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千客万来(センキャクバンライ)  作者: つかばアオ
_2の3 真実のすがた
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第17章「繋ぐ決戦」_3

 負けられない。そんな彼らの争いは一口に言うと、どちらか一方だけに偏る内容となる。


 生きようとする。白鈴を含め彼らは、ここまで幾度も強大な鬼たちと衝突してきた、いわば「つわもの揃い」。幽鬼で悩んでいた国で、多くの困難を乗り越えてきた者たちである。茨の道を辿りに辿り、一度は散り散りになれど、生半可な気持ちでここにいるわけではない。


 しかしながら対するは、屋水の神『屋水姫』。大昔、この大湊の国で、伝説として語られてきた存在だ。その少女は美しく、そして刀を振るえた。鬼をも魅了した女。神となった女。不明な点も多いが、すべて語られてきた言い伝えが正しければ、大鳥の祠にいる化け物だろうとその力に劣ることなく、武勇に優れていた。


 最後は人が盛った毒にやられたとはいえ、少したりとも侮ってはいけない。




 白鈴はシュリの体に憑依し、屋水の巫女の肉体で埋火蝶陰影を振るう。


 彼女の「力」は以前よりも増している。


 だがそれが、相手に有利に働くかは別である。


「手の内は知っている」


 白鈴の技は、有効な手段としては遠く及ばなかった。どれだけ彼女に実力があろうと――相手は屋水姫。


 考え方が異なろうと、白鈴も屋水姫。


 鹿角。そう易々と、その技――振り下ろした一撃は――受け止められるものではない。


 知っているから、などと言った単純な理由では説明ができない。


「力」だけでいえば、巫女の肉体を得た白鈴よりも、「屋水姫のほうが強い」としても。


 屋水姫には、白鈴の攻撃がどれも大きな痛手とはならなかった。


 その差は歴然としている。仲間たちでは言わずもがな、ただし彼らも簡単にやられるはずもなく。


「まだ立ち上がるか」


 屋水姫は感心していた。ここまで彼らは合間に与えた危機を乗り切っている。


 心を一つにして、彼らは抗う。


 白鈴は戦闘を続けるが。埋火蝶――。


「言ったはずだ。手の内は知っている。お前では、私には勝てない」


 いくら試そうが証明するかの如く、どれも通用しなかった。しかし。


「一人じゃない。シュリもいる」


「同じことだ」






 場面を変える。


 言うまでもなく、戦いは大鳥の祠だけで起きているわけではない。「カシワ」では変わらず、鬼の群れが町を襲っている。代表シノハラとそしてカシワの住人は、ノボリから来た侍たちと協力して脅威と立ち向かっている。


 主人不在のお城、山の上にある「大湊城」でもそうだ。東姫は持って生まれた気質からして隠れた生き方を好まなかった。城下町の住人を避難させては、彼らと共に身の安全を確保する。力を持たぬ私たちは、一人ではどうすることもできない。逃げようとすれば、誰が優先されるのかは自ずと答えが出る。タマキはただ信念に従う。




 この国でも、鬼と戦えるものはそう多くない。もう虫の息と考えようか。想像よりも踏み止まっていると考えるか。




 星のない夜に、「屋水」ではというと。


 ここでもお社には避難した者たちが集まっていた。ほかに、彼らがどこに逃げよう。この空の下、安全であろう場所など、どこにあろうか。


 お社に、神はいない。彼らが信じる神は、お社を留守にしている。


 本殿には代わりに可憐な巫女がいた。


 屋水の巫女リュウはこの時も眠っている。縮んだ体、どれだけ願おうと眺めようと、目覚める雰囲気はない。


 ここが唯一安全であろう。残念ながら、そんなわけがなく。


 境内には、男がいた。白髪の老人が一人、彼は刀を腰に差し、本殿の前で時を待っている。


「来たか」


 彼は気配を感じた。大湊六代火門忠文、人々を背に戦いにいざ赴く。


 森に姿を現すは、巨大な骸骨。鬼『がしゃどくろ』。死者たちのその怨念たるや、人では勝ち目がない。


 軽視できない戦力だ。なぜ、こんな時に屋水を襲うのか。屋水姫が目的を果たすための最短の道は、祠で『大湊の化身』を復活させることである。


 屋水姫は勝利を徹底した。即ちこの先、障害となるものを排除しようとした。


 はじめ彼女は妹であるシュリを手に入れたかった。手元に置くことで、それは確実へと近付く。気持ちもいくぶん晴れる。


 しかし、その望みは叶わなかった。枯れ谷の巫女アオバに阻まれ、ようやく居場所を突き止めた頃には、なにをしても手遅れとなる。


 衰弱している。死んでしまうかもしれない。生きてほしい。このさいリュウでも構わない。リュウが何もしないとも限らない。


 そういった思惑があるなかでとなる。勝てた者がいない鬼『がしゃどくろ』を相手に、大湊忠文は一人で戦おうとしている。


 彼の元に――もう一人男がやってくる。


 嵐風門藤十郎。これは彼の念願でもあった。


「聞いてはいたが、これがそうか」


 神様不在の屋水、ここで終わりのはずはなく。


「勝負に口などいらん」

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