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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
王立学園編入学日編
24/119

私と魔法学科適性試験1


ぽかぽかと陽気な日々が続く中、ついに王立学園編入学の第一日目。

初等科の始業式が行われるとの事で、向かった私の初登校はちょっとした騒ぎになった。何故ならば、学園の正門前に横付けされた厳重警備の王家専用馬車、その扉から姿を現した私にエスコートの手を差し出したのは、王女殿下専属護衛騎士ではなく制服姿の王子殿下、フレイ君だったのだから。



「まあ!フレイ王子殿下とユーフェリア王女殿下がご一緒に登校!?」


「お二人は不仲という噂ではなかったのか!? 国王陛下様のご養子となられて以来、王宮では色々と面倒事が起きていると耳にしていたけれど...? 」


「あら? 私はお二人が仲良く小飛竜に乗って城下街にいらしたという噂を聞きましたわよ? それはもう楽しげで、ピッタリと仲睦まじく寄り添ったご様子であったとか...!」



ーーうわっ。ちょっと前にフレイ君に小飛竜に乗せてもらったの、結構な噂になってたんだ!でもあれは不可抗力。だって小飛竜の背はとても狭くてゴツゴツしてて、馬に相乗りする時よりもピッタリくっ付いていないと危険なんだよ!まあ、嬉し過ぎてはしゃいじゃったのは間違いのない事実だけど。


ざわざわと、学園玄関口へ向かうだけで左右には人垣が出来ていく。盛大に注目を浴びている原因は、私とフレイ君が一緒に歩いているから。

彼の制服は女子の私と同じ藍色のブレザー。ネクタイは私のリボンと同じく紫色で、これは王族のみが許可されたカラーなので、二人お揃いになる。フレイ君の制服姿は初めて見るけど、もう一年間在学しているので着慣れたカンジだ。まあ、美形は何を着ても様になるんだけどね...


「ユーフェリア姉上、手を繋ぎませんか?その方がより効果的かと」


「ん?ーーそうね。はい。」


「「きゃあああっっっ!!」」


言われるがままに手を繋げば周囲から甲高い悲鳴が上がった。言った当人のフレイ君も驚き顔。心なしか顔も赤くなっていく。

...あらら。恋人繋ぎはさすがにマズかった?相変わらずこの世界の一般常識がよく分からない。引き受けてしまったからには上手くやらなきゃと思うけど、これはなかなか前途多難だなあ...。


そもそもこんなお芝居を始めたのは王国内の不要な争い事を避ける為。

オルストフ国王陛下にお子がいない所為でお互い王位継承権第一位であり、今やエルドラシア王国中の貴族を二分すると言われるレストワール公爵家とセヴォワ公爵家。両家を台頭にそれぞれの派閥間で嫌がらせや小競り合いが絶えない状況下、ならばいっその事、その私とフレイ君が恋仲であるフリをしようという提案をしてきた彼。その設定を大々的に全校生徒に印象付けようという彼の思惑によって、現在二人仲良く連れ立っての登校中なのである。


「まあ。まるでお二人は、有名悲恋小説のアベルとマドリーナのようではありませんこと? 許されぬ禁断の恋...ロマンスですわね!」


それ、こっちの世界でのロミオとジュリエット版だよね。同じように最後は勘違いのすれ違いで死別バッドエンドの.....


「いや!純真なユーフェリア様は騙されておいでなのだ!ああしてフレイ殿下に籠絡され言いなりになって王位を譲らされ、終いには王宮から追い出される、それがセヴォワ側の狙いなのだ!」


ん? その結末案外いいかも。そのまま田舎でのんびりと隠居生活!


「ハッ!何を検討違いな事を!フレイ殿下の方がむしろ惑わされておいでではないか!見よ!あの恋にとち狂った正気ならざるお顔を!」


こ、恋にとち狂った...? ソロリと横のフレイの顔を伺えば、彼は周囲が息を呑むほど蕩ける笑みを私に向けていた。


「!!ーー(きゃあああっっ)」

「おおお。ま、眩しい...!」

「な、何故俺は!男相手にこんなにドキドキするんだあああ!」


あれ? 卒倒者が出た......

確かに恋にとち狂った顔かも。キラキラエフェクトが発生している。何だか私までドキドキしてきたし。フレイ君はラブラブ演技が上手なんだねえ。


「...フレイ殿下、念願叶った幸せなお気持ちは理解できますが、周囲に感情がだだ漏れです...」


「はあ!? 二人一緒に小飛竜って、ソレ聞いてないけど! 結婚前の男女がそんな事していいと思ってんの!? ユーフェリア殿下も軽率でしょ!ホントにあの時以上に襲われたって知らないからね!」


偶然居合わせたフレイ君の取り巻きの真面目アルバ君と毒舌エルディちゃんもすっかり騙されている。彼らにもこのお芝居の事は内緒なのだ。

親しい彼らも騙し切るなんて、本当にフレイ君は演技達者だなぁ...。

感心して見つめる私に、フレイ君は更に笑みを深めると。


「ユーフェリア姉上。これからもご都合のつく限り、こうして二人ご一緒に登校致しましょう。...僕は少しでも多く、貴女の傍にいたいのです。」


「ほいぃっ!?」


す、凄い破壊力の恋する演技だ!思わず返事がおかしくなっちゃったよ。

ーーええっと!打ち合わせした時の設定では確か、フレイ君が私のいいなりになっているカンジだったっけね。私のが一つ歳上だし、その方がバランスがいいって事で。


「コホン!ーーまあ、気が向いたら、そうして差し上げますわ!」


「はい。本当に今、天にも昇る気持ちです。」


そっけない返事にも幸せそうな表情を崩さないフレイ君。うーん、目がチカチカするわ。いやこれ、本当に演技なの?


ーーけれどそのすぐ後、続いた言葉を私は聞き逃がしてしまう。

だってそれは、とても小さな呟きだったのだから。



「......卒業までが、この僕に許された自由な時間。だからせめて。その間だけ...共に。」






*********





始業式は学園の大ホールで初等科の全生徒を召集して行われた。

各学科の教授陣の紹介と挨拶、学園の注意事項や主な一年間の学園行事説明。どうやらすぐ一ヶ月後に郊外オリエンテーションがあるらしい。

学科によって内容も行き先も違っていて、私の入った魔法科はなんと!近場の森へ実践演習を兼ねたハイキングだって!?ーーそれは王女の私も参加しても大丈夫なのかな? 昼食はもしかすると、手作りお弁当とか持参で!?

わくわくしながら聞いていたら、前の席の女の子が急に後ろを振り返った。


「........っ!」


「あの、どうかなさいまして?」


美味しそうなさくらんぼ色のふわふわ髪の美少女だ。

瞳も淡い桜色で、まさにアニメやゲームヒロインそのものな容姿。こう、いかにも守って上げたくなるような可憐なご令嬢。

ボリューミーな黒髪とやや目尻の上がったラベンダー色の瞳、近寄り難いと思われる私とは大違い。


「ーーあ!も、申し訳ありません!王女殿下に対して無作法を!あの!わ、わざとではないんです!」


物凄い怯えられている私!

まあ、後ろに王女様がいたら私もビクつくかな。でもちょっと悪目立ちしてるから、そんなに大きな声を出さないでほしい。


「貴女、お静かに。今は式の最中ですわ。」


「...あ、はいっ。本当に、ごめんなさい!(...初っ端から悪役王女とガチで遭遇とか!リアルだと超こわい~~~っ)」


「?」


彼女が変な事を言ったような気がしたけど、それよりも今は始業式!


ーーあれ? けれど、前方の生徒が急にガヤガヤと騒ぎ出す。

何事かと前に視線を向ければ、式台の上に大きな転位魔法陣が出現していて。なんとそこからアドロス学園長がひょっこり現れた!

うわあ!転位魔法陣って確か、使い手がこの世界で数える程しか存在しないという超レアな魔法だよね!うーん!さすがは学園長!

入学資料で拝見していたけど、学園長は見事なキューティクルのグレーアッシュヘアーを腰まで流した法衣姿の高齢の方で、実はエルドラシア王国の高位神官でもある。銅金色の瞳は威厳たっぷりで森の王者の大鷹のように力強い。けれど、その性格は面白いくらいに真逆だった。


「ふぉっほっほーー!新入生諸君、入学おめでとう!そして在校生は進級おめでとう!そなた達は全員貴族なれど、この学園内においては皆平等にわしの子じゃい!悪い子は容赦なく叱り付けるし、一生懸命頑張る子は応援するぞぅ!だから悔いなく精一杯好きなようにこの学園で過ごすがよい!勿論、犯罪にならん程度にな!」


「学園長ーーーっ!毎度の事ですが、その挨拶はあまりにも軽薄過ぎます!多少は持ってない威厳を張り付けて下さい!一応は伝統ある王立学園なんですから!そのうち国王陛下に怒られますよ!」


「うっさいわ!あんな小僧にわしが怒られるわけないわーー!そもそもあいつは学園一の悪戯っ子じゃったしな!」


「学園長ぉぉぉ!それは言わぬ約束でしょうが!!」


..............


お茶目なお爺ちゃ...いや、とてもユニークな学園長だった。

というか学園一の悪戯っ子って、あの王様は一体この学園で何をやらかしたの?





*******





アドロス学園長の登場で賑やかとなった始業式。でも何故か、魔法学科の生徒は全員そのまま大ホールに残るように指示される。


何かあるのかな? けれどこうして大ホールを見渡してみると、魔法学科は本当に生徒数が少ない。全学年合わせても百人もいないみたい。

基本的にこのエルドラシア王国は騎士の国と言われていて、科学文明もそこそこ発達している為か魔法はそれ程人気がない。魔法師団や魔法研究所などの応募は一般市民が中心となっていて、貴族子息に魔法はあまり必要のないものとされている。貴族の次男坊や三男坊でも、将来は長男の下で領地運営に協力するのが通例なのだ。女子などに至っては、卒業後の進路は護衛もできる高位貴族令嬢の侍女になるくらい。だから二年生の女子は、私を入れてもたったの3人。

私はこの大ホールの中からとある人物を探していた。隣国トライアルトからの留学生で、長年に渡る私の文通友達のシリーだ。


「姉上、どなたかお探しですか?」


キョロキョロと挙動不審な私にフレイ君が声を掛けてきた。


「ええ。シリーという名の留学生をご存知? 茶色の髪色の、快活で知的なカンジのご令嬢なのだけど。」


「シリーという名のご令嬢ですか? 留学生ならば確か、今年はシルヴェスト王子殿下だけの筈です。隣国トライアルト王国の第七王子ですね。」


「え!?」


あれ? おかしいな。この王立学園の魔法学科に留学するって、そうシリーからの手紙に書いてあったのに、何かの間違いだった?

首を傾げていると、目の前に紫色のネクタイがあった。

フレイ君は横にいるから、ではこれは......


「ユーフェ!会いたかった!」


「んぎゃっ!??」


私は突然現れたに、ギュッと抱き締められた。




やっと正規のヒロインとフレイ君のライバル登場。


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