瀬戸内ドーム
ハルビンドーム騒動も一段落してモシリからの異世界金属を手に入れた日本はそれを用いた装甲や砲弾の開発を本格的にはじめる。
ミスリルに関しては、ある程度纏まった量を入手出来ていたのだが、オリハルコンは極めて少なかった。
ソ連はというと、外界の住人と揉めながらも、着実にミスリルやオリハルコンを手にしていた。
同じハルビンドームから運び出すのだから日本が知らないはずもない。
陸軍はソ連によるドーム独占を警戒して多数の兵力をハルビン周辺に展開していた。
しかし、さすがのソ連もドーム内での行動と満州での軍事行動を同時に行う余裕はなかったらしい。
この当時、ソ連が行った外界での領有宣言は、外界の国々に完全に認められたわけではなく、幾つかの勢力と対立していたのだが、彼らも異形と同じく、人間よりも遥かに能力が高い獣の一種であり、矢じりにオリハルコンを使っているため、被害は大きかった。
実は、今でも猫人族の夜間視覚能力は暗視装置並であり、更に魔法を使うと人間では互角に渡り合えるものではない。
外界に先端技術を普及させないよう日露は今でも神経を使うが、外界の獣人にしてみれば、自ら志願して日本軍に入隊する物好きくらいしか、地球の先端技術に興味はないし、実用面では地球の技術は未だ、彼らの魔法や身体能力を越えるものではないため「珍しい流行りもの」程度でしかない。
猫型ロボットが活躍するアニメの四次元ポケットは獣人の使う収納魔法が元ネタだし、どこでもドアは神速魔法という、光並の速さで移動できる移動魔法が元ネタである。残念ながら、地球では獣人の魔法を解明して科学で再現するところまでは至っていない。
閑話休題
収納魔法で空間移動は出来ないし、神速魔法で水上を歩ける訳ではない。しかも、地球では魔法は殆ど力を発揮しない。
それで安心しきっていた日本海軍だったが、1944年3月に瀬戸内海、それも香川県高松市の目の前、女木、男木の眼前にドームが現れると事態が急変した。
異形の侵攻で満州や朝鮮が殆ど無人になった直後であり、日本はドームの警戒を厳に行ったが、現れたのは小舟に乗った少女一人であった。
少女と接触してみると、差異は大きいものの、言葉が理解できたのである。
少女には犬の耳があり、尻尾もあった。モシリと同じく獣人で間違いなかった。
しかも、少女は島を助けてほしいと懇願してきたのだった。
この瀬戸内ドームの話は「鬼ヶ島合戦と日本海軍」という軍事雑誌の特集記事を読んでもらった方が良いので、詳しくはそちらに譲る。一応、経過についてだけは語るとしよう。
物語を更に分けることにしました。
どうしてこうなった・・・




