それからの世界
1947年2月、日本と犬族が鬼族との間に停戦が実現したことで地球と異世界の争いは一段落ついていた。
1939年に始まった欧州での戦争はアルデンヌドームの出現でウヤムヤになったが、イタリアは1941年中は交戦状態にあり、ドイツが英仏と停戦した後もバルカン半島での戦争を継続し、「未回収のイタリア」をある程度占領することに成功している。
これについては英仏独はイタリアの不満解消のためとして黙認している。
北欧において行われていたソ連とフィンランドの戦争は英仏独が揃ってフィンランドを支援したことでソ連は損害を恐れて戦争以前の国境まで後退している。
そして、占領したポーランド東部を衛星国としてドイツと対立することになった。更にブルガリアやルーマニアにも工作して衛星国として取り込んでいる。その結果、英仏との対立も鮮明となり、世に言う冷戦が始まることになる。
東ではどうだったかというと、日ソはハルビンドームについて共闘関係にある一方でチチハルや内蒙古の帰属では対立することになる。
しかも、日本は1947年に朝鮮半島を「東方イスラエル」としてユダヤ人に譲渡している。
これには米国との密約も噂されているが、実態は今に至るも闇のなかである。
ただ、日本は米国と約束した満州開発への参入を認め、満州には米国資本が多く避難してきているのは事実である。
この為、日米対ソ連の構図が満州に出現し、日米は半ば自動的に欧州と協力関係を結んでいる。
とは言え、ミスリルやオリハルコンを一番必要とする米国は欧州との間に大きな温度差を抱えるのも事実であり、日米の協力関係と日ソのドーム内共闘関係という複雑な状態になっていた。
ソ連は50年代にはドーム内での勢力伸長を期して軍事行動に出るが大きな損害を出して疲弊し、傷が癒えた70年代には中央アジアや中国への干渉を強めたが、裏目に出て内戦の泥沼に嵌まり抜け出せなくなってしまう。
結果、90年代にはソ連は崩壊して複数の国に分裂してしまう。一時の混乱はあったが、ハルビンドームについてはロシアが保持しており、極東にソ連崩壊の混乱は影響を与えていない。
アフリカやアジアについてだが、英仏はアルデンヌドームへの資本の集中のため、アジアからは40年代後半には早くも撤退を始め、アフリカでも60年代には撤退してしまっている。
その為、各地で民族紛争が絶えず、比較的余裕のある日本と中華連邦がアジアに展開し、アフリカについては英仏が再展開する事態となっている。
現在、1945年に再構築された国際連盟が地球の国際機関として活動し、その中にドーム委員会というモノが設けられ、各ドームの状況が報告、整理されている。
ただ、ドーム内での活動には深く干渉しないため、武漢ドームで中華人民共和国の政治犯が食料や宿代にされていたり、アルデンヌドーム内で奴隷が横行している事にも対処せず、問題となっている。