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IQが高い転生お姫様は穏便に隠居したい  作者: 星船
正規ヒロイン編
117/119

ボクが世界最強になったワケ5



 あれから、あっという間に10年。

 光竜ヒースクリフことひいちゃん、彼の超ハードでスパルタな鍛練プログラムで、気付けばボクは同族の中でも上位ランクの強さを誇る神竜に成長していた。

 そしてコントロール不能で時にだだ漏れだったらしいボクの厄介な“魅了”の神力も、──



「ああら。強くなって多少はご自分の神力を制御できるようになったようですわね。無作法で粗野なところもマシになっていますし、まあ、ちょっとは見直して差し上げますわ。そ、そのぽややんとしたおマヌケ顔はこれっぽっちも変わりませんけど!」

「え。まさかこのボクがっ!リゼラちゃんに見直される日が来ちゃうなんてっっ!」


 相変わらず夢の中でたまーに出会うリゼラちゃん。

 どうにも見苦しいからと、最低限の立ち振る舞いや礼儀作法、おまけに上手な人付き合いのコツまでも、日々の鍛練の合間にお節介焼きのひいちゃんにしっかり指導されていた。

 知人に出会ったらきちんと目を見て挨拶をして、相手が話してる間はしっかりと相づちを打って最後までよおーく内容を聞く。

 たったこれだけの事で、同性の神竜達のボクへの反応は随分と改善していった。

 そしてついに今日!会うたびにいつも怒らていたリゼラちゃんから、ほんのちょっとだけ好意的(!?)なお言葉が…っ!!


「そ、そこまで感激するほどの事!?」

「逆に聞くけど!今感激しなくて一体いつするの!?」

「そ、そう、なの、かしら?─ああ、けれどこれだけは言っておきます!私が貴女を嫌っていたのは、決してその妖竜の“魅了”だとか、同性をも釘付けにするポンキュッポンなバディが妬ましいとかではありませんわ。出会った当初の、あの壊滅的な気遣いのなさと無神経さが大ッ嫌いでしたのよ!」

「ん?─大嫌い、だった?え、じゃあ今は違うの??」

「ま、まあ…もう、“大”が付くほど嫌い、ではありませんわね。“ダーリン大好き!”とずっと変わらず言い続ける一途さはとっても好ましく思いますし、どうせ嫌でもこうして会ってしまう不思議な縁があるようですもの。─っならばここはいっそ妥協してっ!こ、恋バナするお友達にくらいはっ、ええ!なって差し上げますわ!」

「!!、あ、ありがとう!ボク嬉しい!リゼラちゃーーん!」

「ちょっ、やめっ、─むぎゃっ!!」




*********




「へえ。あのリゼラと友達に?それは凄い。人付き合いの得意なこの俺でさえ、彼女には永遠の他人宣言されているんだ」

「ひいちゃん、リゼラちゃんと知り合いだったの?てか、一体何やらかしたの?」

「フッ、さあて?因みに彼女と対極となるルゼロとも知り合いだ。リゼラは過去を司り、ルゼロは未来を司る神竜。俺は時々暇つぶしを兼ねてどちらへも足を伸ばしている」


 へー。ひいちゃんって、神竜全部と知り合いなんだろうか?

 友人をたぶらかす悪女を排除しようと、出会い頭にボクにケンカを吹っかけてきた事もあった彼だけど、今ではこーんなに砕けた口調で話す仲になっていた。

 て、あれ?ボクって、ひいちゃんともお友達なの?


「─ん?待てよ。もしかして…ルゼロは、あの少々お馬鹿でやんちゃな小僧は君に良からぬ事をしたんじゃないのか?俺の友人にふざけた真似をするなと、今度会ったらきつーいお灸を据えておかなくては…」


 知らない間にしっかりお友達認定されてた……ッ!


「それに最近では火竜マギナロスがしつこくストーカーしているようだし、風竜ふうりゅうヴァルザスと惶竜こうりゅうガルティアも定期的に君に勝負を挑んで来るようになったとか。ああ、もっとビシバシ鍛えて強くしておかないと、俺は不安で不安でどうにも仕方ない……」

「え?確かにクソバカの火竜さんはアレだけど、風竜は単に女の子好きのナンパ竜でからかってくるだけだし、プライドの高い惶竜は強くなってきたボクが目ざわりなんだと思うけど?」

「ニブいッ!そして何度言っても毎回危機感がない!そんなんだから俺は心底不安……って、何故ここで満面の笑みなんだ……?」

「や。エヘヘー。何でもないよー」


 ああ、なんかホント信じらんない。

 ボクにお友達なんて一生できないかもと、諦めきっていたあの頃が嘘みたいだ。


 改めて話してみれば気の優しいおじちゃんだった森羅竜ラッセル・テリオスさん、そしてその契約獣で鳳凰イシャンさんの二人とは今ではすっかり月一のお茶飲み友達に。

 緑樹竜のリーちゃんは、大好物の果物を持って行けばボクのお喋りしてくれるようになったし、たまーに珍しい民芸品をお返しにくれたりするんだ。

 

 趣味が合わないと言っていた紡竜のアーシェさんは「ちょっと!超絶イケメン青年とショタ美少年と三角関係だなんて!まあまあまあっ!なんてベタで美味し過ぎる王道展開!あ、いえ、待って!実は三角関係と見せかけた隠れBL!?い、いやああああッ!!」とか何とか一人で突然絶叫したりして、気付けば向こうから頻繁に近況を聞きにボクのところへやって来るようになっていた。

 アーシェさんの言ってる事の半分も理解できないんだけど、キラッキラした目でまくし立てる彼女の顔を見てるだけで、なんだかボクはとっても楽しいし、すっごくうれしい気分になるんだ。


 なんて事をつらつら思い返していると、しっかり顔に出ていたのか吹き出すように笑われる。


「ぷ、ははっ!そんなに口元が緩んでいてはせっかくの麗しの美女が台なしだ。─や、まあ、それも悪くはないけれど」

「へへへー、だってボク、今すっごく幸せなんだもん!それもこれも、ぜーんぶダーリンのおかげだね!誰一人としてまともに相手にしてくれなかったボクに、唯一彼だけが普通に喋りかけてくれて、そして一番最初にお友達になってくれた。うん!ボク、やっぱダーリンが世界で一番だぁーーい好きッ!」


 直接本人にもそう言い続けてかれこれ10年以上。

 魔法の創作と研究が趣味で性格もマイペース。更には神竜一シャイなダーリンは、ボクがどんなにぐいぐいアタックしても全然振り向いてはくれない。

 うん、でもいいんだ!少なくとも本気で嫌がられてはいないし、暇な時にちょぉーーっと構ってくれるだけで、それでだけでボクはとっても大満足!

 そう思うボクだけど、ひいちゃんは何故か眉をひそめていて……


「それは…俺が思うに、“すり込み”、というものではないのだろうか?仮にもしも、アゼルが最初に出来た友人でなければ、そうではなかったのならば、君はそこまで彼に執着していなかったのでは……?」


 はいぃ?急に何言い出すんだい、ひいちゃん??

 彼にしては珍しく歯切れ悪くて自信なさげだし?


「はーちゃん……俺はね、君のようにそれほど他の誰かに強く執着した事が一度もない。光竜としてこの世に生を受け、既に二百年以上の長い時を生きていても、所謂世間で聞くところの“恋”だの“愛”だの、というものがサッパリ理解できないんだ。失礼ながら言わせてもらうと、そんなものはただ寂しさや孤独を穴埋めする為の自己満足、もしくは繁殖欲求からくる思い込み、などではないかとさえ思っている」

「はあああ!?恋や愛が、サッパリ理解できないいぃぃ!?」


 お、驚いた!ひいちゃんがこんな恋愛オンチだったとは!

 そういえばこの10年間、その手の突っ込んだ話を一度もした事がなかったかも!?

 

「ひいちゃんって、一見何もかもが完璧に見えるけど、けっこう抜けてるし頭でっかちのアンポンタンだよね!」

「ア、アンポンタン……。そこまで言う?」


 いやだってボク、初対面時に問答無用で攻撃されたし。

 うーん、仕方ない。ここはいっちょボクが一肌脱ぎますか!


「よぉーし、ひいちゃん!きょーしゅくながらこのボクが!君に“恋”について教えて上げちゃいましょう!ズバリ!君がこだわっているきっかけとか理由とか出会い方とか、そんなものは実を言うとまったくもってどうでも良かったりします!たった一目で強く惹かれる事もあれば、最初はそうでもなくても相手の事を知るたびに段々と好きになっちゃう事もある。好きになれば好き、そういうものなのです!そしてね、“好き”よりもっと上の“大好き!”になっちゃえば、相手の為に例えどんな事でも、何でもして上げたくなっちゃいます!うん!むしろ大喜びでね!」

「……どんな、事でも?」

「そう。どんな事でもへっちゃら!」

「損だとか、煩わしいだとかは思わないのか?俺がこうして君の鍛練に付き合っているのも、正直に言えばこちらに利益があっての事で。悪いが無償でも偽善でもなかったりする」


 あー、うん。ボクの“魅了”が暴走したらマズいもんね。

 それでもひいちゃんって、きっとボクにとって一番リスクのない最善な方法を選んでくれてる気がするんだよね……

 そんなひいちゃんだからこそ、ボクは彼に“恋”を知って欲しい、自分以外の他の誰かを心から深く“愛”せるようになって欲しい。

 ──だってそれが絶対に、彼の幸せな未来に繋がる筈だから。

 

「あのね、ひいちゃんはまだ運命の相手に出会えてないだけだよ。もしもいつかそんな人に出会えたら、その時はボクが今言った事がよおーっく分かると思う。だって全然今までと考え方も感じ方も変わるんだもん。ガラリと取り巻く世界が一変するの。好きな人と一緒にいるとふわふわと幸せな気分になる、けれどね、たまーにちょっと苦しくもあるかな。うん、それが所謂世間で聞くところの“恋”、というものなのです!」

「俺にも、そんな運命の相手に出会える日が来る、と?」

「うん、きっと!そうだねー、ひいちゃんはとっても優しくてお節介焼きで友情に厚い人だから、んー、もしかするとすっっっごく相手を溺愛しちゃうかもね!あははー!」

「…………」


 真剣にボクの話に聞き入っているひいちゃん。

 けれどしばらく黙りこくった後、やがて彼はその場で膝を突いた。


 ─あれ?ちょっと何してんの、ひいちゃーーん!?


「参った。完敗だ。負けを認めよう。─恋について語る君は、俺にはとてつもなく強く美しく、そして目を見張るほど眩しく光り輝いて見える。君は俺よりも優れた神竜だと、今ここに宣言する」

「え?ボク、勝負で一度もひいちゃんに勝てた事ないけど??」

「心の在り方がはるかに強い。俺には到底敵いそうにない」

「ん?そ、そう、なの??」

「ああ、そうだ。おめでとう。これで今この時より、名実ともに妖竜ハーシェンヌ、君が神竜最強の“覇王竜”だ」



 ──はあああああああッ!???

 



誤字報告ありがとうございます。

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