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千客万来(センキャクバンライ)  作者: つかばアオ
_2の3 真実のすがた
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第17章「繋ぐ決戦」_1

 ・17



 国が操っていたであろうはずの鬼が進撃してきた大湊城。枯れ谷の巫女アオバによる要求を受けて、急ぎ向かった白鈴たち。彼らの到着でなんとか東姫は一命を取り留める。城も城下町も含めて、どこもかしこも混乱が起きていた。


 東姫ことタマキは、護衛のミドリ共に安全な場所へと移動した。危機が去ったわけではない。鬼はまた襲ってくるだろう。そうすべきである。


 城内で白鈴たちは、改めてほかの仲間たちとの集合を実現する。


 雲残を追った上井といなび彼らもいる。一人も欠けていない。


 鈴は取り返せなかった。しかしそこは問題ない。カシワの鈴はアオバが持っていた。はじめからあの男に奪われていたわけではなかった。


「タマキさん」ヒグルは間を置くと言い直す。「まさか東姫のお腹に子供がいたなんて」


 糸七は呟く。「驚いた」


「ってことは、火門は生きてる?」


 いなびはそれが当然であろうと考える。


 白鈴はすんなりとは同意できなかった。


「どうだろうな。二人が最後に会ったのはずいぶん前のことらしい。ヌエであるミドリも火門の居場所までは知らないと言っていた。生死のほどは判らない」


「国がこんな状況になっても、姿を見せねえってことは、まじで屋水姫に殺されたんじゃねえか?」


 そう簡単に殺されるようなものではないとは思いたい。大湊の実力は、若い頃の祖父に劣らないと聞く。ヌエがそれを許すとも思えない。とはいえ、何があってもおかしくない。


 決定的と言えるのは、火門とタマキは新たな命を授かった。


 民の間では、幽鬼溢れる国で、心から待ち望んでいた者もいる。


「影武者か。なるほどな」上井は事情を聞いて、しばらくのあいだ黙っていた。ようやく口を開く。「父親を戦で亡くし、次男は鬼と戦って死んだ。その後間もなくして、三男は毒殺。祖父は、体調を崩されて……。恋い慕っていた、理解があったという、屋水にいた女性も死んだ」


「たしか、母親は病死、だったよね?」


「ああ。戦争よりも前の話にはなるがな」


「笑えねえ話だな。これで本人まで死んでたとしたら」


「手薄となった城は、東姫が攻撃されるとは考えていなかったのか?」


 上井は疑問に思う。守らねばならないはずだと。


「屋水姫は柄木田の指示で動いていたらしいが。聞く感じそういうわけでもないそうだ」


 白鈴はミドリから聞いていた。『彼女』は大湊真道の影武者の役割を担っていた。『彼女』が鬼を操っていた。


 柄木田の死を考えると、東姫殺害は柄木田が指示したわけではないと見て取れる。


「手に負えなくなったんだろ」


「カシワと同じ。みんな、街の人たちを助けてるんだと思う。さっきも東姫は、城下町の人々の避難が先だって言ってたから」


「陽動だろう。先程聞いてきた」糸七は言う。「城下にいた鬼は、急激にその数を減らしている」


 殺害に失敗したわけだ。急ぐ理由が無いのだとしたら、別の方法にしたと考えられる。


「ヒグル。柄木田は、母親なのか?」


「黙っててごめんなさい」


「えっ。柄木田とヒグル。全然似てないよ?」


「別大陸出身、ではなかったか?」糸七も驚いている。


「うん。あの人とは、血は繋がってない。私も子供の頃、白鈴と一緒、ここから遠い大陸の、海の見える施設にいて。そこで魔女の力を与えられ、魔法使いとなった私は、用済みとしてあの人に捨てられた」


「なんで?」いなびは率直に問う。


「なんで? 魔法使いが生まれる仕組みについて調べていたみたい。だから、魔法使いになった私は用済み。いらなかったの」


「ヒグルが、この国にいるのは」


「そう。あの人を追いかけてきた。一人で生きてきて。忘れられなくて。でも、忘れられそうになった頃になって、またあの人の名前を聞いて」


 彼女は複雑な気持ちで立っていた。追いかけてきた。悲しみはある。しかし、子供だった頃よりも感情の度合いが弱いような。虚しさを感じる。


 会うことで、私はどうしたかったのか。


 あの日の私は。白鈴が『柄木田五言がいるという施設』から逃げてきたと知って。


 彼女は抜け穴を出る直前に、「覚えててくれたんだ」と呟いていた。


「私の話はおしまい。それよりも大事なことがあるよね」


「いいんだな」


「うん」


 彼らは今後について話し合う。屋水の神『屋水姫』、昔々の化け物『大湊の化身』、溢れては暴れる鬼、問題は山積みである。


「大湊の化身は完全には復活していないってどういうこった?」


 目黒はその事実に衝撃を受けた。この場にいる多くが、そのような考えはなかっただろう。決して推測ではなく、見たままを白鈴が口にした。


「分かりやすく言うと、防がれている。祠は過去のツキビトが残したものだからな。たしかに大鳥の祠の封印は解かれた。だが今のところ、鬼の足だけが出ているようなものだ」


「足? 鬼の足?」いなびは首を傾げる。


「屋水姫が未だ大鳥の祠で蓋を開けている。開け切ったら、それが最後だ」


「ってことは。やつを倒せば、開いた蓋はまた閉じられる、ってことでいいか?」


「そういうことだ」


「おうおう。わかりやすいじゃねえか」


 彼らは再度挑む気でいた。その力に圧倒されたはずだ。


 経験していようと、挑まないわけにはいかなかった。

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