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スカートめくり feat. ピンクのしましまパンツ  作者: 齊藤パンティ
第二段階 彼女のスカートをそっと優しく掴む
9/19

俺が、彼女、三津小海が少なくとも黒レースのパンツを所持しているということを知っている理由

 そんな加殿さんから視線を外し、目の前の牧之さんに集中する。とは言っても脚しか見えてはいないが。


 そんな太ももの彼女の履くスカートにいよいよ手を伸ばす。

 しかしどこを掴むべきかと悩乱する。


 例えばスカートの真後ろ。両手を揃えるようにスカートを掴んで捲ったとしたら、その時、スカートはどのように翻るのだろうか。

 また両手を広げるようにスカートの左右を掴んで翻した場合、その時のスカートはどのように捲れ上がるのだろうか。

 スカートのどこを持って捲ると、そのスカートはどのように振舞うのか。


 どうなるんだっけ?


 えぇーっと、左右に広げて持ってしまうと、空気抵抗とかあれとかがあれだから、その…なんだ、あれだ。かといって狭く持つとぉー、なんだ、こう、ああなるんだよ。きっと。

 だから結局どこを持てばいいんだ?

 狭くもなく広くもなくだろうけど、この、へんかな、と恐る恐る手を伸ばす。いや、しかし待てよ、と引っ込める。


 また話が戻るが、広く持てば手からの力が左右から前、後ろへと全体に広がり、そしてスカート全体が捲り上がるだろう。それでは彼女があまりにもかわいそうではないか。

 もし、もし仮に彼女がパンツを穿いていなかったら、そのなんだ、まあそういうことだ。

 そして仮に穿いていたとしても、360度、パンツがお目見えしてしまうだろう。そうなったら目撃者も必然、多くなるわけで、それは彼女にとっても俺にとってもよくないことだ。じゃあやっぱり狭く持つべきかと思い立つが、いつかの柏久保んとこの5代目が繰り出した「下衣中点灯」を思い出す。つまりスカートの中の暗さも問題だ。ということは十分にスカートの中に光が入らなければ、パンツを拝むことができないだろう。そうなれば多少は広く持たなければならない。狭すぎず、広すぎずだ。

 やはり先ほどと同じところあたりに目掛けて手を、いやもう少し広く、かな。そう思い両手を少し左右に広げる。その手とスカートを見比べて、少し開きすぎたと感じて、また少し狭める。それを何度も繰り返す。このそれぞれの太ももの後ろあたりから、もう少し広く、いや狭く?いや広くだ。つまり俺の肩幅よりやや広くか、いや肩幅より狭い?


 えぇい、ままよ!と今度こそスカートを掴もうとしていた時だった。

 また誰かが俺を見ている、そう感じた。


 手がスカートに当たるすんでのところで止め、そしてその視線を探す。

 それにしても俺はいつかの加殿さんや柏久保君のように気配を消せていないのだろうか。少し残念だ。

 まあ本人に気づかれなければそれでいいので、そんな遺憾はどっかにほっぽってその視線を探す。


 いた。

 その人は、本当に捲るのか、と、いや、捲るだけでいいのか?と問うてきているようなそんな表情だった。


 いつの事だっただろうか。ある日の人の少ない放課後。俺が加殿さんと楽しくおしゃべりしている時だった。


「例えばここに黄緑のパンツを穿いた加殿さんと、ピンクのパンツを穿いた加殿さんがいるとします。」

「あ、はい」

「それでですね、どちらかが過去の加殿さん、そしてどちらかが現在の加殿さんです」


 さてここからどんなお話にして、どうやってお聞きしたい事に持っていこうかと考えながら加殿さんの相槌を待つ。


「じゃあ黄緑が現在の私だね」

「え?なんで?」

「え、なんでって今日、私きみーいいいいいいいああああああああっ!あっ!どっちが、わたっ、今の!今の私だろうねっ!ねっ!いやーむつかしいなーっ!」


 俺は口をあんぐりと開けるどころか失笑が漏れた。そして本日の加殿さんとのおしゃべりの目的は栄えて達成されたのであった。


「ねえ、本立野、あれ」

「ん?」


 加殿さんはどこか深刻そうに声を潜めながら教室の後ろを指さした。その可愛らしい指を辿ってそちらを向くと、なんかいた。しかしなんか名状しがたかったので、その近くにいる三津さんの見目麗しい姿、特に胸を見つめる。

 その三津さんの胸は、牧之さんのそれとは勝るとも劣らない。別に測定したことなんてないし、ましてや二人の乳を並べて比べたことも勿論ないわけで、さらに二人の胸は布の上からしか見たことはないが、それでもそう見えた。


「やつが、動くぞ」


 加殿さんがそう静かに言う。俺はごくりと固唾を呑んでその展開を見守る。

 瞬間、その三津さんの胸が脅威に覆われた。

 それは彼女を後ろから抱きつくように胸を鷲掴んだのだ。がぁしって感じに。そしてその把握に魅力的なほどまでにつぶれ、そして溢れた。


「うお、すごいな」


 それを見て思わず声が出る。


「うっわーさいてー」


 またいつかの抑揚のない言葉が静かに聞こえた。


「私もあんくらい…」


 加殿さんはさらに言葉を続けていたが、微かすぎて聞こえなかった。

 そして再びその三津さんを見ると、その脅威はまだ離していなかった。さらには弄ぶように楽しむように確かめるように何度も何度もわしわしする。それを受けて三津さんはいやらしく声をあげた。


「ぃひゃっん」


 彼女の落ち着いた印象とはうって変わってのとても可愛らしい声だった。しかしそんな声でもその脅威、いや彼女、瓜生野さんは止まらなかった。

 三津さんの背中に抱きつくようにしていた瓜生野さんは手と体を彼女から離したかと思ったら、今度は回り込み三津さんと向き合う。そして一瞬なにか企むような顔をすると、その両手をまた彼女の胸に押し当てた。


「あら~、また育ったんじゃな~い?」

「ひゃん、そ、そんなこと、ってや、やめてっ」


 その三津さんのいやらしい声を聞いてか、瓜生野さんは大人しく両手をその豊満な胸から離した。しかしまだ終わらなかった。瓜生野さんはその開いた両手を三津さんの背中へと回し、真正面から抱きつく。もちろん瓜生野さんの顔は三津さんの胸に埋もれた。


「んひゃ」

「むはー!最高だぜっ!」


 その豊満なおっぱいによってくぐもった、これ程までにない最高に頭の悪い感想が漏れ聞こえた。


「彼女は確か瓜生野さんだったよね?」


 静かに加殿さんに問う。


「ああ、そうだよ。…昔、うちにいたんだけど、自分で捲りたいって言って出てったんだ。そして三津流に入ったらしいんだけど、その狂気さクレイジーさに手が付けられなくなって、破門されたらしい」


 加殿さんは苦虫を噛み潰したような顔でそう教えてくれた。それを聞いていると、誰かの可愛らしくいやらしい声に引き戻される。


「ん、ちょっと、は、なれてっ」


 顔を赤くした三津さんはその自分に埋もれる頭を両手でぐいぐいと押すが、その頭はどうしても離れない。


「いいにほいだし、柔らかいひ、ほんともう最高だぜーっ!」


 またくぐもった声が聞こえる。

 そうやって彼女は頭を何度か左右に振ると満足したのか、簡単にその胸から離れた。しかしそれでようやく三津さんが落ち着き始めたころ、瓜生野さんが消えた。三津さんの視線からも消えたようで彼女も頭を左右に振る。俺も瓜生野さんを探そうと視線を巡らすと、彼女はすぐに見つかった。彼女はただしゃがんだだけだった。それでもまだ三津さんは彼女に気づかない。


 そしてその時だった。

 ふわりと、綺麗に靡く。

 それと同時にそのしゃがんでいた瓜生野さんがまた消えた。いや、頭が隠れてた。なにを隠そう、彼女は三津さんのスカート中に頭を隠したのだ。そして彼女がまた声をあげる。


「あははははははははははははははっ!うおっあははははははははははははははっ!」


 うるさいほどの声が続く。


「うはははははははははははっ!黒のレース!うわっはははははっ!こらまた最高だぜーっ!」

「今はああやって自分の捲道を極めているらしい。私はあれを捲道とは認めないけど」


 また加殿さんは眉を歪めて静かに口を開いた。


「だよね。あれは本当にひどいよ。捲らないからこそ捲道は美しいのに、全く残念だ」


 いつの間にか近くにいた五代目から良い声が聞こえた。どうでもいいけどメクラズなのに捲道って矛盾しているよって突っ込みたかった。


「やあ本立野くんに加殿さん」

「柏久保君、どうだい?調子は」

「まあぼちぼちってところかな。君の方はうちに入る気になってくれたかい?」


 まるで期待していないような雰囲気で聞いてきた。もちろん答えは決まっている。


「まさか」

「うははははははははははははははは!うはっうはっうははははははははははははははっ!」

「だろうね」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 それで一旦会話は止まり、その捲士ならざるものらしい人を三人で見やる。

 するとまだ三津さんのスカートの中にいた。彼女の頭に乗るようにスカートが短くなる。そしてそこから三津さんの麗しい太ももがお目見えした。ついでに言うと、さっきまでスカートを掴んでいた瓜生野のさんの両手がその太ももに見える。まるで舌が舐めるかのように両手を太ももに這わせながら、彼女は三津さんのパンツを眺めていた。


「うひゃースベスベだし、黒だし、最高だぜーっ!」

「ひゃ、ん、ちょっとくすぐっ、ほ、ほんともう、や、やめろーっ」


 三津さんはまったくもって似つかなく、そして言い慣れていないであろう、荒い口調で瓜生野さんを制止しようする。しかしそんなもので瓜生野さんは止まるはずなかった。胸と同じようにまた顔を太ももに当てて、その柔らかさを全力で楽しみ始めた。しかし三津さんも限界だったのか軽く握った丸い拳をそのスカートの盛り上がりに柔く降り下ろした。


「や、やめろーっ!」

「うげっ」


 短い声が聞こえると、瓜生野さんは観念したのかスカートから出てきた。そして満足そうな顔で立ち上がる。そんな顔に警戒したのか、三津さんは左手でいやらしくつぶしながら胸を隠し、右手は内股になった脚の間にスカートを押さえるように当てた。顔は真っ赤で溜まった涙に加えて少しの怒りが見えた。そんな彼女の顔に瓜生野さんが優しく両手を添え、その顔に近づいた。


「ほんっともう、小海は可愛いんだから」

「ん、ちょっと、離して」

「あ~可愛いなぁ」


 瓜生野さんはさらに顔を近づけた。もう唇が重なっちゃうじゃないかと、こっちが焦るほどに。そして瓜生野さんがまた口を開いた。


「ねえ、キスしていい?」


 いや、確かに二人の顔はどうしようもなく近くて近すぎて、美少女二人のその密着は俺のあらゆる知覚をちかちかと狂わせてしまうじゃないかと思うほどだか、誓って、二人のキスを見たいだとか、そんなこと、そんなこと…いいぞ、もっとやれ!どうか三津さん、瓜生野さんの唇を受け入れてくれっ!


「え、ちょ、ちょっとだけなら…」


 いいのかよっ!


「んじゃあ」


 瓜生野さんはそう言うと、近かった顔をさらに近づけた。

 それを受けて三津さんは目をゆっくりと閉じた。


 そして

 その麗しい潤った唇が吸い付くように重なった。

 相変わらず三津さんの顔は真っ赤。

 そして次の瞬間、その顔が驚愕のそれになった。なんだなんだと身を乗り出す心持ちで目を細める。しかし三津さんが少し苦しそうに、さらに顔を赤らめているぐらいしか分から、な、い?


「うお!えっ?」


 思わず声が出る。

 その重なる唇の時々離れる隙間から、二人の舌が絡まって見えた。

 瓜生野さんはさらに吸い付くように、むさぶりつくように、粘りつくように、三津さんの舌に絡み、対する三津さんはされるがまま。くちゅ、れろ、とそんないやらしく蕩けて混ざり合った二人の唾液の音が聞こえる。おぉうふ。

 それから数十秒それは続き、少し白く濁った唾液の糸を引きながら、舌と唇が離れた。

 瓜生野さんは薬指で自分の口端を拭うが、三津さんはただ惚けている。そんな顔を見てまた瓜生野さんが両手を伸ばし、その顔を包む。


「かぁいいなぁもう」

「…舌、なんて…聞いてない…」

「ごめんよ~つい可愛くて。またしたくなったらいつでも相手してあげるよん」


 三津さんはそれには特に大きく反応しなかった。まさか癖にでもなったんだろうか。そんな未だに恍惚としている三津さんから離れて瓜生野さんがこちらに近づいてきた。


「あ、お師匠に、お師匠の友人さんにその友人さんじゃあ、ありませんか。どうしたの三人そろって。あ、パンツの見せ合い?」

「そもそも師匠でもなかったからね?」

「まあいいじゃん細かいことは。んでこの人が本立野くん?」


 さっきまで三津さんの胸を覆い、そして三津さんの唾液を拭ったであろう薬指のある右手をこちらに向けてきた。別にその指にむしゃぶりつきたいなんて全くもって微塵も思っていない。


「ああ、どうも初めまして、瓜生野さん。本立野です」

「どうもー。あ、今私とキスすれば小海と間接キスだよ?私のパンツ見るのとどっちがいい?」


 瓜生野さんはなんだかよくわからないことを聞いてきた気がした。

 しかしそんな質問にも誠意を持ってお答えするのが俺という男なんで、頑張って熟考する。

 それにしてもキスとパンツか。いやーむつかしいなー。

 もし瓜生野さんとキスしたならば、当然瓜生野さんの唇に加えて、三津さんとの間接キスとなる。うむ、魅力的だ。

 両手を強く握り、一旦深呼吸する。

 そして暴れる動悸をどうにか押さえる心持ちで息を吐きながら腹に力を入れる。

 空になった肺に空気を目いっぱい入れる勢いで鼻から空気を吸う。

 そして


「パンツを見せてください!」


 腰は九〇度に曲がった綺麗なお辞儀であったと自画自賛する。


「いいよ~ほらほら~」


 瓜生野さんは自分のスカートを右手で掴み、それを少し上げながら揺らす。それに釣られるように俺はみっともなく首を動かす。

 そして瓜生野さんがゆっくり走り出した。


「ほら~見たいなら捕まえてみな~ほらほら~あはははーー」

「えーい、待てよー!あはははーー」

「「あはははーー」」


 なんだか彼女とは仲良くなれるような気がした。クレイジーだけど。パンツ見せてくれなかったけど。

 そんなことがあって、その人、瓜生野さんとは顔馴染みだ。

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