素晴らしき菊池の思い出
「菊池祭り」参加作品です。
以前にも書いたことがあるが、私は大学時代自転車部に所属していた。この自転車部、レースとかに参加する人もいないことはないのだが、メインはツーリングだった。
大学が東北地方にあったため、日帰りはもちろん、泊を伴うツーリングでも、旅する場所は東北・北海道が中心となる。しかし、例外もあり、特に春合宿は『青春18切符』を駆使して関東や東海、近畿、四国辺りまで足を伸ばしていた。
※理由? 北海道・東北では、雪が残っている(と言うか普通に降ることもw)ので、まともに自転車に乗ることが出来ないからだ。なお『冬合宿』は、駅まで自転車を運ぶこと自体が、苦行or他人様への迷惑行為なので、そもそもしていない。
また、基本的に拘束が緩い部活であったため、部活の合宿等に参加せず、自分でコースを決めて走る人も多かった。何を隠そう私自身がそれで、例えば、登山に興味を持てなかった私は、登山込みの信州夏合宿には参加せず、代わりに『自転車日本横断』(九州の西端から北海道の東端まで自転車で走る)とかをしていたこともある。
そんな風に日本各地を旅していると、「あ、将来この街に住みたい!」と思える街に出会うことが時々ある。
その条件は人によって違うのだろうが、私の場合は次の3点が揃っていることが必須であった。
①山が近く清流が流れる街であること
②その地方の主要都市であること
③近くに良い温泉が湧いていること
最初の『山紫水明の地』は多くの人が憧れるポイントであると思うので、説明はしない。
次の『地方の主要都市』は疑問に思う方が多いかもしれない。説明すると地方の主要都市では、大抵のものを街中だけで入手することが可能なのだ。詳しく言えば、大都市圏の10万都市と、地方の10万都市(※ただし平成の大合併以前)は、街の持つポテンシャルがそもそも違う。大都市圏の10万都市は人口10万人の街でしかないが、地方の10万都市は、周辺の町村を抱え込んだ大きな商圏を持っている。だから、下手をすると、東京近郊のベッドタウンよりも、こういった地方の主要都市の方が、商品の品揃えが良かったりすることもざらなのだ。
最後の『温泉』は完全に私個人の好みの問題だが、『その気になれば、いつでも名湯に入れる生活』。これも、多くの人が憧れるのではないだろうか?
そんな条件の揃った街の一つが、これから述べる熊本県菊池市である。
私が菊池市を訪れたのは、先程述べた『自転車日本横断』の途中だった。
この旅、出発地は本土最西端、長崎県の神崎鼻。ゴールは本土最東端、北海道の納沙布岬である。地図で確認すればわかるが、この2か所を結ぶとき、普通、熊本県はルートに入れない。
しかし、九州を訪れるのが人生で初めてだった私は、せっかく来たのだからと、世界最大級のカルデラとして有名な阿蘇を見に行くことにした。阿蘇に入るためのルートはいくつかあったのだが、長崎(※佐世保)から向かうとなると、熊本市方面からのアクセスは距離的に苦しい。そんな中、発見したのが『菊池・阿蘇有料道路』(※現在は無料)ルートだった。
さて、7月30日、曇り空の下、午前8時に福岡県みやま市の宿を出発した私が、40km超を走破して菊池市街に入ったころ、時計は午前10時30分を指していた。
この時には、残念ながら(?)空は完全なる晴天に変わっていたため、暑さと渇きで精神的な余裕はあまり無かったのだが、街自体の雰囲気が好ましいものであったことは覚えている。
こぢんまりとしていながら、あちこちに活気が感じられ、必要以上にごみごみしていない街。そこかしこに見られる『温泉』の看板。太平記でお馴染みの菊池一族の根拠地『菊池城(隈府城)』の跡に造られた『菊池公園』。
そして、市街地を抜けると現れた『菊池・阿蘇有料道路』。これは10km強で800mも登るというとんでもない激坂で、当時の記録を読み返すと、登っている途中でボトルの水が尽きかけ、死ぬほど辛かったらしい。
しかし、今、思い出すのは、有料道路に並行して流れる『菊池渓谷』脇で、しばしの休息を取ったこと。あの清らかな流れと、マイナスイオンたっぷりの阿蘇外輪山の原生林の美しさは、格別だった。
この『菊池・阿蘇道路』のクライマックスは、何と言っても外輪山の頂である。何を隠そう、この外輪山山頂の風景は、自転車旅行をする中で体験した“私のベストロケーション”なのだ。
ネタバレしてしまうと面白みが失せるので、ここの風景については詳しくは書かない。一言だけ言わせてもらうと、私はここで『異世界』を見た!
この外輪山のビューポイントは、阿蘇市の領域になる。だから、厳密には菊池市の話ではない。しかし、私が受けた衝撃は、菊池市から山に入らなければ、決して味わうことが出来なかったのは確実だ。だから、あえて取り上げた。
皆さんも初めて阿蘇を訪れる際には、ぜひ菊池側からアプローチをしていただきたい。ルート的にはポピュラーとは言えないかもしれないが、面倒なことをするだけの価値があるのは間違いない。これは、経験者である私が保証する。
このような素晴らしさを持った街、菊池。皆さんも一度、菊池を訪れてみてはいかがだろうか?
さて、こんなに熱く語っておいて何だが、実はあの時以来、私が菊池市を訪れたことはない。
だからこそ、『もう一度行きたい』という願望と、『美しい想い出のままで残したい』という願望が常にせめぎ合って止まないのだ。
『主人公』が『菊池』か? と言うと微妙ですが、少なくともメインは『菊池』なんで投稿してみました。※「菊池祭り」へは、広告の下の「武者イラスト」(ランキングタグ)をクリック!