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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園婚約期編
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私と逆ハーレムスタート??


「良いお天気ですね。ご機嫌よう、リリシュさん、ルヴィーナさん。宜しければ、本日最初の授業場所である南ホールまで私とご一緒しませんか?」


「……ご機嫌よう。私のような下級貴族の者にまでご丁寧なご挨拶、恐縮の限りでございます。王女殿下よりせっかくのお誘いですが、あいにくと私はその反対方向の教員室にご用がございます。ーーでは失礼致します。」


「あ、あの、おおお、おはようございましゅ!うち…いえ!私も、ちょっと急ぎでお花摘みに!だから、その!またのご機会があればっ!」


「あっ、お待ち下さ……!」


 呼び止めようにも足早に去っていく2人の女子生徒達。

 迷惑そうな顔を隠そうともせずに私の誘いを断ったのは、茶髪茶目で銀縁眼鏡を掛けた優等生タイプのリリシュ・ラッティナ男爵令嬢。

 

 そして、とっても美味しそうなさくらんぼ色の髪と淡い桜色の瞳の、見るからにふわふわと可愛らしい容姿のルヴィーナ・ミシュレ子爵令嬢。

 

 この魔法学科2年生における、唯一の女子クラスメートだ。

 実は貴族の子息令嬢に魔法学科は大変不人気であり、今年の2年生はたったの1クラスのみ。更に女子生徒がこの2人と私とで全部で3人しかいないのだ。そして私ユーフェリアは、この2人しかいない女子生徒にどうやら嫌われているらしく………

 

 一応私、自国の王女サマなのだが。普通ならば王女サマの周囲には、放っておいても取り巻きのご令嬢達がわんさか群がってくるものでは?

 なのに何故、私はこんなにも彼女達に嫌われているのだろう?

 

 すったもんだの末、この王立学園に通い始めて約一ヶ月。

 呪いを解く為の秘宝集めも勿論大事だけど、わざわざ遠方の地から寄宿舎を利用して学びにやって来ている貴族子息令嬢も多いこの王立学園。せっかくなのだから、できればこの機会に派閥や権力図とは関係のない普通の友人を作りたい。いや!個人的な友人が贅沢だというのなら、せめて好意的な挨拶くらいは返してほしいかな!?


 けれど現状はあのご覧の通りで、未だ女子で一人だけボッチな私。そんな様子を見かね、いつも声をかけてくれるのが、ーーー



「ユーフェリア姉上、南ホールならば、自分と共に参りましょう。」

「何、ぼーとつっ立ってんの。通行の邪魔なんだけど?」

「こらこら!もうエルディ君たら、相変わらず重度のツンデレねえ!いい? 女の子にはね、もっと優しくしなきゃダメなのよ?」



ーー振り返ればそこにはキラキラの美形男子が3人。

 

 蜂蜜のように甘そうなハニーブラウン髪を左肩で緩く結び、切れ長のネーブルオレンジの瞳は理知的でミステリアスな猫のよう。

 彼はお隣りの国からの留学生で、私の長年の文通友達でもあるシルヴェスト・トライアルト第七王子、こと、シリー。てっきり女子だと思い込んでいたその彼は、苦笑しながら横のエルディ君の頭をポンポンと叩いている。

 おネエキャラでせっかくのビジュアル系王子様が台なしだが、逆に話しかけやすいと女子生徒の間で人気急上昇中。


「はあ!? 何気安く人の頭触ってんの!王子だが何だか知らないけど!あんた、馴れ馴れしいし偉そうなんだけど!ああもう!その手退けて!」


 瞬間湯沸かし器の如く怒りを沸騰させ、そのシリーの手を払い落としたのがエルディアス・ギュンスター。

 紅葉のようなエキゾチックな髪色といつも不機嫌な色を宿した紅茶色の瞳は、けれどデレた瞬間が堪らなく可愛い!と、実は上級生のお姉様方の間に熱狂的なファンクラブがあったりするほど。


ーーそしてもはや。説明するまでもないこの彼は、


「ユーフェリア姉上、彼らは置いてさっさと行きましょうか。今日の授業はホール全体を使っての、反射魔法の対処方法です。姉上ならば、その仕組みと理論を……」


 流れるように自然に私の手を取り、もはや当然の如くエスコートするフレイ・セヴォワ・エルドラシア。

 絹糸のようにサラサラなプラチナの長髪を後ろに一つで括り、こちらを見つめるエメラルドグリーンの魅惑的な瞳に、廊下にいる生徒は一人残らず釘付け状態で。


ーーうんうん!等身大のビスクドールが歩いて喋ってるね!

  

 仮に、ではあるがこのエルドラシア王国の王子様で、ならば必然的に王女の私の義弟になるわけで………そして現在は、この私の婚約者となっている。


ーーああ、はいはい。もう一度言おうか。

 姉想いで心優しいフレイ君は!とうとうこの私、ユーフェリアなんかの婚約者にさせられてしまったのだ!!

 ああ!それのなんと申し訳ない事か!!だって、フレイ君には大事に想う人がいるというのに!なのに!どこのどいつだか分からん奴のかけた呪いの所為で!王国の対面を保つ為とかでこの私なんかと無理矢理婚約!

 

ーーそしてこの初等科卒業までに呪いが解けなければ!そのままなし崩しに私と結婚させられてしまうのだ!

 

 あのはた迷惑な柱時計、ヒースクリフ王のルーティンパネルカードⅡ番の“太陽の砂時計”。その気まぐれによって飛ばされた過去の王宮。そこでの晩餐直後に彼、フレイ君に唐突に婚約を申し込まれた私は、そのショックと溜まりに溜まった疲労にて熱を出し、その後三日間も寝込んでしまう事となった。

 

 そして目を覚ました私を待ち構えていたのは、ベッド脇で私とフレイ君の結婚誓約書を掲げた王様の姿だった。

ーーおいこら!義娘とはいえ、女子の寝室に無断で入るなっ!そして結婚誓約書って何だ!?婚約すっ飛ばしてもうそんな書類作ったのぉ!?



「ーーやあ、スマン。どうやら俺は義息子も可愛くて仕方ないらしい。まあ、あんな泣きそうな顔を見せられちゃあなあ? そんなわけでこの通り、必要なサインはきっちり完璧に揃っちゃってるから。あーー、ユーフェよ。どうしても嫌だったら卒業までの残り2年、とにかく死ぬ気でパネルカード集めを頑張ってくれ!では、さらば!」


 そう言うが否や、その結婚誓約書の写しを私の枕元にスッと置き、そそくさと逃げ去っていったオルストフ国王。


ーー!!!、な!なななな、何これぇ!?

 婚約を申し込んだ当のフレイ君と恐らくそれを脅迫した今の王様、そして大司教様の認証印は分かるけど!なんでここに私のサインと拇印が押されているのぉぉぉ!?

 ハッ!と見れば、自分の右手親指の腹がうっすらと朱い……


 

ーー思わずその時の事を思い出し、親指にギリリと力が加わる。



「ーー…なので、姉上、大丈夫ですよ。」

「え。ああと、大丈夫って、何が?」


 あ。回想に浸っていて何も聞いてなかった。

 正直に聞き返せば、ニコッと笑ってもう一度言ってくれる。

 

「魔法学科では来週、郊外オリエンテーションが行われます。自然豊かな森でチームを組んで実施演習をするのだとか。協力し合って共に行動すれば、姉上の良さがきっと彼女達にもお分かりいただけるでしょう。」


「フレイ君!……うん、そうだね。心配してくれて有難う。」


 そっちの心配だったか。

 でもそうだよね。オリエンテーションはそういう親睦を深める目的で行われる郊外行事。友達を作るまたとないチャンスだ。

 でもね、フレイ君。実施演習なんだよ? 魔法の実施演習!うん。この私がみんなの足を引っ張る事間違いなしさ!全然大丈夫じゃないんだよ……。

 

「うーん。せめてお弁当でも差し入れして、好感度を上げる努力をしてみるね!昼食は学園側から各自サンドイッチが支給される手はずだけど、確か持ち込みはOKだったよね?」


「ええ。生ものは食前にエフィー先生の検査が必須ですが、男子はサンドイッチなどでは到底足りないので、ほとんどの生徒が携帯食か菓子類を持ち込むようですね。……あの、もしかして、それは姉上がお作りに?」


 期待するように輝くこの目は、きっと私の勘違いではないようで。


「ええと、良ければ、」

「っ宜しいのですか!楽しみです!姉上の手作り弁当…!!」


ーーいや、まだ「良ければ、」としか言ってないんだが……

 そして前回も不思議だったけど、どうしてフレイ君はそんなに私の手料理が食べたいのだろうか? 別に私でなくても、彼が頼めば誰でも作ってくれそうなものだけど??


 今も周囲を見渡せば、フレイ君の姿をぽーと見惚れている様子の女子生徒の姿がそれはそれはもう、数え切れないほどたくさん。

 今まで王宮という一般とは隔絶された狭い環境にいたから、だからこういう公共の場に出て初めて実感する。

 

 彼は王子身分でなくても問題なくモテる!

 そしてそんな彼に寄ってたかってやって来るご令嬢に中には、子ができなくても構わないくらい好きです!、と言ってくれる得難い女性もきっといるに違いなくて。

 だから、これだけはちゃんと確認しておかないと。


「あの、疑問なんだけど。フレイ君は、私が婚約者でいいの?」

「……………それは、どういう意味でしょう。婚約を申し込んだのはこの僕なのですが?ユーフェリア姉上の目には、僕がそれほど不誠実な男に見えると?」


 引き攣った顔で返答するフレイ君。

 いや、誠実とか不誠実とかの問題じゃないんだけど……

 困った顔をする私に、彼はため息混じりに再び口を開いた。


「僕との婚約をお受けしなかったのであれば、姉上はあの恐過ぎる婚約者候補のうちの誰かを、国王から強制的に当てがわれる予定だったのですよ。それも近いうちに。姉上はその方が宜しかったとおっしゃられる?婚約者になった事を、もう後悔しておられる……?」


ーーあれ?なんか怒ってるぞーー?


「僕と取り敢えず婚約しておけば……そうですね。少なくともユーフェリア姉上には、こうして2年は自由でいられる猶予が与えられます。」


「あ、う、うん。その通りだね。でもね、あの、」


「姉上。ーーもし最悪2年経っても秘宝を集められず、呪いが解けなかった場合。この僕相手ならば、その時は……“白い結婚”をすれば良いのです。」


「白い結婚……!それはあの、形だけでいいと!?」


「はい。つまり、結婚後も諦めずに秘宝集めが可能というわけです。その後にもしも呪いが解けたのならば。ーーその時に、ユーフェリア姉上に他に結婚したい人ができたのならば、この僕が責任を持って婚姻を無効に致します。……約束します。」


「フレイ君……!!」


 何でそこまで。そこまでフレイ君は、私の為にしてくれるの?

 その理由は分からない。けど、ここまで言われてはもう、この私も覚悟を決めないと!だって年下の男の子が!こんなにも私の事を真剣に考えてくれているんだから……!


「うん!分かった!私とフレイ君はもう運命共同体だね!ならば、未来の旦那様!ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願い致します!」


「ーーだ、旦那様!?」


 

 うんうん、よし!腹も決まった事だし!

 先ずは張り切って、愛妻弁当でも作っちゃおうか!


 



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