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千客万来(センキャクバンライ)  作者: つかばアオ
_2の3 真実のすがた
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第17章「繋ぐ決戦」_2

 白鈴はふと空に目をやる。異変を感じた。


「なに? 何か見えた」ヒグルも気付く。


 上井は目を凝らす。「雷、ではないな。なんだ?」


 数匹の鬼が飛んでいる。星のない夜に、『何か』が走ったように見えた。


「血管、みたいかも?」といなびは呟く。


「血管かもな」糸七は頷いた。


「お前らな、よくも。怖えこというなよ。段々とそう思えてきたじゃねえか」


「だってええ」


「雨が降ってるな。黒い雨だ」


 白鈴は次に起きる出来事を知っている。


 彼らは思いのほか落ち着いていた。騒ぐ気にはならなかった。


「一度負けたぐらいでなんだ。辛くもねえ戦いなんてあるもんかよ。ほんとにつれえ時ってのは、何もできなくなった時だ」


 出発直前になると、いなびは質問する。これから戦おうとしている相手は屋水にいる神様であり。


「白鈴。はっきり言って今も一緒とは思えないけど、大鳥の祠にいたアレは、屋水姫は、白鈴なんだよね?」


「そうだ」


「なら、どうにか説得はできないの?」


「彼女は、私ではあるが。もう一人の私だが」


 それが難しいのは知っている。


「白鈴は『人でありたい』と望んでいた。彼女は『鬼だ』と口にする。そこだけでも違いがある」


 ヒグルはゆっくり両者の差異を述べた。それから考えても、彼女は白鈴と同じ「答え」が出てしまう。


 言葉では解決できないのか。


「たしかにそうだね。ごめん、変なこと聞いて」


「いいや。こちらこそすまない。止めるしか、方法はない」






「共に戦えて、誇りに思う」


 彼らだけではない。この国に住む者も戦っている。彼らの旅はいよいよ最終局面を迎える。人々の願いを背負いながら、大鳥の祠を目指した。道中は勿論のこと、戦いは避けられない。


 以前よりも草木がその数を減らし、ほとんどが枯れている。目的地に近付くと、大地は荒れており、カシワのように変貌していた。


 大鳥の祠もその形を変える。


「ここか」


「いよいよだな」


「この先にやつがいる」


 彼らは国の命運を分ける戦場に到着し、それぞれが思い思いの言葉を口にした。直に本格的な冬が来る。それを前にして鬼たちに囲まれる未来を望まない。


 言葉にすることで、彼らは先を進んだ。


 大鳥の祠、中心には男が立っていた。


「うん? まさか?」とヒグルは言う。


「じゃねえ。屋水姫だな」


 彼女は大湊真道の姿でそこにいた。『未だ大鳥の祠で蓋を開けている。』白鈴が言ったとおりだ。


 嫌な気配は増している。歪な空間。足音が聞こえる。


「凝りもせず戻って来たか」


「おうよ。俺たちは戻って来たぜ。喜べよな」


「来ないと思ってたの? それは変でしょ」


「愚かな。じっとしていればいいものを。お前たちが勝てると思っているのか」


「負けられないんだ」糸七は槍を強く握る。「まだ終わっていないから」


「お前も。自身のことを、理解したのではないか? 少しは私を受け入れる気になったか」


 白鈴は前に出る。「なぜ、国を亡ぼそうとする?」


 問われようと、屋水姫は黙る。二人は互いに見つめ合った。


「そうだな。話しておいてもいいのだろう。もともと私に、この国を亡ぼそうなど、そんな気などなかった」


 彼女は何もない空間を見詰めている。


「それならどうして」とヒグルは呟く。


「お前は、私だ。過去の私、と言おうか。しかし考えが変わった。私が、私となった時に。そう、あの女は、可能な限り『鬼』を集めたかった」


「あの女?」


「柄木田か」白鈴にはそうとしか思えない。


「大湊の国を蔓延る、忌まわしき鬼たちを集める。私を餌として。あの女は大量の鬼を一箇所にまとめて潰す気だった」


「餌?」


「鬼を集めて、潰す」


「なんともバカげた計画だが、やつは真剣だった。それが『最善』であり、それが『可能だ』と信じていた。最後に、あの男、大湊真道に、この私を斬らせるつもりだった」


「火門は、生きているのか?」


「生きている」


「どこにいる?」


「答える義理はない。どうせ死ぬ」


 沈黙が続くと、屋水姫は静かに話を続ける。


「私は望んだとおり動いてやった。鬼を集めて。従えさせて。支配した。いうことの聞かないやつは、どちらが上であるかを叩きこんだ。従順とまでいかないやつには手を焼いた。それが、皆のためになると考え。だが疑問に思わないか? どうして私が思い通りに動かねばならん? 死なねばならない? 私が、叶えなければならない? 私が何かしたのか? お前たちは、『何か』したのか?」


「それは」


「実際、あの女の腹の底は知らない。大鳥の祠に目を付けた私を、まったく止めようとはしなかった。あの女の望むかたちとは真逆なことをやっているつもりだったが、それどころかただただ関心していた」


「だから殺したのか」


「いいや。微塵も殺す気にもなれなかったが。あの女は死んだようだな」


「東姫を守ってね」


 糸七は問う。「屋水姫。人が憎いのか」


「憎い」


 白鈴は念のため問う。「今ならまだ間に合う。やめる気はあるか」


「……ないな」


「それならしかたない。全力でいかせてもらうぞ」


「ああ、来い。相容れぬ者同士だ。決着をつけよう」


 屋水姫は刀を取り出した。彼女は大湊真道の姿で戦う。

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