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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
幼少期・王宮編
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僕と叶わぬ夢の日々4

何回書き直したやら...



一瞬、自分の耳を疑った。


それはあまりにも予想外の来訪者で、けれどそのお姿が遠目で視界に入り、聞き違いでも偽者でもないと確信する。

ジェラルドは動揺していてその足音に気付いていない。


「事前に何の先触れも通達も取り持つ紹介者もなくして、まさか自国の王女殿下が突然参られただと!ななな、何という異例の事態!ーっぬわあ!このキットソン侯爵家始まって以来の大事件であるぞ!このジェラルド、一体どうやってもてなせばよいのやら!」


「いいえ。これは非公式の訪問ですので、もてなしなど一切不要です。正式な手続きもなく突然の訪問、誠に不躾で申し訳なく思います。ーー初めまして。私はエルドラシア王国の王女、ユーフェリアですわ。」


本当に突然のおでましだった。

キットソン侯爵家の執事バトラーが来訪を告げてすぐに。騎士を一人だけ付き従えた姉上が、このアルバートの部屋の前までやって来たのだ。


本日の姉上は襟と袖口に飾り刺繍のみという濃紺色のワンピース姿。

上に春用の薄手のケープを羽織っておられるが、それもかなり控えめなデザイン。自粛したような質素なこのご衣装からして、アルバートが療養中という事を知っておられる?


「ユーフェリア姉上、昨日の夕刻ぶりでしょうか。親愛なる姉上に思いがけずとこうしてお会いできて、望外の喜びです...!」


「あら?本当にユーフェ姫だわ。この間のお茶会で貴女のお茶をぶち撒けて以来ねぇ。その後はご健勝のようで、ええ。それはもう、何よりですこと。 」


「ぬおっ!間近で拝見すると鈴蘭のように凛と美しい!よ、よくぞキットソン侯爵邸にお越し下さりました!私は当侯爵家の長男ジェラルドでありまして!ととと取り敢えず、ああとっ!殿下を心よりお慕い申し上げまするっ!」


「ちょっと!いきなり告白してどうすんの!?アルバのお兄さん、一度深呼吸して落ち着いて。リラクゼーション系の魔法をかけてあげよっか? 副作用で180°人格が変わっちゃうんだけど。」



ーーバアァンッ!!!


「っうるさい!!ジェラルド兄上、病人の部屋の前で大騒ぎしないで下さい!ズキズキと傷に響くっ、.......え。もしやそこの女性は、王女殿下?」


「ええ。あの、ご機嫌よう...ではありませんわね。」


「フ、フレイ殿下!とうとうこんな精巧な王女殿下の幻影魔法まで...!これはもはや立派な肖像権侵害!もういかようにも言い逃れのできない犯罪行為ですよ!」



ーーもはやカオスだ。



色々とツッコミたい部分がとても多かった気がするのだが。


「取り敢えず姉上、何を置いてもこれだけは先ずお答え頂きたい。」


「え。は、はい?」


「本日姉上がお連れのそこの騎士殿、僕は全く見覚えがありません!あの!もしや姉上はそういった男性がお好みなのでしょうか!?」


「「「「え!? 聞くの、そこぉぉぉ!??」」」」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「ーー傷が痛むとの事ですので、手早く私の要件を申し上げます。アルバート様はどうぞ横におなりに。気兼ねなく、楽な姿勢をなさって下さい。」


「王女殿下にお気遣い頂き、誠に痛み入ります。けれど、こちらのエルディに痛み止めの魔法をかけてもらいましたので、もう大丈夫です。その、フレイ殿下の護衛である以外は大した接点もない自分に面会とは、一体どういうご要件なのでしょうか?」



ーー仕切り直しの後。

アルバートの部屋へとそのまま招かれたユーフェリア姉上。

侍女により身だしなみを軽く整えられたアルバートは、ベッドで上半身を起こした姿勢で姉上に先を促した。

因みにジェラルドは鬱陶しいので遠慮してもらっている。


「では早速。ーーローラント、あれを。」


ローラントとは姉上の後ろに控えている新任の専属護衛騎士だ。

長身で逞しく寡黙な美形だという点が気になるが...姉上の指示を受けた彼は前へと進み出て、サイドチェアーの上に小袋を置く。

ジャラリと重い音を立てたその中身は、恐らく金貨。


「こちらの金子は、いずれも王道近郊コルトワナ地方を治める各領主、ロゼルバイジャン侯爵家、ノベルスター侯爵家、ボルドー伯爵家、その三家のご子息様方より、キットソン侯爵家アルバート様へとご用意させた賠償金です。今回の怪我の治療費、並びにお亡くなりになったお馬への弁償金と慰謝料。これをもって貴方にお詫び申し上げたいと、そのように言付かりました。」


「ノベルスター、って!そいつ、矢の...!」

「賠償金!、ーーでは、王女殿下がただ今列挙されたその者達が、自分を害した襲撃犯という事でしょうか?...こそこそ隠れて待ち伏せし、一方的に矢を浴びせて逃げ去ったと。そんな暴漢まがいの犯行を貴族子弟の彼らが?」


アルバートが襲撃に遭ったのは二日前。

姉上はもうその犯人をご存知で、彼らに賠償金まで用意させていた。


ーーなるほど。


姉上がわざわざこちら、被害者であるアルバートの屋敷まで出向いた理由が分かった。彼女の本当の狙いも。

そして弾かれるようノベルスターの名に強く反応したエルディ。

追跡探索魔法で割り出した矢の所有者の、つまり襲撃犯の現在所在地が、まさにそのノベルスター侯爵邸であったのだ。そしてロゼルバイジャンにボルドーといえば。

その先は、キャメリーナ嬢が説明してくれる。


「ユーフェ姫が口にしたそのご子息の方々は、いずれもレストワール公爵家と政治面、公的事業や領地経営などにおいてもとても密接な繋がりがあるお家。要は私の実家であるファフテマ侯爵家同様に、レストワール派閥の中核的存在である上位貴族家ですわね。では、彼らがこのように短絡的で愚かな行為に及んだ目的は...もはや容易に想像がつくというもの。」


その彼女の確信的な見解に、けれど姉上は不敵にお笑いになった。

伏せた睫毛に意地悪く上がった口角。僕が初めて目にした彼女のそれは、まるでお芝居の悪役女優のように高慢ちきな表情で...!


ーー少し、背筋がゾクッとした。


「ーーあら? 先ほどから襲撃犯だとか暴漢まがいだとか。何を勘違いされたか存じませんけれど、少々お言葉が過ぎるのではないかしら? 」


突然、他の誰それかになったように高らかに言い放つと、ケープの内側から取り出した扇子を口元で広げた。

ヴェルサス鳥の見るも鮮やかな紫羽でしつらえられた羽根扇子。この場に圧倒的にそぐわない煌びやかなそれは、不思議と全員の目を惹き付け、問答無用で押し黙らせた。


ーーおかしい。次は胸がドキドキしてきた。


「確かにそちらのアルバート・キットソン様に、彼らが矢を射てしまった事は紛れもない事実です。その金子も彼らの謝罪の証。けれど今回のこれはそもそも、不運な事故だったのですよ? その日、たまたま、仲の良い彼らは連れ立って趣味の狩りを楽しまれていた最中で。そこへ運悪くアルバート様がお通りになり、彼が騎乗するお馬にその流れ矢の一つが偶然当たってしまった。残念ながら、そういった不運な事故だったのですわ?」


「な!そんな取って付けたような嘘!よく言えるね!」

「遊びの狩りの真似事で、たまたまの不運な事故で、それで俺の大事な相棒、キャレルが殺されたと...!?」


信じられない言い分にエルディとアルバートが激昂した。

アルバートに至っては、一人称が“自分”から“俺“になっている。


それでも姉上はなお、勝ち誇ったように言葉を続けた。


「仮にも一国の王女である私の言葉が嘘とは、それは聞き捨てなりませんわね?ーーでは嘘と決め付ける、その証拠はおありで?待ち伏せして貴方を襲撃し、逃げ去ったというのならば。それを目撃された証人はどなたかいらっしゃるのかしら?」


何か言いたげに身じろいだ専属護衛騎士を目線で制し、広げていた羽根扇子をパチリと閉じた姉上。


「お一つ、皆様にご忠告差し上げましょう。確固たる証拠も信用できる証人もなしに不用意な発言をなされば、かえって困った事になるのはそち、」


「ユーフェリア姉上!!」



ーーもうこれ以上、我慢ができなかった。






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