ヒロインが原作者の物語3
──ああ。人生って、何が起こるか分かったもんじゃない。
運命の悪戯、もしくは数奇な星の巡り会わせって言えばいいのか。
高校入学を目前にトラックに撥ねられ、突然呆気なく死んでしまったハズのうちは、夢の中で出会っていたカンパニュラちゃん(※今は白うさぎ姿で相棒)によってまさに成仏一歩直前で引き留められ(※物理・しかも頭突き)、そして有り得ない事に、実はその正体が神様だったという彼女のお願いによって、自分が趣味でこっそり書いていた自作小説の世界の中で生きる事となってしまった。
しかも、恐れ多くも物語の主人公として………
あ、あはは。うん……有り得ない、信じられない。
これってもしかすると、実は交通事故で意識不明の重体となったうちが、病院のベッドの上で空想力豊かな夢でも見続けている、なんてオチなのかも……?
それも十分有り得る、─けど、仮にそうだったとしても、この壮大な夢物語は今のところこれっぽっちも醒める気配はないし、もうこうなってしまったからには観念してヒロインとしての役割を果たしていこうと思う。
ええと、取り敢えず簡単に説明すると、うちが趣味で書いていた物語のジャンルは所謂異世界召喚モノ。
奇しくもうちと同様に突然事故で命を落とし、あの世で神様と交わした契約によって異世界へと飛ばされた少女。彼女はそこで様々な苦難と試練を乗り越え、そして最終的には聖女としてその世界の危機を救うっていうカンジのお話だ。
それで、うち……じゃなくて、この世界での名を“オルヴィナ”と設定した少女に神様から与えられた使命は、─“ルーティンパネルカード”─という全11枚の秘宝を全て集める事。
この物語の舞台となるのは魔法と竜が存在するエルドラシア王国。
その国を建国した初代国王で世に名だたる英雄、ヒースクリフ王が後世に遺した秘宝を手に入れる事こそが、この物語のメインストーリーとなっている。
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「で?ヴィーナ、次はどこへ行って、何番のパネルカードを手に入れるんだ?勿論、この俺も一緒だよな?」
「はあ……ホントいつも暇なんですね、オルストフ殿下って」
放課後、ニヤリと笑って教室の出口に立ち塞がるのは、眩しげな金髪に情熱の赤と冷静の青を混ぜたアメジスト色の瞳の少年。
彼はこの国の王子で唯一の王族直系男子、というとんでもない身分の男の子なんだけど、何故か出会った当初からうち個人への好感度が異常に高い。
まあ……今はムッと不機嫌顔なんだけどね。
「あのさぁ。“オルフ”と呼べって、何度言えば聞き入れてくれるんだ?王国の定めた学園の規定によれば、この王立学園に通っている間は俺もただの一生徒なんだけど?」
「絶対にご遠慮します。それって、学園内でむやみやたらと権威を振りかざすなっ、ていう意味での規定ですよね?現に殿下の事を愛称で呼んでる生徒なんて誰もいませんし!」
たかが伯爵令嬢のうちが、殿下を愛称呼びとか有り得ない!
友人ってだけで、今でも周囲の風当たりは相当キツイってのに。それに彼とあんまり仲良くすると“氷の女王様によるツンドラ牽制イベント!”、が発生してしまうのだ、ーーガタブルッ。
「いるぞ?まあ、二人ばかしだが」
「それ、クレメイア王女殿下とミュゼット王女殿下のお二人でしょう!当然のように身内枠と一緒にしないで下さい!恐れ多いです!」
「むっ、今日もフラれた。だがヴィーナ!俺は決して諦めんぞ!」
ーーいや、だからなんで……!?
確かに人物設定では、“ちょっと強引な性格だけど誰とでも気さくに話す王子様。更には継母のアメリア女王様経由でうちの持つ光属性や使命の事も知っていて、立場上最初からヒロインに対して協力的”、なキャラなわけだけど……
けど彼の本質は、一見自由で適当に見えて意外と抜け目なくしたたか。いつの間にか周囲に優秀な人材を集め惹きつけ、知らぬうちに自分の意のままに動かす、という天性の王者体質。
そんな彼と友人以上の関係になるにはそれなりの努力、──言ってみれば相当高い“パラメータ”と“好感度”、が必要になってくるハズなんだけど。
まあ、“パラメータ”はともかく………
「そうだ!俺さ、この春に16の成人になったし、もうすぐ小飛竜に乗れる許可が出そうなんだ!そうなったらヴィーナを俺の後ろに乗せてやるから、他国にあるパネルカードを一緒に探しに行こうぜ!」
「え!?小飛竜に!?ホ、ホントにッ!?」
小飛竜といえば立派な竜の仲間。
人と共存していく為に徐々に小型化していった竜種で、どの国でも利便性の高い生き物として重宝されている。
「うわあ!小飛竜にリアルで乗れる日がやって来るなんて……!殿下!約束ですからね!楽しみに待ってます!もしも嘘だったらデコピンの刑ですからね!」
「デコピン……あ、ああ、任せとけ!」
ん?デコピンって、この世界にもあったかな??
でも殿下がとっさに額を押さえたから、多分あるんだね。
「じゃあ、小飛竜は後日のお楽しみという事で。ーーさて、ええと、取り敢えず今日は、ギュンスター伯爵家に突撃訪問する予定なんですが」
「代々天才魔法師を世に輩出するの魔法の名門ギュンスター家か。確かにあの家なら、パネルカードの一枚や二枚は隠し持っているかもな。だけど、そんな一族からどうやって引き渡すように交渉するつもりだ?」
「大丈夫です。だって別に私は、ギュンスター伯爵様からパネルカードを横取りするわけじゃありません」
「ん?……どういう事だ?」
……まあ、物語では時間をたっぷりかけて説得したり交渉材料を用意したり、又はそこで偶然巻き起こる難事件を無事解決!、─というイベントクリアで手に入れていくんだけどね。
けど、それだとうちにとって都合が悪いんだ。
「秘宝はそれぞれの神竜が持つ神力を元にして作成されたもの。──だったらその神竜に直に会いに行って、ルーティンパネルカードの複製品を作っちゃえばいいんです」
「ーーッは!?」
こちとら原作者。秘宝の仕組みや作成方法なんて知ってて当然。
勿論、この世界のあらゆる詳細設定や極秘情報、誰も知りようがない驚きの裏ワザ、──なんてものもね。




