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短編連続小説『作家になろう』 第一話

似たような短編が多々あります。

自分流にパクってみました。お楽しみ下さい。

 面白いのになあ。なんでかなあ。


 何度もクリックする更新ボタン。だが現実は思うようにことが運ばない。




 小説投稿サイト『作家になろう』

 実に7万人以上が登録する素人参加型の小説サイトである。


 暇つぶしにそのサイトに登録したボクは、その世界に夢中になってしまった。

 そこには商業ベースでは読むことができない尖った作品が数多くあったのだ。

 稚拙な作品もあった。だがそれはそれで味があった。

 出版したら売れるんじゃない? そう思わせる作品にも出会えた。

 とにかく、貪るように毎日読みふけった。

 そしてふと思った。この人たちはなんで小説を書いているのだろう。

 不思議だった。

 人間の行動の奥底には必ず損得勘定が横たわっていると思っていた。今でもそう思っている。

 この人たちは、一見『タダ』で小説を書いている。普通に考えたら『損』である。

 だがそうではないのだ。何かを『得』ているはずなのである。


 疑問は行動の切っ掛けになった。

 ボクは初めて小説なるものを書いてみようと思った。

 プロットを考え、登場人物を設定した。

 淡く溶けてしまいそうな妄想。それが脳内の作業を進めるたび、その輪郭が少しずつ明瞭になっていった。

 そしてボクはテキストエディタを開き、執筆に着手した。


 第一話が完成した。何度も読み返した。我ながら面白い。

 続けて第二話にとりかかる。

 そして空が明るくなる頃にはなんと五話目を書き終えていた。


 満を持して第一話を投稿する。そして第二話、第三話と続く。

 モニターの向こうでは、多くの人が今頃ボクの作品に驚いているに違いない。

 少し焦らしてやろう。おあずけだ。ボクはここで投稿を終わらせた。



 眠い目をこすりながら仕事を終え、パソコンを立ち上げる。

 さてさて、いまごろボクの作品は?

 アレ……トップページが普段と変わらない。

 小説管理ページへと進む。

 そこには『総合評価 0』と大きく赤い文字で書かれていた。


 おかしい。操作を間違えたのかな? 本当に投稿してる?

 アクセス解析のページを開くと『小計 46アクセス』の文字が。

 ん、少なくないか? 何かのトラブルだろうか?

 ボクは読み専だった頃の知識で、トップランカー達が一日に数万アクセスをたたき出しているのを知っていた。

 焦ったボクは、急遽、書き溜めた5話目までを一気に投稿した。


 そして再び開いたトップページ。

 その画面の左上には、普段お目にかかることのない赤い文字が。

 『1件の新着メッセージがあります』


 ボクは歓喜した。

 これか。これが『得』られるものだったんだ!

 すぐにクリックするとそこには『感想返信通知』の六文字。


 てめえ〜、一ヶ月前の感想、今頃返信するんじゃねえ〜!

 しかし、気持ちが高ぶった。勘違いだったとは言え、今まで味わったことのない快感だった。


 その後も何度もサイトを開いた。閉じたり開いたり。

 ブラウザーを再起動して、終いにはパソコン本体の電源も入れなおした。

 だけどこの日『総合評価 0』の文字が変わることはなかった。




 あれから五ヶ月、ボクは全くリアクションのない小説を今も書き続けている。

 まるで写経のように。


 勘違いだったあの興奮が忘れられなくて……。

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