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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園編入学日編
39/119

僕と人攫い時計と予測外の未来2

後半はオルストフ国王視点です。

追い詰めてもらいました。


 爆弾発言を落としたオルストフ国王陛下が部屋から退出された後も、僕は立ったままの状態で一歩も動けないでいた。

 

 ユーフェリア姉上にとって、自分は恋愛対象外どころか政略結婚の相手としても対象外だったというこの絶望的な事実。

 しかも王国のトップである王からの婚姻の打診を「考えた事もない」とのあの返答で、事実上拒否したも同然、という事で……

 もはや好きか嫌いかとかの問題ではなく、そもそも彼女の瞳に自分は男として認識されているかどうかも疑わしく……


ーーは!!そ、そういえば!!

 

 始業式で親しげにシリーと呼んでいた、姉上の長年の文通友達だったとかいう隣国トライアルト王国の、あのシルヴェスト王子。

 彼へ宛てた手紙の中で、姉上は僕の事を“ビスクドールのフレイ王子君”と揶揄していたとか。(※第25話、魔法学科適性試験2参照)


ーー男かどうか以前に!!まさかのお人形さん扱い!?


 驚愕の事実に真っ白な抜け殻同然となって呆けていた時。

ーー次なる来訪者が激しくドアを連打した!!



ーーードンドンドンッ!!!



「フレイ王子殿下!!緊急事態です!!急ぎ、王子殿下にお聞きしたき事がございます!!ーー殿下の侍医、リュカ・アシュリー殿はこちらにお見えでしょうか!? 王女殿下と共に星時計の間にいらっしゃった、彼の現在の所在に心当たりはございますか!?」


ーーえ!?


 腑抜けた頭が一瞬で覚醒する!!

 即座にいつもの“フレイ”に戻り、来訪者の、ーーいや!姉上の専属護衛騎士らが待つドアをかなぐり開けた!

 

 先ほどの声ですでに察していたが、先頭に立って口上を述べたのはローラントという名の長身の騎士。

 こいつは王に与えられた“王女専属護衛騎士”という名誉なる役職以上に、姉上のあの聡明さに骨の髄まで深く傾倒している男!

 ならば訪問目的が、単にリュカの所在確認ではない事は明白で!


「ローラント!回りくどい言い回しは結構!ユーフェリア姉上の御身に何が起きた!? 診察中で彼女と一緒にいたリュカが行方知れずとは、それは一体どういう事だ!?」


「!!、ーーゆ、行方知れずと申しますか、そのっ!実は診察中であった星時計の間からお二人の気配が忽然と消え失せたのです!確かに施錠はされていなかった筈のドアが何をしても開かず!そして私どもの呼びかけに、王女殿下らの返答も一切なく!」


「ーー何だと!??」


 王子の仮面も剥ぎ捨てて騎士らを睨みつける!

 エルドラシアの王宮警備体制は恐ろしく強固で厳重となっている!

 そんな厚い警備網を誰にも見つからずに突破して姉上らを攫うなど!よほどの手練れか、裏で手を回した組織的な犯行か!?


「だがしかし!王宮内から2人もの貴人を安々と見失い、捜索の為にその犯行現場である星時計の間にも入れずにいるとは!おまえ達の専属護衛騎士の名はお飾りか!」

 

「は!!大変面目なく!!申し訳ございません!!ーー現在はくだんの星時計の間の壁を破壊するべく、魔法師団の精鋭を緊急召集しております!!内部状況が分からない状態では、力任せに我らが破壊するわけにもいかず!!」


「いや!ドアはこの僕が何とかする!召集した魔法師団は随時、手分けさせて王宮内外の捜索に当たらせろ!痕跡を一つも見逃すな!いいな!」 


「は、はい!!ーーし、しかしフレイ殿下が、でございますか!?」


 言うや否や、踵を返して執務机に戻った自分は、書きかけでひしゃげた状態だった手紙を無造作に引き裂く!

 そして姉上が行方不明になったという星時計の間へ向かった!

 その僕の後ろを護衛騎士の中から一人、当然の如くローラントが追従していた!





*********





「姉上とリュカは行方不明になる直前まで確かにこの星の間にいらっしゃった、ーーその報告に間違いはないか?」


「はい!診察をお受けになるという事で、我々護衛騎士らは全員ドアの外で控えていたのですが……唐突として室内からお二人の話し声が途絶え、それどころか物音一つしなくなったのです。」


「ふうん、なるほどね。ーーそういう事態で僕を喚んだわけか。まあ、僕はユーフェ嬢に借りがあるわけだし、別に構わないけどさ。で? 僕は何をすればいいの、フレイ殿下?」


「ーっな!こ、こちらはギュンスターのご子息様!?」


 後ろから気配もなく割り込んだ声にローラントが驚く。

 厳重警備のこの王宮に容易く侵入してしまえる例外中の例外少年、それをこの護衛騎士に知られるのは最悪手だ。

 けれど今、そんな事を言っている場合ではない。


「あ!そこのあんたさ、非常時だから大目に見てくれる? 事前に許可なく王宮内に魔法で転位したの、ええと、マズイんだったっけ? 誰にもバレてなんかないけど、今回は見なかった事にして。ね?」


 姉上を昏倒させるほど驚かせた件を反省したのか、今回は目立たない場所に転位し、そこから歩いて来たらしいエルディ。

 今回のこの騒動、何らかの特異な魔法が使われた可能性が高い。だから魔法のエキスパートであるこのエルディの力を借りる事にした。

 実はこのエルディとやり取りしている手紙には、いつも予め用紙自体に術を仕込んでいるのだ。

 手紙が他の者の手に渡って読まれてしまった場合や、相手に読まれずと破棄されてしまった場合には、宛て先のエルディにそれが伝わるようになっていて。

 そして僕が自らの手で引き裂いた場合には、緊急事態の合図である事を事前に取り決めていたのだ。

 

ーーだからエルディは、こうして駆け付けて来てくれた。

 そんな頼もしい友に、毅然と僕は指し示す。



「エルディ、ここだ。ーードアのこの箇所が“何となく”、最も確実に破りやすい。現在展開する術式の、一番手薄で脆い突破口。」

「了解。ーー背の高いそこの人、退いてて?」

「“何となく”、けれど、最も確実に破りやすい?ーーフレイ殿下、それは一体どういう事です……?」


 エルディは躊躇う素振りもなく、右手をドアに向かって翳す。

 彼は魔法の行使に一々詠唱など必要としない。



ーーやがて僕の指示通りにしたエルディが、星時計の間のドアをこの世から跡形もなく消失させた。



 




*********







ーーくそ!最悪な知らせが俺の元に飛び込んで来た。

 もはや呑気に一家団欒の楽しい晩餐どころではなくなった。


 いつまでも煮え切らない態度を取り続けるアホなフレイに、色々と調子に乗って焚きつけたのがほんの今さっき。

 あいつは端から見ればちょっと…いや、もうストーカー犯罪スレスレの、かなり異常な執着心で昔からユーフェを大大大!大好きなくせに!そのくせ絶対に彼女を手に入れようとはしない。

 まあ、互いの公爵家やそれぞれ傘下におく派閥同士の確執やら抗争やら問題は山済みなんだろうが、それでも聡明な頭脳を持つユーフェと統治者として高い資質を持つフレイのあの2人の事だ。

 本気で手を取り合って協力していけばそんな障害はどうとでもなるし、義父で国王のこの俺だって、喜んで力になってやるさ。

 

 だが例えそれらを無しと考えても、フレイのあくまでもユーフェを守るだけ、というあの頑なでヘタレな態度はどうなんだ?

 いや、ホント、フレイらしくないぞ?



ーーユーフェと結婚できない、何かどうしようもない事情があるのか?


 

 ああ、いや!今はこんな私事を考えている場合ではなかったな。

 そのうだつの上がらないフレイと別れた直後に、ユーフェとアシュリーの消息が確認できなくなったという緊急連絡が入ったのだ。

 連絡内容によれば、つい先ほどまで俺とユーフェが会談していた、あの星時計の間のドアが梃子でも開かなくなったとか。

 そしてそこで診察中だった筈のユーフェとアシュリーの返答がないと。中で倒れているのか、もしや何者かに拐かされたか!?



 だが俺が星時計の間に到着すると、開かぬ筈だったドアが丸ごとスッポリ無くなっていて?? 室内にはすでに立ち入っている者らの姿が見えた。

 ええと、やっぱりあのユーフェ命のフレイの姿と……その隣は、あのギュンスター家の小僧、エルディアス坊やか!


ーー俺は入口脇で立つ護衛騎士を横目に、そのまま室内に入る。



「ーーフレイ!ユーフェとリュカ・アシュリーの姿は!? 何か手がかりになるようなものは見つかったか!?」


ーーん? フレイは無数に展示された時計の中の、一番端っこの柱時計の前に立ったままで、こちらを振り返ろうともしない。

 あの振り子が左右に揺れ動くのが特徴的な、大きな柱時計は………


ーーーあ!!あれは……!!


「フレイ!こいつが犯人か!?この秘宝のっ、」


 二度の呼びかけに返答もなし。

 その異常な様子のフレイに真横まで接近した俺は、そこで奴の顔を初めて見てビクリと反射的に身構えた!

 

「や、……その、どうしたんだ、フレイ?」


 見たこともないほどの怒りをその身に宿した義息子がいた。

 いや、表情は怒っていない。だがどうだろう? とんでもなく尋常でない怒りのオーラが、確かにフレイの全身を取り巻いているのだ!


「ーーお義父上、神妙にお答え下さい。このふざけた柱時計は一体何ですか?……この人攫い柱時計、こいつが紛れも無く、ユーフェリア姉上とリュカを連れ去った元凶です。それは絶対に、間違いありません。」


「絶対って、ーーいや、おまえ!何でそんな事が分かる!? そう思うに至った理由は何だ!? 」


 片足を一歩、まるで本能的に畏れるかのように後ろへ引いてた。


ーーおかしい、異常だ。

 相手はまだ未成年の、しかもお人形のような顔の王子。

 実際やり合えば力の差は歴然なのに、だが決して歴然ではない、ある種人外レベルのただならぬ気配がそこにあった。


「理由? いいえ、僕が絶対と言ったら、それで確定なのです。国王陛下はご存知ですね? 僕のこの百発百中の、“絶対幸運のスキル”。」


「おまえ…!それを堂々と言のか!? そこに騎士もいる!」


「ハッ。それが何だと言うのです? 彼女の大事に、持てる手札を惜しんでなどいられません。ーーこうしてる間にも!ユーフェリア姉上がどんな目に遇っておられる事か!それを想像しただけで!今にもこの気が狂いそうなのです!!」


「フレイ殿下!ちょっと落ち付いて!神気が漏れてる!」


「ああもう!!あのなあ、フレイ!おまえはそんなにもユーフェが大事だって言うくせに!なのにだったら何でさっさと自分の手の内に入れとかねえんだよ!!最悪の事態になってから喚いたって遅えんだよ!!ーっこの、ヘタレのどアホフレイ!!」


 思わず叫んだ。

 ホント、こいつ意味分からん!

 怒りたいのはこっちだっつーの!!

 だが俺のその的を射過ぎた指摘に、フレイは死にそうなほど悲しげな目をしてしまう。あー、おいおい、泣くなよ?泣いたらどうすりゃいいのかもっと分からんわ!



ーーしかし俺が追い詰めてしまったフレイは、きっと今まで一人でしょい込んでいたらしい、衝撃的な言葉を口にした。



「仕方が、ーっないんです!ユーフェリア姉上が僕と結婚すれば、間違いなく絶対に不幸になる。ーー絶対幸運のこのスキルが、そう明確に告げているのです!」





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