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【江戸時代】琵琶湖運河、開通ス  作者: 雨宮 徹


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第7話 重臣たちへの経済プレゼン

 渡辺崋山による絵画ができあがると――彼のこだわりで思ったより時間がかかったが――例の金で動くだろう重臣にこう伝えた。「殿への謁見の準備ができた」と。しかし、「計画について、我々が先に詳細を聞く」との返事だった。間違いない、計画が成功すると分かれば、自らの功績として藩主に報告をあげるつもりだ。





「両先生のおかげで、重臣たちへ計画の全容を話す機会を得ました。ありがとうございます」



 城の廊下を三人でゆっくりと歩きながら謝辞を述べる。初めて城内に入ったが、前世で見たドラマなどのイメージは完全に壊された。あれはあれでリアリティがあったが、現物には敵わない。



「何を言うか。貴殿の知識と発想がなければ、この場が設けられることもなかった。そして、蘭学以外の知識を得ることも。こちらこそ、礼を言いたい」

「長英の言う通り。計画のおかげで、最高傑作を描くことができた。鎖国の影響で、絵画を他国に披露できる機会がないのだけが悔やまれる」



 どうやら二人とも琵琶湖運河計画について、違った観点から影響を受けたらしい。崋山の夢については、叶えることができるかもしれない。日本が経済大国になり、先進国の技術を知りたいと外国人がやってくれば。それならば、開国とは違うため幕府も容認するだろう。だが、まずは目の前のプレゼンに集中する必要がある。



「着いたぞ」



 長英の言葉で我に返る。



 思いのほか狭い部屋だった。大規模な部屋を確保できなかったか、あるいはそこまでする必要がないと判断されたか。おそらく後者だろう。半信半疑な重臣たちは、こっそりと会談をするつもりらしい。その考えの甘さをぶち壊してみせる。



「よくぞ参った。さて、貴殿らの『琵琶湖運河計画』について、詳細を聞かせてもらう」

「手短に頼むぞ。我らは忙しいのでな」



 深呼吸をする。



「結論から申し上げます。我が藩は江戸の次に栄えます」



 俺の言葉で部屋中にどよめきが広がる。



「たわ言を」

「江戸の次に栄えているのは大坂ではないか」

「その通り」




 収集がつかなくなる前に終わらせるか。崋山に合図をすると、絵画を覆っていた布切れを外す。



「なんだ、これは」

「琵琶湖から二本の運河が伸びている。これが、お前たちの言う『琵琶湖運河計画』か」

「計画などどうでもいい。この絵は間違いなく日本の最高傑作。売れば、我が藩の懐事情は大きく変わる」



 一名、ばかげたことを言っているが、今はそれどころではない。



「我々の計画について、詳細を話します。琵琶湖を起点に、南北に運河を造ります。これにより、いくつかの経済効果が生まれます。鮮度が命の魚などは、今の流通網では売る場所が限られています。この運河ができることで、その問題が解消されます」



 重臣の一人が眉をひそめて「それは、我が藩の利益にならないはずだ」と異議を唱える。



「ええ、その通りです。ですが、関所を設ければいかがでしょうか。船が通行するたびに、我が藩の財政は改善します」

「なるほど、理屈ではそうなる。しかし、懸念点がある。運河を造るのにも金がいる。その金はどこから調達するのだ!」



 やはり、そうきたか。だが、こちらにも武器がある。俺の知識チートが。



「ご心配無用です。我々は、金は借りません。 なぜなら、藩が造るのは運河だけではないからです。『運河でしか使えない、特別な紙幣』、すなわち、『将来の通行料を前借りする権利証』を造るのです」

「何やら難しい話になってきたぞ。分かりやすく説明しろ」



 俺は、別で用意していた簡易的な図式を披露する。経済がいかに回るかを説明するための紙を。



「仕組みは単純です。藩が紙幣を発行し、この紙幣で民に賃金を払います。民は潤い、その紙幣で藩の中で米や品物を買います。商人は、この紙幣をどう使うか? 将来、運河が完成した暁には、船を通すための通行料として、藩に支払うことができるのです」



 噛み砕いて循環構造を説明したが、まだピンと来ていないらしい。追い打ちをかけるか。



「つまり、藩の紙幣は、藩の金庫から出て、民の懐を巡り、そして運河の通行料として藩の金庫へ戻ってきます。我々は金を使わずに、民を豊かにし、運河を造り、そして通行料という未来の利益を、担保にするのです。これに勝る金策があるでしょうか!」



 藩校の一件から関わっていた重臣は、この政策の生み出す莫大な利益に気づいたらしい。顔が輝いている。おそらく、頭の中では「我々の収入も上がるに違いない」と考えているのだろう。



「計画の生み出す経済効果の説明を終わります。あとは、あなたたちが判断するだけ。ご決断を」



 重臣の判断は早かった。「この話、殿の耳に入れる価値あり」と。俺の功績でなくなるのは納得いかないが、これも彦根を経済的に潤すため。そして、不自由なく暮らすため。



「殿はお忙しい。短い時間で説明できるように準備せよ。我々への説明よりも簡潔に。よいな?」

「分かりました。そのようにいたします」



 これ以上、短くプレゼンするのは難しい。だが、秘策がある。俺の知識チート、舐めるなよ!

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