ボクが世界最強になったワケ3
「やぁっほぉー♪あのね、ダーリン!南の孤島でドカンと一発噴火した火山があったんだって!今から一緒に見に行こうよ!」
「わっ、と。やあ、はーちゃん」
今日も今日とてボクはダーリンのテリトリーの森を訪ねる。
そこは大陸の向こう、遥か最西端の無人島にある小さな森で、竜達の噂では“桃ならぬ栗源郷の森”、なんて呼ばれているらしい。
そう!なんとこの森、ダーリンお得意のクリエイティブ魔法によって一年中季節がずーーっと秋!つまりボクがこうやっていつ来ても、そこらじゅうの木々の葉が紅葉で赤く、しかも栗や銀杏、しいの実や小の実なんかの秋の実りがたわわに成り放題!
─うん、さすがはボクのダーリンだね!
けど、えっと。実はそのダーリンなんだけど、出会った頃に比べて変わったというか、ちょっとボクへの態度がよそよそしくなっていて………
「噴火、別に見に行ってもいいけど。でもはーちゃん、行く前に今着てるその服は着替えてきてよ」
「え!?ボクの着てる服って、変なの!?」
「ううん、変なんじゃなくて、その、足とか胸元とかが……」
ついと顔を背けて何かもしょもしょと言いよどむダーリン。
──直視できないレベルで最悪なセンスだとぉ!?
「ち、違う服に!今すぐ着替えて来きまーーーすッ!!」
「ちょっ!だからはーちゃん、下から見えちゃ……」
*********
「それで何故私のところにやって来るのでしょう?」
「そんなの分かんないよ!それよりもセンスのいい服屋さんを教えてよ!あ、因みにリゼラちゃん、今日は幻想的なお花模様の服なんだね!とっても綺麗!」
「あら?貴女、センスが皆無なわけではないのね。これは私のお気に入りで辻が花文様というのよ。着てみたいのであれば、馴染みの仕立屋を紹介しましょうか?」
「ううん、いい!そんなどこもかしこもガッチリ窮屈そうな服、ボクには絶対ムリ!リゼラちゃんはいつもよく着てられるね!」
「………………」
過去を司る神竜の暁星竜リゼラちゃん。残念ながら彼女はボクとお友達にはなってくれないけど、何故かしょっちゅうこうして夢の中で会っている。
お人形さんのように可愛いのに、相変わらず心の中はすっごく毒舌。
ほら。ムッと口を引き結んだ今も、──
「ああら?また勝手に人の思考を読んでます?あのね、そんなんだから貴女、未だに女子友が一人もできないって事にいい加減お気づき遊ばせ?成体になっても相変わらずお馬鹿なようなので教えて差し上げますけれど、誰しも許可なく勝手に心のうちを暴かれたくはないものですし、本当に心の底から不愉快でしてよ」
「えっ、ご、ごめん。でも勝手に聞こえてきちゃうから……」
「そんな事情は私の知った事ではありませんわ。ぽやぽやと頭お花畑で生きてないで、一度死ぬ気になってご自分の神力をコントロールする術を身につけなさいな。あと、他人への気遣いがなさ過ぎです。無邪気と無神経は紙一重。これはご忠告ですけど、このままですとそのダーリンとやらにもいつか絶対に嫌われてしまいましてよ」
「ん?それは全然大丈夫だよ?だってダーリンはとっても有能だから魔法でガードしててボク読めないの。ねえ、そういうの、リゼラちゃんはできないの?」
「!!」
あっ、またなんか怒らせちゃった?
リゼラちゃんの背後にリアルでブリザードが……
「ッもう結構です!貴女みたいに神力無駄遣いのぽやぽや竜に、もうこれ以上一秒足りとも付き合ってられませんわ!ふんッ!どうもさようならッ!」
「あ!リゼラちゃん……!」
*********
「というわけで、あの、何でもいいからドバイスを……」
「むしゃむしゃむしゃ」
「リオルージェ…ちゃんはその、長袖にロング丈スカートだけど、軽くてとっても動きやすそうな服だよね。裾がふんわりひらひらで、まるで木の妖精みたい。そういうカンジの服ならボクもムリしないで着られるかも?」
「かぷっ。しゃりしゃりしゃり」
「あの、いつもどこでお洋服を手に入れてるの、かな……?」
「がりがり、ぺぺっ。─がぶっ、むしゃむしゃ……」
あまねく大地を豊潤に満ち足す神竜、─と、人づてに聞く緑樹竜リオルージェちゃんは、今回もただひたすら果物を食べ続けている。
ダーリンのテリトリーの森から手土産代わりに採ってきた甘柿、すっごく美味しいみたいだね………
「……ええと。それじゃあ、また来」「“ガバヤ”、というこの国の民族衣装よ。……仕立前の生地なら、ここに今あるけど?」
「え!?」
リオルージェちゃんが!やっとボクと喋ってくれた……!?
わあっ。意外と普通に喋れる子だったんだ。
ポカンと口を開けて惚けていると、おもむろに立ち上がった彼女は近くに聳え立つ木までトテトテと歩いて行き、そのうろ部分に手を突っ込んで中からキラキラした反物を数本取り出す。
天然仕様の隠し場所、──と見せかけた収納魔法だ。その証拠に反物はどれも新品同様でカビや土汚れが全くない。
「こっちでは手に入らない珍しい果物をくれたお礼。イエニスの王宮からの献上品で、いつも有り余ってるからどうぞ?こっちの原色は貴女に合うんじゃない?」
「貰っていいの!?あ、ありがとう!!」
「でも貴女、センス云々よりもその発育具合と肌の露出が問」「よぉし!善は急げだ!じゃあリーちゃん、またお土産持って逢いに来るねーー!!」
「…………」
*********
「まあまあ!残念ながらこれっぽっちもまだ腐ってはいないけれど!それは何だか面白そうな事になってるじゃない!いいわ!いいわ!恋バナ&恋のお悩み相談なら大歓迎!このアーシェお姉さんにどんとお任せよ!」
誰に聞いても具体的にどんな神力か謎の紡竜アーシェさん。
すみれ色混じりの綿菓子のようなふわふわなロングヘアーに、蝶々みたくパタパタとはためく背中の翅がトレードマークで………
「!?─よく考えたら竜なのにどうして昆虫の翅!?」
「美しいからよ!その他に何か理由があって!?」
「後ろの薔薇いっぱいのお家は、ええと、その、もしかして……」
「とっても素敵でしょう!私の白薔薇宮殿へようこそ!」
「虫がわいたりしないの?それにちょっと臭いが強烈」
「まあ!夢と幻想の楽園に害虫など存在しているわけがないじゃない!それに薔薇は健康と美容と心にすごっく良いのよ!いくらでもこの香りを堪能していってね!」
………逆らっちゃいけない人だった。
むせ返る薔薇の臭いに鼻をつまんでいると、アーシェお姉さんはどこからともなく銀色のノートと羽ペンを取り出す。
「さあて。ハーシェンヌちゃんには一体どんな役設定が相応しいかしら?中身は大ざっぱ天然脳筋娘、けれど外見はむちむち巨乳妖艶美少女。──ふふ、ならやっぱりファビラスなアラビア系のお姫様が一番ピッタリね!」
「むちむち……?え?あの、─ッふええ!??」
*********
「………どこもきつくはないけど、なんか全身スースーひらひらし過ぎてない?うーん、これでダーリンは、以前のようにボクと気軽に喋ってくれるかな?」
足元を見れば先っちょが尖ってて変な靴。
地上に降りてもフラつかずに上手く歩けるんだろうか?
それにあの銀色のノートと羽ペンはホント凄かった。
アーシェお姉さんがあれにこの服を着たボクの絵を描くだけで、そのまま実際にその絵の通りになっちゃった。髪も綺麗にセットされてるし、顔も目元も唇までベタベタと何か塗ったくられてて。
それにちょっと不思議な気分。いつもに比べて気持ちが落ち着いてて、ボクがボクじゃないみたいに感じるんだけど………?
「蒼い髪に蒼い翼……。もしかして君が“はーちゃん”?アゼルが手紙に書いていた友人の、妖竜ハーシェンヌさん、かな?」
「あ、はあーい。─てぇ!いつの間にかそこにいる君は誰!?」
雲一つない快晴の空を飛んで移動していたら、気付かぬまに小飛竜に乗った男の人が横を並走していた。
キラキラと輝くシルバーっぽい髪に翡翠色の竜眼……!?
「初めまして。俺は光竜ヒースクリフ。アゼルの友人です」




