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瀬戸内ドーム 2

少女の要請に海軍は嬉々として乗り出した。

それは明らかな前のめりだったが、ハルビンドームから得られる異世界鉱物とその功績を独り占めする陸軍への対抗心が冷静さを失わせていた。


まず考えてほしい。アルデンヌドームの向こうに居たのは獣人ではなく、魔法こそ扱うがあくまで人間である。武漢ドームの先に居たのは戦闘能力が人間並みかそれ以下のオークやゴブリンだった。

しかし、瀬戸内ドームから現れたのは犬の獣人である。その時点で敵はケンタウロスや犬、猫型の獣人並みと考える必要があったのだが、海軍はそうは考えなかった。

もちろん、分からないでもない。当時の海軍にとって弓や槍、多少の魔法があったところで数千トンにもなる巨大な艦艇が沈められる理由がなかった。


そして、1944年5月に少女を乗せた駆逐艦を主力とする先遣隊がドームの先へと向かった。

ドームの先には島があり、少女はその島から来たとか言った。

少女の言う通りにすぐさま集落を見つけて少女を連れていくと、見事に歓迎されることになった。

この集落での説明によると、この島(淡路島程度)を中心とする群島が東の大国に侵略されていると知らされた。

敵は大きな船を連ねてやって来ると言う話だったので、後続の本隊の到着を待たずに駆逐艦4隻による偵察が行われることになった。


4隻は島で渡されたピンクの旗を掲げて東へと慎重に進んだ。何せ海図もない海なので全てが手探りである。

ただ、幸いなことに座礁するような事もなく2日ほど進んだ先で船団を発見した。

その船団はピンクの旗を掲げておらず敵と判明した事からすぐさま攻撃に移るのだが、敵の応戦はかなりの威力を持っていた。弓で戦車が破壊された事を笑い話にしていた海軍はこの時はじめて異世界の実力を知る。

駆逐艦隊は接近は困難と判断して10キロ以上の遠距離雷撃を敢行し、砲撃によって敵に打撃を加えている。

雷撃はその半数が迷走により船団まで届かず、残りの過半は評定を間違えており船団のはるか前方を突き進む事態となった。たまたま迷走した魚雷の1本がうまい具合に船団に飛び込み1隻を吹き飛ばしただけだった。

砲撃による成果も一見して芳しくない。殆ど破壊や着火に至っていなかった。

駆逐艦隊は再度の雷撃を敢行しようと一時撤退して魚雷の再装填を行うのだが、すぐに夕暮れを迎え、第二次雷撃は夜襲となった。

日本海軍は当時、夜襲の訓練を積み重ねており、彼らも自信を持って突入したのだが、結果は酷いものだった。1隻は敵の矢が魚雷に命中して発射管が誘爆し戦線離脱。別の1隻は艦橋に多数の被害を受けて艦長以下、指揮要員を失い、他の1隻は突入の際に巨大な矢を船腹に受けてボイラーを破損して戦線離脱、残る1隻が魚雷を発射するも再びの迷走や飛び出しによる誤起爆により戦果を得ることなく撤退する羽目になった。


魚雷の問題は後の検証でジャイロの脆弱性が原因と分かり改善されるのだが、既に魚雷の有効運用が疑問視される状況になっており、外界の戦闘に投入されることはなかった。


このあまりに不甲斐ない戦果に海軍は衝撃を受け、ひた隠しにしようとしたのだが、当時陸軍から派遣されていた士官が陸軍に報告し、陸軍から情報が公式発表されると隠しきる事が出来ずに、海軍も事実を認める事になる。

ただ、この陸軍の行為は後の戦闘には良い影響を与えることになる。が、それは少し先の話。


偵察隊がボロボロになって帰ってきた頃には本隊も到着しており、本格的な攻撃が実施される事になる。

小型空母1隻、重巡洋艦4隻を主力とする本隊は偵察隊が戦闘を行った海域へ進出すると、それらしき船団が島へ上陸しているのを発見し、空母搭載機による攻撃を敢行した。

空母が小型な事もあって搭載している機体も既に旧式に類する時期を迎えていたが、外界では十分とされていた。しかし、結果は雷撃や急降下爆撃を行った部隊に損害が続出してしまう事態となった。


陸軍の報告でも、異形の弓は射程が1キロを超え、バリスタの様な装備なら5キロに達するとあった。攻撃速度が300キロ程度の場合航空機も危ないと書かれてもいたのだが、当然、海軍は鼻で笑っていた。

しかし、結果はこれである。


夜を待って夜襲によって沖合いの船団から捻り潰そうと突入した艦隊はしかし、返り討ちにあってしまう。

魚雷は迷走や計算違いで船団を捉える事は出来ず、駆逐艦砲では小型船を引き裂く事は出来ても大型船には効果が薄かった。


意気揚々とドームの向こうへ艦隊を派遣してたった1週間で空母搭載機の半数を失い、駆逐艦の多くが損害を受ける事態に海軍の衝撃は大きかった。隠したくなるのも分からないではないが、陸軍からの発表で明るみになり、問題は更に大きくなった。

後に引けない海軍では退役を控えていた4隻の戦艦を追加派遣し、巡洋艦も増強することになった。駆逐艦は敵に突入することなく、攻撃してくる小型船の迎撃を主とした艦隊警護に徹する戦術が採られた。


1944年8月には戦艦の第一陣、2隻が投入されて再び攻撃が行われることになった。

戦艦の威力は絶大で昼間の遠距離観測射撃だけで敵の上陸部隊や周囲の船団を破壊して回った。

これに気を良くして夜襲を敢行するが、やはり返り討ちにあい、戦艦までもが損害を受ける事態となる。幸いな事にこの日の攻撃で海上の敵はほぼ一掃しており、戦艦の応急修理の時間はあった。


三度目でようやく海軍も外界の異形は地球人より遥かに視力が良いことを認める事になる。

ただ、日本、特に海軍でのレーダー開発は進んでいなかった。世界で一番遅れていたかもしれない。

そんな状況でまず陸軍に協力を求めるが、対空レーダーならともかく、水上レーダーなど作っているわけもなく、海軍の必要とする装備は手にできなかった。

そこで目を向けたのは、オリハルコンを欲しているアメリカだった。

長くなるので続きは次回

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