ボクが世界最強になったワケ1
~覇王竜ハーシェンヌの独白~
突然だけどボクはハーシェンヌ!
“世界最強の覇王竜”──なんて大ボスっぽい称号がついたボクだけど、でも実際ホントのところは世界最強なんかじゃなかったりする。
じゃあ、なんで覇王竜なんて呼ばれるようになったかっていうと、それは幼少期におけるボクのケンカっぱやさが原因なんだ。
「こんにちはー!あのっ、はじめまして!ボクは妖竜ハーシェンヌ!ええと!君の名は何ていうの?同じ神竜仲間に会えてうれしいな!」
「……こんにちは。私は暁星竜リゼラ。よろしく、です」
産まれて最初に出会った神竜はお人形さんみたいな女の子だった。
ピンクの紫陽花のような色彩の瞳と髪色で、軽やかでサラサラのショートヘアーが特徴的。ドンと目立つ大輪の花模様が描かれた、見るからに豪勢な仕立ての服を着ていた。
う、うわあ!おしとやかで超可愛いカンジの神竜……!
変幻による人の姿がすっごく板に付いてて、見るからに頭も良さそう。
なんていうか……大雑把でおっちょこちょいで魔法のコントロールもドヘタ、剛力だけが唯一の取り柄のこのボクなんかとは大違い……?
でも!この世界でたったの13体しか存在しない同族の神竜だし、言ってみればちょっと遠ーい親戚みたいなもの。だったらこの機会に是非ともこのボクと…とと、─っ友達になってもらえればなぁって!
─ダメかな!?やっぱ初対面で図々しいかな!?
とにもかくにも自立心の芽生え始めたこの時期、ボクは“お友達”というものがすっごく欲しくて欲しく仕方がなかった。
よし!思いきって「友達になって!」って、お願いしてみよう!
意を決したボクは、ドキドキと破裂しそうな胸を右前足で押さえ、勇気を振り絞ってパカッと口を開くと、──
(……なんだかお馬鹿っぽいお顔の神竜ですねぇ。というかどうやってこんな場所までやって来れたのでしょう?どうも分かってないようですが、ここは時空系列を遥か遡った過去の世界なんですけれど。……ああ、きっと無意識に自分の夢の世界と繋げちゃったんですね。いるんですよねー、気合いと根性だけで天文学的確率の有り得ない奇跡をポロッと起こしちゃう天然竜。ふう。神竜の気配がしたのでルゼロかと思って姿を現したのに超ガッカリです。一応は名乗りましたがルゼロじゃないならホントどうでもいいです。ルゼロ以外の有象無象に興味など塵芥ほどもありませんし時間のムダですね。あら?さっきから鼻息荒く何か言いたそうなお顔をしていますが、まるで牛か猪かゴリラみたいです。ぷっ。嫌ですわぁ、とても同じ神竜とは到底思えない品格のなさ。それに比べてルゼロは、──」
「…………………」
*********
「ええと!こんばんは!ボクは妖竜ハーシェンヌ!その、─」
「ああ、あんたがリゼラと闘り合ったとかいう……まあ、礼儀として名乗りくらいはしておこうか。俺は時空系列の未来を司る、辰星竜ルゼロだ」
今度は青い紫陽花色の髪と瞳の神竜に会った。
男の子だけど暁星竜リゼラと顔がそっくり瓜二つ。袖や襟ぐりがゆったりとした風通しの良い、風流な波模様が描かれた服を着ていて、見るからに含みのある視線でボクを見返してきた………
うん、なんかもう、そんな対応をされちゃう覚えがたあぁーっぷりあったりするし、ボクにも非が大いにあったと思うから、まあ、ここは取り敢えず謝っておこう。
「その、ついカッとなって大ゲンカになっちゃったけど、リゼラちゃんは大丈夫?先に手を出したのはボクの方だし、あれはやり過ぎだったって反省してる。ええと、リゼラちゃんとルゼロ君はそっくりだけど、双子の神竜なの?」
「……へえ?とんだ跳ねっ返りかと思ったが、案外素直なんだな。神竜のくせに無知なようだから教えてやるが、俺とリゼラは双子ではないし血の繋がりもない。産まれ持つ互いの神力からして、対極の“対”となる神竜だ」
神妙に頭を下げると、ルゼロ君の険しい表情が途端に和らぐ。
でもこんなにそっくりなのに双子じゃない……?
「そもそも顔がそっくりって言うが、どんな風貌の人型に変幻するかは本人の抱くイメージ次第だろうが?俺とリゼラは相思相愛で対の神竜、だから容姿も対のお揃いにしただけ。本来の姿である竜体に戻ればそんなに似てないぞ?」
「へ?あ、そう……なんだ?」
あれ?言ってる意味がよく分かんないや?
相思相愛の伴侶が自分とそっくり同じ顔って、それって果たしてどうなんだろう?ええと?つまり、彼らはナルシストって事?それとも顔もお揃いがいいほど互いに好き合ってるって事??
ううーん?ちょっとボクには理解できないよ?………けどまあ、恋愛観は人それぞれだもんね……?
ムリヤリ納得してると、またまた心の声が聞こえてきた。
(へえー。リゼラは“野猿みたいで顔も馬鹿っぽい神竜”、って手紙を寄越してきたけど、全然可愛いし素直じゃん。まだ幼体なのに蒼い鱗と翼はキラキラと輝いて綺麗だし、あのしっぽと腰回りの肉付き加減はエロくて超俺好み!こいつ、ぜってぇーあと数十年ですっげえ上玉竜になるぜー?うわっ、超やべー。俺の一番は勿論リゼラだけど、できればこいつも唾を付けときたい!)
──は!?つ、唾を、付けるぅぅ!?
(何だか色々と無知なようだしその手の事も無防備そう。なら落とすんならまさに今のうちだな!見たところ、たまたま夢の世界から空間を繋げてやって来たらしいから、これは実体じゃなくてどうやら思念体のよう。……だったら今、強引にここで押し倒しても所詮は夢の中の事だし?倫理的にも道義的にも問題はない筈、だよなぁ?)
「………………」
*********
──唾付けるって何だよ!押し倒すって何だよッ!?
よよよ、よく分からなかったけど!先に手を出そうとしてきたあっちが悪いんだからね!
二度も続いた失敗に頭を抱えそうになるも、その次に会った惶竜ガルティアには「神竜一高貴なるこの我とお友達などとは笑止千万!!千年後に出直して参れ!!」と一喝され、その次に会った火竜マギナロスには、出会い頭の問答無用で「フンッ!」と鼻息爆炎ブレスで攻撃された。
また、同性の神竜にもまるで相手にされなかった。
お喋りなお姉さん竜の紡竜アーシェには「ごめんなさいねぇ!貴女のようなお子ちゃまではラブロマンスもハードボイルドもボーイズラブもその素晴らしさをまだ1㎜も理解できないでしょう?だからお友達になってもお話が合わないと思うの。ほど好く腐って百年後くらいにまたいらっしゃいな?」と、丁重に追い払われ、やっと見つけた一番年齢の近そうな緑樹竜リオルージェなんかは、話しかけてもずっと木の上で果物をむしゃむしゃ食べててこっちを振り向きもしない…………
何だかもう……心の声を聞いてキレるまでもなく、出会い頭のその態度にボクは速攻ぶちギレてしまう展開となった。
はあ……ボクにお友達作りは一生ムリなのかもしれない………
そもそも“他人の思考を読み取る神力”、更に成体ともなれば“その魅力で相手の精神に干渉して意のままに操る”、─妖竜としてのそれらの神力もうまく使えそうもないばかりか、こうして振り回されているのが現状の未熟者のボクなわけで……
そんな風に途方に暮れつつあったある日。逆に向こうからボクに声をかけてきた神竜がいた。
「にゃっ!?」
「ほう。そなたがここ最近、神竜うちを訪ね回っては次々と喧嘩を吹っ掛けているという問題竜か?ああと、確か……」
「妖竜ハーシェンヌ様、ですよ!主様!しっかりー!」
「あ、ああ。その、イシャン。ここはちょいと黙っておれ」
大地と同じ色の鱗に明るいトパーズ色の竜眼。
ドッシリと貫禄のある、けれどとても落ち着いた風体のその神竜は、肩に派手な極彩色の鳥(─だよね?)をちょこんと乗せていた。
「俺は森羅万象を司る森羅竜ラッセル・テリオス。なあ妖竜ハーシェンヌよ、別に喧嘩をしたくば好きにやれば良いが、あんまりこの世界の大地を、森や山や河川などの自然を無為に破壊してくれるな。俺の補修が全く追い付かぬではないか」
リゼラは着物、ルゼロは甚平を着ています。
先にハーシェンヌの過去話→112話に繋げていきます。
なのでサブタイトルを変更しました。




