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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
幼少期・王宮編
12/119

僕とレストワール公爵令嬢2


王城の迎賓殿でユーフェリア嬢と出会ってから早くも3年後。

あわば王国を大混乱に陥れる可能性のあったその騒動は、セヴォワ公爵家当主である僕の父エフレム・セヴォワの相談から始まった。



「自領警邏隊の各駐屯地で軍用小飛竜が一斉に熱病に罹っているのですか?」


「そ、そうなのだ。我がセヴォワ公爵領内の複数の駐屯地から次々と報告書が上がってきている。領主補佐のマルケルが調査中だが、どうやら警邏隊が所有する小飛竜二百匹余りのうち、およそ半数以上が発症。飛翔も困難なほどの高熱に咳と鼻水に食欲不信、一匹が感染すれば厩舎中の小飛竜が次々と感染してしまうのだと。その、人への感染は今のところ報告例がないようなのだが、これはどう対処すべきが最善か。ーーな、なあ、フレイ。悪いが、お前の“あの力”を借りれないだろうか?」


「........承知致しました。」


父エフレムは公爵という身分でありながら慎ましく勤勉な人物だ。

ーーだが、悪くいえば優柔不断でおどおどと煮え切らず、領主としての的確な判断力に乏しい。わがまま放題で浪費家のあの母上をきっぱりと窘める事ができないのだから、その頼りなさは推して知るべしだろう。

けれどこうやって自領で発生した問題を面倒と捨て置く事なく、有用性の高いスキル持ちの息子を執務室へ呼び寄せて相談を持ち掛けた、その点においては幾分か評価できる。多少は領主としての威厳に目覚めたのだろうか?


何を子が親に向かって生意気な、と思われるのだろうが仕方ない。実はこの父エフレムは、極度の対人恐怖症なのだ。


「ーーおっしゃる通り。ご当主のエフレム様におかれましては、フレイ様がこの公爵家にお生まれになった事自体が奇跡と豪語して然るべきの、異常な対人接触嫌いですな。 奥方のミュゼット様に対しましても、 婚姻当初は目も当てられぬ勢いの避けっぷり逃げっぷりでして。当時は屋敷中の者が不眠不休でご心配申し上げたものでしたぞ。エフレム様は男女の関係なく、基本的に他人に触れるのは駄目。会話も3歩離れた距離で。椅子やソファーも拭き清めてからでないと決してお座わりになれずと!いやはや...!」


「リュカ、御殿医であったお前でも父上を治療できなかったのか? もしや、精神的な病については専門外と?」


「あれは病などではなく、タチの悪い性癖...オホンッ!いえ、フレイ様。それでは早速、小飛竜の熱病問題について今後の最善策を調べましょうぞ。」


「? ーーああ、まあ、そうだな... 」


何だ? 今のリュカのはぐらかすような不自然な話の切り替えは?


ーーまあ、いい。

今は熱病についてが優先事項だ。先ずはリュカと協力し、手元の羊毛紙に思い付く限りの対処案を列挙して書き並べていく。

そしてその紙をテーブルの上に置き、直感に従って選ぶだけという至って容易な“絶対幸運”のこのスキル。書き並べた中に正解案が存在していなければ、何となく選ぶ気がおきないといった具合で。つまり、正否が明確になっている選択肢に対しては100%有用だが、今回のように対処案となる選択肢候補からして不明確である場合には、どうにも答えの分からない時もある。

だが空を飛べて知能も高い小飛竜は、軍馬同様にセヴォワ公爵領、引いてはエルドラシア王国の大事な防衛力の要。広範囲に渡る巡回は勿論、上空からいち早く敵軍の侵入を見付ける事も可能。また、迅速な物資輸送にも欠かす事のできない存在であり、魔法以外では最も速い移動手段でもある。もしもこのまま災害レベルにまで拡大感染する病なら、気は進まないけれど病を発症した個体全ての殺処分も検討しなければ.........




隔離  治療で完治可能 人へ感染はしない



この小飛竜の熱病は人へは移らない。健康な個体と隔離して、このまま治療を施せばどうやら病は収束するらしい。


“絶対幸運”のスキルによって導き出した答えに危機的要素は感じらない。完治可能と出たし、感染力が高いだけの一過性の病のようだ。

早速この結果を父のエフレムへと報告し、領主命令にて熱病に罹った小飛竜の徹底した隔離処置と適切な治療を施すよう、領地内の各駐屯地へ緊急にて通達させる。リュカも集団感染病には医者として興味があるらしく、人には感染しないという事なので、1番近くにある駐屯地へ自ら治療に赴きたいと希望してきた。

しかし......


「フレイ様?...如何なされましたか?」


「.....いや、何でもない。リュカ、くれぐれも気をつけて。」


絶対幸運のスキルは神からの贈り物。

間違っている筈はない。でも、どうしてだか...こう、とても嫌な予感がする...。

何か重要な事を見落としてしまっている.....?



ふと、僕の頭にユーフェリア嬢の顔が思い浮かぶ。


栄養豊富で大量生産可能な新種の穀物“フェリア”を作り出し、レストワール領で独占生産しない事で王国側から代わりに関税自主権を認めさせた、あの鮮やかな政治取引手腕。ーー昨年ようやくと、オルストフ国王陛下の手引きで公式に顔合わせが叶った彼女だが、あの時とは髪と瞳の色の違う僕の事に全く気付きもしなかった。いや、単に興味のない僕の事など覚えていなかっただけなのかもしれない...。

けれどその時、国王陛下相手に王国の将来の展望についてスラスラと饒舌に語った聡明な彼女(あれはでも多分。こうなると宜しいですわねー、くらいの軽い閃きだったような...)。

そのレストワールの“高貴なる知の姫君”ならば、こんな時は一体どう対処するのだろうか......?





◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「な!ーー今度は警邏隊の軍馬に熱病が大流行している!? しかもセヴォワ領内だけでなく、エルドラシア王国内の複数の警邏隊駐屯地で発症したというのか!? 」



隔離対策と懸命な治療が功を奏し、小飛竜の熱病が概ね収束した頃。ーー次はとんでもない知らせが飛び込んできた。


「ええ、左様であります。このセヴォワ公爵領でのみ発生していた熱病騒動はほぼ沈静化し、小飛竜達も大空を飛べるまで回復したものの、今月に入って今度は警邏隊が所有する軍馬が同様の熱病を発症し始めたのでございます。そしてこの軍馬の熱病はエルドラシア王国各地で異常な早さで拡大感染しておりまして。しかも小飛竜の時の症状よりも明らかに重度。この私、リュカめが赴いた駐屯地では、すでに数頭の死亡を確認致しました。」


「人には感染しないが、他の動物には感染する病だったという事か!けれど習性上、軍馬は小飛竜に対して酷く怯える。それら互いの厩舎はどの駐屯地であっても十分に離して設置されているだろうし、病の小飛竜らは隔離していた筈なのに何故!?」



エルドラシア王国の各警邏隊駐屯地で軍馬の熱病が蔓延し始めた。

ーーこれは一体、どういう事なのだろう?

セヴォワ公爵領で発生した小飛竜の熱病が、エルドラシア王国中に広まってしまったというにしても。他領はどうやら軍馬だけで、小飛竜はこの熱病に侵されてはいないらしい。ならば感染源は小飛竜ではない可能性もある。やはり人への感染報告はなく、警邏隊駐屯地の動物だけ、というのも何か理由が.....?


「どうやら小飛竜は生命力が高いので無事であっただけ。この熱病は他の種族が発症すれば恐ろしく危険な感染病のようですぞ。一刻も早く手を尽くさねば、このエルドラシア王国中に混乱を招き兼ねません。」


「........」


完全に読みを誤っていた。

“絶対幸運のスキル”、そのスキルに僕は頼り切ってしまっていたのだ。もっとあらゆる可能性に目を向けて、熱病の発生原因自体についてもっと深く調査すべきだった。

今からでも様々な専門職の者らを呼び集めて調査団を立ち上げ、熱病の根絶に全力で取り掛からなければ...!


ーーそう猛省した時。

父の補佐官マルケルより思いがけない知らせを耳にする。



「レストワール公爵家の者から、セヴォワ領の警邏隊駐屯地を訪問したいとの書状が送られてきました。軍馬の熱病対策と治療方法をご相談したい、との事なのですが。ご当主様はフレイ様のご判断に任せるとおっしゃられています...如何なさいましょう?」


レストワール公爵家が...!?

セヴォワとレストワール公爵家は表立って対立している。だから父エフレムはこの件を僕に一任したのだろう。対立の筆頭にあるあの母上に、最近になって僕が従わない姿勢を取り始めたから。国王陛下にお子がいない現在、僕の王位継承順位は高い。このセヴォワで、あの母上に逆らえるのは身分からしても僕だけなのだから。


ーー勿論、すぐにレストワール公爵家に訪問許可の返事を送り、1番熱病の軽度な警邏隊駐屯地を非公式な会見地に指定。調査団の立ち上げは到底間に合わないが、代わりに侍医のリュカを同行させる事にする。彼は小飛竜と軍馬、両方の熱病を実際に現場に足を運んで診ているのだ。レストワール側と実のある話し合いが可能だろう。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「フレイ様。しっかりとこの手綱を握っていて下さいね!小飛竜は突然大きく揺れ動く事もあるんですよ。でも万一、背からツルッと落下なされても大丈夫!この俺、ガドゥラケルがきっと王子様のようにお助け致しまーっす!」


風避けの兜を被った金色の髪の警邏隊員と小飛竜に同乗した。

初めて乗った小飛竜は熱病にも罹らなかった強靭な個体で群れのボス的な存在。飛翔も安定していてさほど恐さは感じないけれど...。だが、防御力SSS級の魔法コートですっぽり全身包んで頭までフードを被せ、警邏隊員が覆いかぶさるように乗り込むのは、どう考えても過保護のような......


「フレイ様には過保護で当たり前ですよ!そのお綺麗な顔にもし鎌風かまかぜで傷でも付いたら!ああっ、この俺はどう責任を取ってよいやら!ーーあ、俺は女好きなんで、フレイ様を嫁には貰えませんからね!」


「...........」


ガドゥラケル、といったか。

小飛竜に乗れたのは純粋に嬉しかったが、やはりリュカと一緒に転位魔法陣を使えば良かったかもしれない...。というか、こんな胡散臭い奴が本当にうちの、セヴォワの警邏隊員なのだろうか?


ーーふと疑念に駆られ“絶対幸運”のスキルをこっそり発動させるが、頭の中に霧がかかったようでいつものような感覚が発揮できない。

思わず小飛竜の背の上で距離を取った僕に、ニコニコと笑うそいつはこう言った。


「ーーああ、そうそう!これは俺の仕入れた情報ですが、レストワール公爵家からは“高貴なる知の姫君”がご内密にいらっしゃるそうですよ!ねっ、幸運の王子様。貴方様からしたら、頭の良すぎるお姫様ってどう思われますかぁ?」






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