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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園編入学日編
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僕と人攫い時計と予測外の未来3


  煽られ責め立てられ、完全に平常心を見失っていた。こんな事を、しかもこの人に言っても仕方がない。きっとまた、アホとかヘタレだとか散々好き勝手にこき下ろすのだろう。

 誰にも言うつもりもなかったこの秘め事を、ついカッとなって口から吐き出してしまうとは……!



ーーーガンッッッ!!


「!、っおい!フレイ!」

「ちょっ!何してんの!壊れたら元も子もなくなるよ!」


 僕は衝動的にくだんの柱時計を殴りつけていた。

 何故この人はこんなにも僕に絡んでくるのだろうか?

 鬱陶しい、いい加減に勘弁してほしい、ユーフェリア姉上と僕の事は、お願いだからもう放っておいてくれ!!


ーーそう心の中で叫んでいたら、ポンと頭に手を置かれる。

 なんて無遠慮で厚かましい!急所に手を置くなど完全に人をナメている!更なる苛立ちを感じながら、僕は手の主をキッと睨みつけた。


「何です? そこは肘かけでも馬の首でもましてや小飛竜の臀部でんぶでもありません。余裕で届くからといって、気安く触れないで下さい。」


「小飛竜の尻って、おまえな……いや、なんだ、その。」


 目が忙しなく右へ左へと泳ぎ、王は困った顔をしていた。

 煩わしい。さっさと人の頭から手を退けてほしい。乗せる意図が分からない。頭蓋骨を軋ませようという新手の嫌がらせか?


「あー、そんな事情があったのに、色々と焚きつけて悪かった。」


「ーーは?悪かった?」


「うん、もういいわ。俺も鬼じゃない。そんな理由なら仕方ねえな。あー、ユーフェには、この俺が責任持って別の結婚相手をあてがっておく。何にしろ、そろそろ婚約者くらいは決めておかんと、世間体ってもんがな?」


「姉上に、別の、結婚相手を!?」


「ああ。実際他にもな、この俺が選別した候補者はいるにはいるんだ。ーー例えば…そうそう、うちと長年の友好国であるサーヴァント王国の名将、イーグル将軍なんかは…」


「その将軍は有り得ません。彼は未婚であるのに係わらず、すでに認知した子供が4人もいらっしゃいます。きっとこの先も女性関連のトラブルが絶えず、大人しい姉上は日々泣き暮らす事でしょう。」


「ユーフェが大人しい?…あー、なら、南のエリシュナ女王国のカイザー王子とかは男子で継承権もないし、研究者タイプで著書も出されているほどの文化人だ。研究好きなユーフェと相性が良さそうで…」


「彼の出版された著書は『死後の世界の考察』『魂の存在理論と神との対話』などのオカルト関連です。そこに姉上の聡明過ぎる頭脳が加わったら、正直どうなるとお思いですか?」


「……ヤ、ヤバいくらい熱狂的な、新しい宗教が確立しちゃいそうだな!」


「……他には?」


「あ、えーと…ファレスファーランド公国のレキウス公子なんかは、年齢はちょい上だが民に寄り添う名君主と名高く…」


「彼は男色家です。私邸で雇われている使用人の全てが、例外なく男性なのだそうです。そんな危険な人外魔境に、純粋培養の姉上を放り込まれると?」


「じゅ、純粋培養……えらい夢見てんなー。」


「選別してそれらですか。まるでお話になりません。もっと真面目に真剣に!ユーフェリア姉上が嫁いで確実に幸せになれる相手を見繕って下さい。」


「いやだからな、それはやっぱおまえだろ?」


「……っ!」


 頭に乗せられた手が、ガシガシと人の頭を引っ掻き回す。

 一度あっさりと切り捨てておいて、またもやそんな事を言うのか。

 呆れつつ、冷ややかな視線を投げつけるも素知らぬ顔の王。


ーーけれど一瞬ドキリとする。

 鬱陶しい腕越しに見上げた王の目が、驚くほど真剣な色を宿していて。

 そしてこの先の未来を覆す、衝撃的な言葉を彼は口にする。

 

「ーーよく聞け、フレイ。この世界にはな、“間違いなく絶対”なんてもんは存在しねえんだよ。運命だとか未来だとか将来の道先だとか、そんなのはまだ何一つ決まっちゃいねえ。選んだ選択肢が間違いなく絶対に正解だとか、それは全て間違った思い込みだ。おまえの持つよく当たる直感など、可能性から導き出された単なる予測でしかない。」


「よ、予測……? 絶対幸運のこのスキルが、単なる予測……?」


「ああ、そうだ。“神からの特別な贈り物”、などと大仰な文句で伝わるそのスキルはな、有り難い完全無欠の正解答ではなく、ましてや百発百中の予言の力でもないんだ。ーーただ限りなく正解に近いだけの予測。予想でもないといえば分かるか? おまえの持つスキルはそういうもんなんだと、俺なりに解釈している。」


「!!、自分がこのスキルで選ぶ選択肢が!単に、限りなく正解に近いだけ?絶対に当たるわけではない…!?ーーそんな馬鹿な話…!」


ーーいや!信じられない!彼がそう勝手に解釈しただけでは!?

 

 だってこのスキルは今まで一度たりとも外したことがない!!記憶にある限り、僕の知りうる範囲での全ての結果は百発百中だった!!

 なのに今更このスキルが“絶対”ではないのだと言われても!

 “姉上が僕と結婚すれば絶対に不幸になる”、僕が感じたそれが、まだ未決定の予測の未来でしかない……?


ーーも、もしも、それが本当に真実であるならば!

 姉上が僕と結婚しても、不幸にはならない未来もある……!?


「顔つきが変わってやがる。……ったく!俺のどアホで不器用な義息子に一つ、有り難ーい助言をくれてやる。ーーあんな、今ユーフェが引き受けたばかりの面倒事。フレイ、おまえも一緒に手伝え。」


「姉上が引き受けた面倒事? それは帰りの馬車で目にした、あの不思議なルーティンパネルカードに関する事でしょうか?」


「それ以上はユーフェかそこのエルディ坊に聞け。んーで、フレイよ。その面倒事が無事解決すれば、予測の未来は否応なしに大きく変わるぞ。」


「!!、それはどういう、」


ボオオオオオオオーーーーーン!!!

ボオオオオオオオーーーーーン!!!

ボオオオオオオオーーーーーン!!!

ボオオオオオオオーーーーーン!!!

ボオオオオオオオーーーーーン!!!……………



「「「!??」」」


 問題の柱時計が突然、大音量の時報音を鳴り響かせた!

 時刻数を超えても止まる気配がない!?寧ろどんどん音が大きくなっていく!!こいつ、まさか壊れたのか!?


「鼓膜が破れる!!それに魔力が集中できないんだけど…!!」

「やべえ!!意識が持っていかれる…!!」

「き、救援を!……ううっ、!!」


 あっという間にこの場の全員が、入口近くにいた見張り役のローラントまで膝を突いてしまっていた!

 とてつもなく膨大な魔力が柱時計から放出していく!!

 マズい!気を失っている場合ではないのに!けれど強制的に眠らされるように意識が遠退いていく!!

ーーっくそ!冗談じゃない!!姉上とリュカを取り戻さないといけないのに……!!


「ーーっふざけるな!この人攫いめ!彼女を、僕の大事なユーフェリア姉上を返せ!!秘宝だか何だか知らないが!おまえの弱点はどこか分かっている!そこを壊されたくなくば、速やかに姉上のもとへ連れて行け!!」


ーーでなければ、何としてでもおまえを叩き壊す!と、両足を踏ん張って叫び、脅し通りに拳を振り上げてみれば、ーーーーー


『ーー御意。』


「!??」


 朦朧としかけていた意識が急激に元に戻った。

 けれど、何故か僕だけ? エルディと王、それにローラントの3人は完全に崩れ落ち、床に伏してしまっている!!



ーーそしてその直後、鈴を転がすような美声が耳に響いた。




『ーー改変の主達よ。貴殿らの望むままに従いましょう。』





 

*********





 その後、ハッと気付くとエルドラシアの王宮によく似た建物内に一人で立っていた。

 間取りや建築スタイルは酷似しているのだが、壁紙などの内装や装飾品があたかも女性の好みそうな雰囲気の宮殿。

 随所に飾られているフリージアは、確か先代アメリア女王が一番好んでいたと言われる花?

 

 とにかくこの宮殿のどこかに姉上がいる筈!

 宮殿の巡回警備兵や使用人らと鉢合わせしない箇所とタイミング。それらをスキルを使って選択しつつ、あちこち駆けずり回っていると……。


ーー見知らぬ男と並んで歩く、姉上のお姿をついに見つけた!

 ああ!ご無事で良かった!何故か侍女風の衣装を身に纏っておられるが、意外で新鮮で実にお可愛いらしい!

ーーえ? 隣のこの如何にも冷徹そうな片眼鏡モノクル男が若い頃のリュカ!?全然今と別人じゃないか!!


 だけど気の所為だろうか? ユーフェリア姉上の僕に対する態度がずいぶんと砕けている? こう、凄く親しげというか……

 そして聞けば、ここは二十年以上も前の、アメリア女王時代のエルドラシア王宮だという。突然わけも分からぬこんな過去へ飛ばされて、やはり姉上とて不安を感じているのだろう。僕だと偏る、そっくりな偽者まで現れたという始末。


 え? その偽者と協力して、姉上が鍋を作っていた???


ーーその後、落ち付いて話をする為に星時計の間に場所を移すと、姉上とリュカはくだんの柱時計を熱心に観察し始めた。

 帰還条件がどうとか秘宝が気まぐれだとか、この人攫い柱時計について知っているような発言を交わしている。

 ユーフェリア姉上が引き受けたばかりの面倒事……王のあの助言は多分、この秘宝が深く関係しているに違いない。

 そしてその面倒事を解決すれば、予測の未来が変わる…!?



「ユーフェリア姉上。ーーこれを機に、お聞きしていただきたい大事な話があります。けれどこれを聞いたのならば、今、姉上が関わっているであろう面倒事を、僕にも全てお話し下さいませんか?」


 可能性が僅かでもあるというのなら、それに賭けてみたい!

 単純かもしれないが何もせずにいられるわけがない!覚悟を決めたこの僕の提案に、けれど勘違いした姉上はとんでもない言葉を返してきた!

 

ーーこ、こここ子供は欲しいか?だだだ、だってぇぇぇ!??


「そ、ええっ、や。ええと!そ、それは、勿論!」


 動転のあまり、たっぷりと遅れた返答に姉上は大きく頷く。

 制御できないほどに無様に掻き乱れ、しかも盛大に真っ赤になっているであろう顔を手の平で覆い隠す。ーーっ無駄だろうけれど!

 だが更にこの心臓を撃ち抜く爆弾発言が追撃してきた!


「だよね!うんうん!やっぱ子供は欲しいよね!男の子でも女の子でも、フレイ君そっくりな可愛い子なら絶対この私でも欲しいし!」


「可愛……いえ、はい。あ、姉上に似ても、世界一可愛い、ですよ?」


 黒髪の聡明な顔立ちの女の子。きっと直ぐに言葉を喋り出したり難しい本を一人読んだりして、絶えず周囲の皆をあっと驚かせる天真爛漫で愛くるしいお姫様。



「よし!フレイ君!子供がちゃんと産まれるように、一緒に頑張ろう!」


「え!?が、頑張る!??」











ーーー僕がこの直後。

 

 不甲斐なくも再び硬直してしまったのは、どうにもやむを得ない事だったと思う。この場で彼女を押し倒……しそうな気分になった事実は、微塵も否定はしないが。



 



王様が選別した結婚相手、問題はありすぎるほどありますが、それなりに考えられています。

それぞれ個性的ですが、性根は善良な方達です。

そして子供ができなくても離縁されない!


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