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千客万来(センキャクバンライ)  作者: つかばアオ
_2の2 近付く影 正体 蘇る記憶
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第13章「なんのその忍び娘」_2

 彼らの活動の中枢となるところ新井戸屋敷、白鈴は上井の案内により間関衆代表イワノメという男に会いに行く。これまでの話を聞く限り、間関衆代表イワノメは確実にいなびと顔を合わせており、言葉を交わしている。行方をおそらく知っている。


 これから根深く訪問することから、彼女に懸念がないわけではなかった。ヒグルは言っていた。『大湊と間関衆、関係がすこし険悪である』。


 かといって、「尋ねない」という選択も白鈴にはなかった。


「イワノメ殿はいるか。下屋敷いなびについて話をしたい」


 上井は、新井戸屋敷は初めてではないように見える。場所を知っていることもそうだが、彼は自らどうするべきかを考え、率先して行動している。そして、同様に危惧もする。


 屋敷を案内する男は、二人を庭の見える部屋へと連れていった。


 しばし待たれよ。イワノメはいるのだろう。


 とはいえ、おおかた予想していた事態となる。


 二人は襲撃を受ける。端から相手にしていないのか。「罠」で張り巡らされた部屋だった。どれも捕らえるのではなく、殺意がうかがえ、致命傷を与えるようなものばかり。


 並の人間では、と比べるのもおかしな。あまりにも度が過ぎている。


 白鈴は一度固く閉ざされた部屋から、庭のほうへと飛び出した。


「わかってはいたが。こうなるか」


 上井も脱出している。彼は何も言わない。口を閉じており、戦う用意をする。


 周囲には、間関衆。数はいかほどか。忍びだらけだ。二人を取り囲んでいた。


 無言で始まる。


 彼女からしてみれば、望まぬ戦闘が行われる。


 白鈴は数人と、その力をぶつけ合った。しばらくして彼女は多少の進展を見るため声を挙げる。


「イワノメとやら、聞いているのだろ? 話がしたい。下屋敷いなびについてだ」


 白鈴の言葉に、返事をする者はいない。どいつもこいつも寡黙だ。けれど、戦闘はたしかに中断していた。一時的に間関衆は攻撃をやめている。


「まだ、続ける気か?」


 対話の余地がないと判断すべきか、白鈴が推察していると、その場に「縄」で縛られた二人が連れて来られる。シュリと糸七である。


「白鈴、ゴメン。捕まっちゃった」


「面目ない」


 武器を捨てろ抵抗するなと指示があり、白鈴は相手の意向に従うことにした。


 


「あのあの、ちょっと。縄、きつくない? 少しだけ緩めてもらえると、ありがたいんだけど」


 シュリは座っていた。肩を揺らし、体をくねくねと動かしながら、近くにいる忍びに意見する。


 その忍びは、わずかな反応はする。だが、縄を緩めることはなかった。


 白鈴も、その後、身動きができないようにきつく拘束されている。四人とも捕まり、暴れることもなく、広い庭で横並びとなった。


 新井戸屋敷の奥から、男が一人姿を現す。


「イワノメか」


 白鈴は言った。彼女には、頬に傷跡がある男がそうなのだろうとしか思えなかった。


 庭まで降りることはなく、屋敷内で見渡すように立ち止まる。男は鼻先でふんと笑う。「そう。私が、イワノメだ」


「どういうつもりか、教えてもらえるか」


「このところ、里の周辺では、鬼が増えている。ゆとり、という点で、はっきり言ってお前たちを歓迎できない。小さな体の割には歪な力を持つ女、ひまわり色の魔法使いなど、理解はできるとおもう」


「だから、望みを言えと言っている。『ただ殺す』。そのつもりがないのだろ」


「間関に、何しに来た」


「いなびがここに来ていたと聞いた。いなびの居場所を知りたい」


「いなびはここにはいない。屋敷に訪れた後、昨日から、あの子は間関の里から姿を消している」


 消えた。意味合いはあまり良いものではない。明るくはない。白鈴は感じて、黙った。


「では、要望どおり、私の望みを伝えようか」イワノメは落ち着きのある態度を続ける。「いなびを探して、私のもとまで連れて来てもらえるか。あの子に、話し忘れたことがある」


 相手のやり方から、白鈴は意図を汲み取ろうとした。私にやらせたいことがある。そう言っているように聞こえる。


「どうだろう。できるか」


「わかった。引き受けよう」


 イワノメの合図により、白鈴と上井の拘束が解かれる。


「わたしたち、は?」


 シュリはごねずおそらく理解したうえで問いかけている。糸七は言うまでもない。


「二人は、そのままでいてもらう。逃げてもらっては困る」


 拘束時に取り上げられた刀、かげかげを白鈴は返してもらう。


「手掛かりとなるものは何かないか? まずいなびの居場所を知りたくて、ここに来た」


 ふん、と彼は思考する素振りを見せた。「現在、この間関の里に、ヌエ、『幸畑』という男がいる」


「幸畑? 幸畑が?」


「いなびは、それを知っていた。もしかしたら。問題を起こしていないとは思いたいが」


「なぜ幸畑が、間関に……?」


「私から言えるのは、このくらいだ」


 姿を消したという、いなび。大湊お抱えのヌエ。不穏だ。


 穏便とは程遠く望んでいたかたちではなかったとはいえ、それをなんとか終えて、白鈴は上井と共に新井戸屋敷を出た。


 ヌエか、と彼女が考えていると、一人の女が横を通り過ぎる。


「下屋敷いなびは、裏山の古いお社に囚われている。お急ぎを」


 女は小声でそう言った。振り返ると、その女の姿はどこにもなかった。

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