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千客万来(センキャクバンライ)  作者: つかばアオ
_2の2 近付く影 正体 蘇る記憶
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第15章「大鳥の祠」_6_END

 争いはさらに過酷な域へと到達する。限界が見えない。無尽蔵に力を引き出す火門は山のようで、白鈴はなんとか渡り合う。


 彼女も段階的に実力を発揮している。とはいえ――。


「先程お前は復讐ではないと言ったな。お前は鬼。鬼となったのは、お前のなかに鬼となるだけのものがあったということだ。なのに、今、復讐ではないと言うのか。ではなぜ、この場にいる」


 白鈴は倒れていた。凌駕することは難儀だった。


 彼女の心気では防げない。見覚えのある攻撃。鬼雪崩だ。火門は「がしゃどくろ」と同じ方法で攻めてきた。


 驚きはあれど、いま考えると不思議でもなんでもないだろう。


 もう一度、まともにうけて耐えられるようなものではない。


 火門は返答を待たない。鬼雪崩で止めを刺すことにした。


 それでも、彼女は立ち上がると、更なる次元へと向かう。


 埋火蝶。


 ひとまず危うい局面は打開される。


「この国には、どれほど絶望へと沈められようと、未だ諦めず、互いに信じ、鬼に抗い続ける者たちがいる。戦いを一度終えようが。どれだけ離れていようが。誰かをそばに感じ」


 彼女は意志を示す。戦いを継続させた。


「私は確かに死人だ。しかし、大湊。お前には理解できないのかもな」


 その勢いは衰えることはなし。これまでは綱渡りのような戦闘でしかなかったが――埋火蝶――彼女の火は軟弱な地盤を固め戦況をひっくり返そうとする。


 山のようで、とは、どちらのことであったか。


 火門も鈍化せずにいる。追い詰められるのではなく、追い詰めようとする。


「領主となっても、要らないと捨てる。利用し奪うばかりで。お前が失ったものだ」


 彼女は終わらせようとした。猪武者。


 それは正にこう言えるだろう。止めの一撃だ。


「自由を掴もうとする。尊い命からなる。ひとの思いだ。私はそれだけでここにいる」


 火は燃え続ける。危なげなく美麗さは失わず死命を決する。この戦いはそのように見えた。


「聞けば。思い。それがどうした。取るに足らない」


 火門は少したりとも姿勢を崩さなかった。


 すると火門の体、その内側から、いくつもの歪な腕が出る。まさかの出来事だろう。『大湊の化身』が突き破るようにして姿を現す。


 白鈴は両手に囚われてしまう。もちろん火はところかまわず燃え移っている。火移り。しかし、いよいよ見えた化身の顔は表情を変えたりはしない。


「お前は鬼だ。人であった。今どうだ。同じはずだ。お前は、違うというのか」


 化身の言葉と同時に彼女は侵食されていく。鬼の手から染まっていく。小さな肉体に精神とじわりじわりと、消えぬ火も消えてしまう。


「わたしは。わ、たしは」


 彼女はぼんやりと見詰めていた。濁流のなか救いのある安らぎが照らす。


『だめ……。白鈴、ダメ』


 遠い場所。傍にはいないはず。シュリの声である。


 白鈴は視界が開ける。「そうは思わぬ」


 大湊の化身は断じて許さない。そこに猶予など与えなかった。共にあることを強く望む。


 白鈴は両手に掴まれたまま化身に食べられてしまう。飲み込むとはすこし異なるか、自身の腕ごと咀嚼しており消化をよくしているようだった。


 難なく食べ終えると、馴染まなく気に入らなかったようで、埋火蝶陰影や衣服といったくずを乱暴に吐き出す。


 化身は取り込んだ影響で、体内の膨らみからげっぷをする。


「だからいつまでもお前は弱いのだ」


「これが、力か」と呟く。化身は吐き出したばかりの埋火蝶陰影に目を向けると、それに腕を伸ばす。


 ところが、手が届く前に、美しき刀はひまわり色の髪を持つ彼女によって奪取される。ヒグルだ。


 彼女の周りには、シュリと上井、いなびがいる。


「それを、渡してもらおうか。主のいない武器に価値などない」


「渡すわけないでしょ」


 ヒグルは従わない。彼女は全力で阻止するつもりでいる。


「それと、お前もだ」


「シュリ?」いなびはそう言って、彼女のほうを見る。


 間隔を置かず、複数の腕がヒグルとシュリに襲い掛かる。とくに反応できたのは上井だった。彼はシュリを守った。伸びる腕からひとつ防いだところで安心はできないが、おかげでいなびも参戦できる。


 ヒグルも回避する。しかし逃れ続けるのにも限度がある。


 苦しくなる一方でとうとう追い込まれると――。


 そこで遅れてやってきた男が二人いる。彼らは危機をはねのけた。


「させるわけがねえだろ」


 目黒はそう言った。糸七は何も言わなかった。


 化身は攻撃をやめる。焦れったいと考えた。手段を変える。その二つ以外は、どうなろうが関係ない。


「邪魔だ。まとめて潰してやる」


 黒色の球体が浮かぶと、丸みを維持したまま膨張する。


 彼らはその場を離れようとはしなかった。困難に立ち向かう。シュリは扇を広げ、ヒグルは魔法の壁を幾重にも重ねる。


 凌げず防壁は破られる。


 目黒と糸七はというと、球体を打ち破ろうとした。


 黒の球体は十分なほどその形を変えた。消滅し、そこは化身だけが立っている。


 化身は力に物足りさなを感じていた。妙に大人しいという考えはあったが、静かな大鳥の祠を目の当たりにして気付く。


「あと少しのところを。最後の最後で足掻いたか。あとは、お前だけだったが」




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