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【江戸時代】琵琶湖運河、開通ス  作者: 雨宮 徹


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第36話 東アジア経済圏構想

 江戸の大火から数か月。彦根藩を中心に日本経済は再び上昇し、栄華を極めていた。その成長ぶりは凄まじく、経済大国は西のイギリス、東の日本と言われるほどだった。



「義春殿、江戸の復興のめどはつきつつあります。次は、どのような一手を?」



 佐吉の問いに、俺は窓の外を流れる雲を眺めながら答えた。江戸の街には、再建を祝う槌音が響き、運河を通じて運び込まれた資材が山をなしている。



「佐吉様、そう焦る必要はない。だが、すでに考えはある。日本中心にを東アジア経済圏をつくり上げる」

「なんと! しかし、日本は島国。いかにして、成し遂げるおつもりで……?」

「清国を足掛かりにする。あそこは、我が国の拠点だったが、今はほとんどの地域が手中にある。イギリスは撤退した。あそこを起点に大日本を作る」



 東アジア経済圏。これは、太平洋戦争の知識応用だ。あの時は、物理的に占領することで成し遂げようとしたが、失敗に終わった。それならば、経済的に掌握すればいい。そして、清国の特産品の輸出もすれば、日本はさらに成長する。



「そうなると、ますます琵琶湖運河の重要性が増しますな。伊勢湾の道筋が早く開通すればいいのだが……」



 佐吉は、うーんと唸り、何か案をひねり出そうとしているようだ。



「心配無用。伊勢湾までの水路が開通する前に、着手する新規事業があります。それを進めれば、雇用も増え、民の懐は温まる。そして、財政も改善、いや、さらに成長します」

「まだ、新しい構想があると?」



 佐吉は驚きのあまりに、目が飛び出そうな反応だ。



 今の時代、つまり、文政12年(西暦1829年)なら、欧米で蒸気機関車の発明が始まっている。これを使わない手はない。それに、イギリスに対してシールド工法の特許争いで勝利している。



「近いうちに、彦根の優秀な人物を欧米の視察へ送り出します」

「ちょっと待たれよ。オランダならまだしも、それ以外の国に行くのは将軍様の許可が必須。鎖国中の今、将軍様が首を縦に振るはずがない!」



 普通に考えればそうかもしれない。だが、俺には秘策がある。



 佐吉に近づき、声を潜めた。



「佐吉様。将軍様に『世界の王族への贈答』を提案する。贈るのは、恐竜の骨だ」

「な、竜骨をですか? あれは薬として民を落ち着かせた貴重な品……」



 佐吉は戸惑いを隠せない。



「権威として、その価値はさらに高まる。今、欧州では、シーボルトが持ち帰った竜骨の写生図が『日本の奇跡』として持て囃されている。この機を逃してはならない。本物の竜骨の一部を、将軍様からの親書付きの贈答品として、オランダ国王やイギリス国王に贈るのだ」

「将軍様が異国の王に……。しかし、鎖国中にそのような外交は許されません」

「だからこそ、名分が必要だ。竜骨を安全に届け、そして『先方からの感謝の礼状と、その返礼としての学術的な知見』を受け取るためという名目で、将軍直属の使者を派遣するのだ。使節団は、外交団であり、その中にこそ蒸気機関を理解できる優秀な彦根の技術者を紛れ込ませる」



 佐吉は息を飲んだ。



「それは……。将軍様の国際的な権威を高め、しかも技術視察も同時に行うという、一石二鳥の巧妙な計略。将軍様も、『鎖国を破った』という誹りを受けることなく、世界の頂点に立つ名誉を得られるとあれば、首を縦に振らざるを得ないでしょう!」



 使節団に潜り込ませるのは、高野長英が適任だろう。あの男の知性は、もはやこの時代の枠を超えている。複雑な歯車の噛み合わせも、蒸気の圧力計算も、彼ならば瞬時に本質を見抜くはずだ。。井伊直亮に初めてプレゼンした時の計画が、今、動き始める。

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