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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園編入学日編
31/119

私と寒々しい王家団欒2


 真っ赤な顔であたふたと狼狽える私を不憫に思っのか、王様が私の手を包み込んでいたフレイ君をぺいっと引き離す。


キラッキラの金髪に、私のラベンダー色よりもやや濃い菖蒲あやめ色の力強い瞳。乱雑な言葉遣いの割に文句なしに整った顔立ち、威圧感溢れる程度に鍛え抜かれた堂々たる美丈夫な王様を、フレイ君は忌ま忌ましそうに見返した。



「義父上、何をなさるのです。自分とユーフェリア姉上との、健全で微笑ましい姉弟間のふれあいを横から邪魔をしないでくれませんか?」


「いいや!不思議だなあ!手を握っているだけだというのに俺にはちぃぃっっとも健全には見えん!そもそも義理といえど、世間一般の家族関係でそんなスキンシップは先ずせんわ!フレイ、以前から思ってはいたがお前って案外タラシだよなあ。無自覚でやってるんならたちが悪いぞ!」


「人聞きの悪い事をおっしゃらないでいただきたい。お倒れになった姉上への当然の気遣いを、そこまで非難される謂れはありませんね。どうやら義父上の頭の中では体験上、よほど他人行儀でよそよそしい、それはそれは極寒地の凍てつくような寒々しい家族関係しか思い浮かばないようですね。」


ーーうわっ、ピシリと空気が固まる。

暗に王様の親族を含めた、王族の家族間関係を非難した発言だ。

王様の姉クレメイアは私の母で、妹のミュゼットはフレイ君のお母君だ。

その二人の姉妹共々、それぞれの公爵家当主である夫との仲は最悪。うちのレストワール公爵家夫妻は言うまでもなく別居状態だし、噂によるとフレイ君のところも似たり寄ったりだと聞く。



「俺と姉妹達は別に不仲ではないんだがなぁ......俺だけ母親が違うし、クレア姉もミューゼも、どっちとも愛情表現がクール過ぎて分かりづらいんだよ。まあ、確かにそう仲良しでもないんだがな。」


「え?」


クレア姉にミューゼって、母クレメイアとミュゼット夫人の愛称?

意外だ。王様が自分の姉妹達をそう呼んでいたの?


「ーーフッ!そこまで言うのなら仕方ない!ならばここはいっちょ、寒々しくはない王家団欒をしようではないか!よし、決めたぞ!これから夕食はお互いの都合が付く限り、この家族3人揃って一緒に摂る!では早速、今夜7時に本殿宮に集合だ!」


「「えええっ!??」」


集合って!これから夕食は一緒!って、っ軽く言うね!

私とフレイ君は後ろにそれぞれ対立する派閥があるし、王位継承権だって現在競い合っている複雑な間柄だ。

あっ、でもフレイ君の提案で、王立学園内では“実は2人は恋仲で、フレイ君が私の言いなり”という設定で押し通す事になったわけで....なら夕食を一緒にというこの提案も、何ら不都合もないし案外良いアイデアなのかもしれない。


けれど。ーーふと、疑問を感じた。


そもそも2年前、後継ぎのいないこの王様は私とフレイ君の2人を共に第一位の王位後継者にすると宣言した。

そしてよりどちらが次代の王に相応しいかを見極める為に、期間限定で暫定的に自分の養子とし、私とフレイ君を一緒に王宮に住まわせたのだ。


それは今にしてみると、どう考えてもおかしい。

王家筋に子供が産まれなくなっている呪いの存在をこの王様がご存知であったならば、私とフレイ君を後継者に指名するのは不自然なのだ。

だってどちらが王に選ばれたとしても、必ずまた次の代で後継ぎ問題が発生する。呪いの話が真実であれば、なのだけど.......


黙ったまま俯いて考え込んでいると、その私の様子を見て勘違いしたフレイ君が口を開いた。


「義父上、姉上はお加減が宜しくないのです。一家揃って夕食のご提案は個人的に賛成ですが、明日からでお願いします。」


「いや、リュカ直伝の、フレイの癒しの魔法が効いたようだ。見ればもう随分と顔色もいいぞ? 心配ならばそのリュカに診察させろ。あいつの許可が出れば構わんだろう、な? ユーフェ。」


リュカって、フレイ君付きの侍医のリュカ・アシュリーさんの事だ。

元王宮の御殿医で、アドロス学園長の話では呪いの存在にいち早く気付き、ヒースクリフ王のルーティンパネルカードの秘密も知る人物。

現在はセヴォワ公爵家に仕えていて、今までフレイ君を通して何回かお会いした事もあるし、私の尊敬する医術研究書シリーズの著者さんでもある。


「分かりました。お義父様のご夕食一家団欒のご提案、現状から鑑みるに様々な観点において非常に有意義だと思いますわ。アシュリーさんの診断許可が出れば喜んでお受け致します。」


「...姉上がそうおっしゃるのであれば、自分に否はありません。」


「かあああってぇ!2人共、もうすでに寒々しい!どうか頼むからそこは社交辞令でも『嬉しい!パパと家族みんなで一緒に和気あいあいとご飯食べたい!』とか言ってくれよ!」


「「絶対嫌です!」」


「ピッタリ揃って否定!? いつの間にお前らって、そんな仲良しになってたの!? あれ? 寒いのは俺に対してだけか!?」


「そうですね。ユーフェリア姉上と自分は、普段からよくお茶の時間を一緒に過ごしています。個人的な仲は決して悪くはありません。ねえ、姉上?」


「そ、そうですわね。毎朝のご挨拶も欠かさずしていますし、同じ外殿宮住まいのフレイ様には必然的によくお会いします。なので、交流は多いかと。」


ーーいやいや、それ絶対に必然的じゃねえだろ、と王様が何やら呟くも、ちょうどそのタイミングで馬車が王宮に到着した。

ジトリと何故か咎めるような視線を受けるも、フレイ君は素知らぬ振りで立ち上がった。


「では急ぎリュカを姉上の元へ遣わせます。姉上、どうかご無理をなさらず、その先の適当な部屋でお待ち下さい。」


私を恭しくエスコートして馬車から降ろすと、フレイ君は足早に去って行った。


「ふん、逃げたな。」


「? アシュリーさんを喚ぶ手配に行かれたのでしょう?」


「...ユーフェ、お前はニブ過ぎる。心配だから忠告しておくが、絶対いつか気付かぬうちに全ての逃げ道を断たれているという、そんなどうしようもない事態に陥るぞ?ーーああ、まあ、そんなお節介はいいとして、今のうちにちょっと大事な話をしておきたい。そうだな、直ぐそこの、星時計の間へ行こう。」


ニブいって何が?逃げ道って、暗殺とか襲撃の情報でもあるの?


ーーええと。それより大事な話って...それは多分、あの王家の呪いに関しての話なのだろう。フレイ君のいないうちに話しておきたいという事は、やはり彼も私と同じく呪いに関して知らされていなかった?






*********





 星時計の間というのはその名の通り、この星にあるたくさんの国の時計が展示された部屋だ。貴重な年代物から豪華な細工の装飾目的用のものまで多種多様。けれどその全てが、それぞれの国で実際に使われていたものであるとか。主に他国からの客人を招いた時に、待ち時間を退屈させないように通される貴賓室の一つ。

それぞれの針が指し示す時間はその国の現在時間。地球と同じように時差というものが存在していて、そう考えてみると、この星も球体で時点活動をしている星である事が窺える。


そんな数え切れない数の時計を見上げる私に、王様は苦笑する。



「いつも圧倒されるよな。世界中にはこんなにたくさんの国があって、このエルドラシア王国はその中の一つでしかない。けれど“13もの神の恩恵”、というこれほど纏まった多くの不思議な奇跡が今現在も存在していて、ルーティンパネルカードという明確な形で代々継承されている。そんなのは、恐らくうちのエルドラシア王国だけだろうな。」


「そう...でしょうね。けれど流石に13は多過ぎると思いますわ。初代ヒースクリフ王は、それほど多くの神々に愛されるような素晴らしい人物だったのでしょうか?」


「どうだかな。多過ぎる奇跡の力も、反って時には災厄の火種になる。ヒースクリフ王はその恩恵を、実はかなり迷惑がっていたという諸説もあるぞ。なればこそ、ルーティンパネルカードに封じたのだと。お前が今日、学園でアドロス達に聞かされた呪いに関しても、案外その恩恵が原因なのかもしれない。俺はそうにらんでいる。」


「え? 王家に子が産まれなくなる呪いが、神の恩恵が原因!? 」


何なの、それ? もしかして、だからその原因であるルーティンパネルカードを集める必要があるって事?


「そうそう、その呪いの事で先にこれだけは言っておく。ユーフェ、この呪いが解けない場合、王立学園初等科を卒業と同時にお前はフレイと結婚してもらう事になる。」




ーーーはあああっ!??



ぱっくりと口を開けて驚く私に、王様は更に説明する。



「......お前は頭はいいのにそういう可能性には至らないんだなあ。今まで一度も疑問に思わなかったのか? 現王家に限りなく親しい血統を持ち、王国内でも有力な上級貴族の後継ぎであったお前とフレイには婚約者も婚約者候補もいない。ーーこれはもの凄く異常な事だったんだぞ? 」


「!!、ーーそれは暗に、レストワールもセヴォワも、婚約者選びには慎重になっているからと...お相手の家格次第で、互いの力関係は大きく左右されるでしょうから...!」


「いいや。全て呪いの存在があったからだ。結婚しても絶対に後継ぎができないと予め分かっているのに、だのにいくら政略結婚といえど国王の俺は許可を出せない。他国からの縁談であるなら、それは尚更だな。婚姻後、何年経っても子が産まれないんだ。最悪の場合は契約不履行を突き付けられて離縁、もしも万一呪いの存在が露見すれば、国際問題にまで発展する可能性もあるだろう。」


そういって、王様は大きなため息を付いた。彼自身も、気が進まないといった表情を滲ませていて。


「王家...いや、王国の威信を保つ為に、呪いの存在をつまびらかにする事は絶対にできない。かといって、表向きは健康体で何の問題もないとしているお前達を、いつまでも結婚させないわけにはいかないだろう? 裏ではそれぞれに殺到している縁談を、納得いく理由もなく撥ねつけ続けるのにもいい加減限度がある。ならばお前とフレイを結婚させるしか方法はないんだよ。そしてその次の後継者にはエルディアス・ギュンスターか、その子供を指名させる。」





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