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吉衣高校の初行事となる空手部、陸上部、そして剣道部の三部活合同合宿が幕を開けた――なんて話しだせば、まるで僕が練習を行っている最中にこんな雑談を話しているように思われるかもしれないが、しかし合宿一日目をやり終えた時の、陸上部員な僕こと琴星薫の最初に放った感想は「疲れた」だった。


 やり終えた。


 つまりは過去の話だ。そうはいっても、空手部との異種合同合宿が終わってまだ間もない時間ではあるが、しかし合宿が始まった午前九時から終わるまでの午後五時までという約八時間もの練習は、まるで時間の進みが遅くなるほど、気が遠くなりそうな練習だった。今思い返せば最初の一時間のストレッチや体操が遠い昔のように感じられる。


 陸上部、剣道部、空手部。


この三つの部活動が、まさか異種合同合宿を行うなんて夢にも思わなかった生徒が多いだろう。


剣道部と陸上部が一緒に合宿をするということだけでも吉衣高校で初めてなのに、そのうえ空手部という全国でも強豪と称されている部活動が入ると、本当に珍しい光景だ。噂によれば一枚でもその光景を撮ろうと、全国大会に駆り出されていたはずの新聞部の乱入があったらしいが……。


実際、空手部は空手部独自で練習をした方がよかったのではないかと思うくらいだった。もう二十年以上、高校空手界で『強豪』と呼ばれている空手部だから――だからむしろ一緒に合宿をして、逆に僕達陸上部が迷惑をかけているのではないかと思うくらいだった。


迷惑。


まあ空手部自体が先に僕達と一緒に合宿をするといっていたから、そんな僕の表現はおかしいのかもしれない。


そんなわけで、合宿一日目を終えた僕達だった。


事実、ここで何かを表すわけではない。はっきりいって練習内容を語るほどに、僕の体力と精神力は残ってない。


ただ僕の中で、この気持ちを誰かに伝えたいがために一章をつい費やしてしまった。


疲れた――ただそれだけを伝えたかったがためにこうして現実世界でない――僕の心境の中だけでモノローグを語ったのだ。何とも迷惑な話であるが、勘弁してほしい。 


まあ考えてみれば、ここらでどのような合宿をしたのかという説明もしておけば、もしかすれば僕以外の生徒でも見る価値はあるのかもしれない。


噂では、あのスタミナ旺盛の空手部さえ『疲れた』といった生徒もいるらしいのだから、話しても損や著作権なんてものは皆無だろう。


午前中。


といっても、本当のところ一日中空手部と合同練習ではなかった。互いの監督や三年生が相談して決めたことだそうだ。あまり一緒に練習しても外で走るぐらいのことだろうからという理由で、午前中は各部の練習になった。


結局合同練習は走り込みだけではなかったが、しかしそれでも長時間合同練習しない方がいいというのには、各監督も部長も同意した。その一番の理由は人数だった。


人数。


単刀直入――いやはっきりいってしまえば三部活合同で合宿をすると人数が多すぎるのだ。空手部は四十三人、剣道部三十二人、陸上部四十人。それぐらいの人数が一斉に揃ってしまうと――総勢約百二十人が揃いに揃ってしまうと走り込み練習というよりは、むしろ良くある長距離の陸上大会になってしまうのだ。


それを実行してしまうと、必ず気が抜けてしまう部員が出てくるということから、三部活合同合宿の一斉練習はほぼ止めになったのだ。


だからといって合同合宿の意味を殺すわけにもいかなかった。剣道部と陸上部は昔から何度も助けあって、今年念願の合宿をできるようになったのだ。更に空手部という強豪部活動もきてしまったが――それでも合同合宿の目的を忘れ、潰すわけにはいかなかった。


部活動同士で切磋琢磨。


部活が違えど人間関係を持て。


だから監督や三年生は考えて、やっとの思いで考えたのが二部活ずつ合同練習をするということだった。


一日目、空手部陸上部。


二日目、空手部剣道部。


三日目、剣道部陸上部。


三部活合同でやりたかった部員もいただろうが――しかしこれが精一杯の結果だったそうだ。その日に該当しない部活動は基本的に各自で部活動練習。だから今日は剣道部が個人で――個部で練習だった。


つまり今日は陸上部と空手部で合同練習だ。そうはいっても、最初にいったように終日練習というわけではなかった。午前中が個々で練習。実際の合同練習は午後からだった。一時から始まり五時に終わった。合計四時間。


その四時間は僕達陸上部にとって一日中やっているような――ずっと終わらないエンドレスな練習のような、そんなものを感じさせた。


練習内容をざっくり説明してしまえば――と本当はいいたいところで、誰かにこの話をきいてほしいという僕の思いがあるのだが、しかしここではあえて伏せておこう。この練習内容を誰かにきかれて同じようなことをされてしまったら、体が持たないと断言できるからだ。


強豪空手部との合同練習だったのだから、普通の人がやってしまえば体を壊すか――筋肉痛の大嵐だろう。陸上部の部員もその嵐に巻き込まれそうになったほどなのだ。


とか。


そんな感じで、吉衣高校空手部陸上部の合同練習は終わった。実際これから後三日ほどあるわけだが、明日は空手部と剣道部との合同練習なので陸上部は終日個別での練習である。


後三日。


僕が剣道部にいえることがあればただ一つのことだろう。僕達が空手部との練習について、たった一つ剣道部に声をかけることができるのなら、この言葉しかないだろう。


だから僕はあえて口には出さないが、語り口ではしっかり剣道部にいわせてもらおう。


剣道部員、部活辞めるなよ。



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