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終部

最後です。

長くかかりすいませんがやっと終わりです。

大した文字数でもないのに何で伸びたのかは想像してください。これにエピローグ(でいいんだよね)を付けて終わらせます。

最後まで読んでくださった方ありがとうございます。

 

彼女の病気は彼女の本当の父親によって引き起こされたものだ。


彼女の恐怖対象は白いシャツを着た父親に向けられたものであり、彼女に暴力をふるっていた父親は交通事故によってあっけなく死んだ。明確な恐怖対象がいなくなったため、ただ白い服を着ている男の人が彼女の恐怖対象となった。


人間は憎む対象がいないとそこに代替の存在を用意するしかない。だから、彼女が特別弱い人間なんだとは思わない。僕が思うのは誰かが彼女のそばに立って彼女自身が父親に反逆する手伝いさえすれば乗り越えられたと考えるだけだ。

真に彼女が不幸なのは克服するために存在しなければならない存在がもはやいないことであり、彼女が心安らかになるのは死んでからだろうと思う。


その日は朝から不安定な天気だった。見えそうでもあったし見えないかもしれなかった。雨が降る予報が出ていたしきっと見えないだろうとは寝ぼけた頭で考えていた。

考えたところで変わるわけではなかったけれども、姉が見たそうにしていたから単純に晴れるといいなぁと考えていた。別に太陽が隠れようが、隣の家のおじいちゃんがくしゃみをしようが僕の生活に影響が出るものではなかったからだ。


ただ、本当にただ考えていたのは月食では馬がたくさん死ぬというから日食では何が死ぬんだろうとは考えていた。




その日は水曜日だった。大学とは便利なもので授業なんて言うものは全部でなくても文句は言われない。全部出ている奴は逆に教授から馬鹿なんじゃないかと思われる。意外と教授も大学時代遊びほうけていた奴が多い。

コヒーを飲みながら雨が降りそうだなぁと外を眺めていたら電話が鳴った。講義中ではなかったのでマナーを切っていたから軽やかなメロディが流れ出した。雨にぬれてもなんて曲だったからこのぐずついた天気ならいっそのこと雨が降ってしまえばいいと思った。


この話の流れからいい話だとは誰も思うまい。

これは起こるべくして起きたことだ。我々は悪くないし、そして、彼女が悪いわけでもない。ただみんなが責任をとらねばならないことは確かだ


「サングラスをかけて丘に行ったって!?」

「ええ、今日皆既日食でしょ、それを見に行ったんじゃないかしら?雨の日だからあんまり人はある人はいないと思うけど」

「要するに大学サボって見てこいと?」

「どうせ出てないんでしょう。ちょっと手が離せないのよ」

「どうせ、そこまで大学から遠くないんだし・・・。悪いんだけどお願いよ。あの子あなたには心を開いているみたいだしね」

「そんなこと言われても・・・」

「ごめんなさい。でもあの子は私を嫌っているのを知っているでしょう?あんな男と結婚してた私を」

「そんなこと知るもんか。先に謝ればとおもtt・・・。はぁ、見てくるよ。つかれた」

「楽になってもいいのよ・・・」ブチっ


丘というのは平地にできているわが町で唯一高台になっているところだ。大学側から見ればなだらかではあるが反対側はちょっとした崖になっている。少し離れているがそれでも二階の窓から見えることに変わりはない。雨の日は足場が不安定になり少し土が崩れてくるなんて話もあるみたいだから、まだ雨は降りだしていないけど今日みたいな日は危険である。が、それは子供を遠ざける方便だということも理解していた。


まぁ察しはつくと思うし僕としても隠すつもりはない。

彼女はその崖から飛び降りた。だが、近くから見ていた僕にとってはそのようにきれいなものではなかった。

まっすぐ下に落ち込んでいる崖なんてものは滅多にない。

傾斜を彼女は転がり落ちたのだ。転がり落ちる途中で頭を石に叩き付けあたりに血を振りまいた。最後まで彼女はみっともなく死んだ。そのような結末があることを彼女に伝えられなかったことが我々の責任であろう。

だが何も言うまい。ある種の後悔は声に出してしまうと嘘になると言った作家を私は知っている。さて彼女のみっともなさを僕は自分の恥部をさらすがごとく彼女の醜い死にざまをぶちまけようではないか。


「やっぱり、来たのね。そして、やっぱり来なかった」

「自分が蒔いた種だろう。どっちにしても」

「そうね。でもお母さんはそうしていたほうが楽なのよ」

「小説とかでありそうな話だな。まったくつまらん」

「そういえばあなたは私のことなんて呼んでいたかしら。さっきから思い出そうとしているのだけど、どうしても思い出せないのよね」

「そうやっていつも話を返る」

「あら、あなたこそ」

「それよりなんでこんなところに来たんだよ」

「日食よ。日食を見れば人生が変わると思ったのよ。太陽を月が呑み込む。そんなありえないことが起きるのよ?あなたは何も感じないの?どうして感じないでいられるの?」

「ただ馬が多く死んでいくだけの日に何を感じればいいのか僕にはわからないね。まぁ大体君がしようと思っていることはわかっている。きっと君のお母さんもさ」

「あの母親はあなたにあげるわよ。まぁそのとおりよ。日食が見えたら生まれ変わったように生きてみよう。見えなかったらこのまま価値もなく生きるのはやめようと思っていたところ」

「まったく、馬鹿だなぁ。物事にはそこまでの意味はないよ。すべて後付なんだ。法則、決まり事、それらの言葉は全てこじつけさ。物事を象徴としてみていたら命がいくつあっても足りないよ。月食の日だって馬は死ぬさ」

「そう、馬に紛れてバカな私が死んでいくだけの日よ」

「本当に一人で死ねるのか?満足に生きることすらできないのに」

「なに?背中でも押してくれるの?とても魅力的な相談ね。でもお願いはもっと簡単なものにしてあげるわ。死んでから目を開けていたら目蓋を下してくれたらうれしいわ」


彼女は転がり落ちていった。下まで降りて行ったあと、彼女に言われたことを実行するために崖の下へ別ルートで降りて行った。


満足に生きられないものは死に切ることすらできない。だから僕は崖の途中にあった岩で彼女の頭をたたき割った。

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