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ハルビンドーム

欧州で戦争がはじまり、世界の耳目がそちらへ向いていた6月上旬、満州国ハルビンでは不思議な事件が複数報告されていた。

それらは揃っておとぎ話だった。

曰く、鎧を纏ったケンタウロスに出くわしたとか、集団で走るケンタウロスを見たというものだった。

数日後には不思議な半球体がハルビンから10キロほど離れた所で見つかっている。それは半径数キロに及び、そこにあったはずの全てが無くなっている。無くなっているのだが、壁らしきものは透明で、向こうの景色がよく見えた。そこは平野であるようだが、しかし、彼らには間違いなく別の土地だと認識出来た。


その報告を受けた満州政府や関東軍では調査の必要性が検討されていたが、結論が出る前に事態は動いた。

ハルビンが何者かに攻められたという一方から僅か一週間で奉天まで侵攻していた。彼らは馬の上に人の上半身が生えた異形から攻撃を受けていたのである。

更に事態は瞬く間に進行し、気が付けば関東軍や満州軍は大連手前の金州に防衛線を敷くのが精一杯のところまで押し込まれていた。

しかし、日本ではこの二週間足らずの出来事は正確に把握できておらず、事態を楽観視する空気に支配されていた。しかし、異形の魔の手が錦州を犯すに及んでようやく事態を把握するに至る。


だが、時既に遅かった。相手はケンタウロスであり、その移動速度は自動車と大差なかった。

反攻に転じようにも相手はその素早さで何処へともなく消え去り、いつの間にやら別方向から襲撃してくるのである。金州の狭い半島地形でなんとか防げてはいるが、他の地域では既に組織的な行動すらできてはいなかった。

後に分かったことだが、この時侵攻してきたケンタウロスの軍勢は50万にものぼる大軍勢であり、その機動力を考えると当時のいかなる国の軍勢であれ、防ぐことは難しかった。

異形の攻勢は万里の長城を越えることはなく、北と南へと向かうことになる。

北へ向かった異形達はソ連軍を蹴散らし、チタにまで迫っている。南へと向かった異形達は瞬く間に朝鮮半島を南下し、日本が体制を整える前に釜山が陥とされてしまう。

それが9月の出来事であった。釜山陥落に多くの朝鮮人は狂喜していたというが、彼らは知らなかった。まさか、そのあとに地獄が待っていることを・・・


そして、異形は東へも向かった。ハバロフスクは異形の脚なら目と鼻の先であった。その通りに7月中には異形の物となり、更にアムール川を下っていく。

しかし、10月になるとその進撃は止り、寒さから逃げるように満州国境をこえてハルビンへと戻っていった。チタに迫った異形も同様であった。

ソ連にとっては幸運だったが、日本、いや朝鮮にとっては悲劇の始まりだった。

実は、この時点では、ハルビンに出現した異形は当初の倍に膨れ上がり、その一部は寒さを逃れようと南下した。しかも、連中の家畜を連れて。

家畜は南下しながら各地の異形に渡されていったが、後に続く異形も家畜を連れて更に南下していった。

既に金州の防衛線が破れないことを悟った異形は反攻に備える戦力のみを残して奉天へ、或は南下していった。

朝鮮、そして満州の悲劇はこの冬の間に起きていた。

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