するファンタジーチックな世界は郊外授業も一味違うね!


 ミッション開始直前、1人1枚ずつ配布された森の地図を必死で覗き込むリリシュさんとルヴィーナさんに私は宣言する。



「この私と同じグループになったからには地図とのにらめっこなど不要です。もう地形もルートも端に書かれた細かな注釈も、全て完全に私の頭の中に入ってます。そして今、ゴールまでの最短ルートを第三候補まで選出しましたわ。」


「「え!?」」


「さあ、この私についていらっしゃい。ーー必ずこの郊外オリエンテーション、クラス1位を取らせて上げるわ!」



ーーIQ140のエセお姫様、これ以上ナメんなよ!!




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