毒電波
昔から僕は疑問に思って居ることが有る。
日本人という人民は時間の正確さに異常な執着を持っている。
電車の時間。
バスの時間。
待ち合わせ。
その他色々。
何で?
等と思うことが有る。
腕時計を目の前に近づけ時間を確認している風景はよく見る。
昔。
そう昔自然と共に有った日本ではそんな事は無かった。
筈だ。
太陰暦の時代はそうではなかった。
筈。
まあ~~過去の事だし分からんよね。
太陽暦になってからか?
其れも違う気がする。
恐らく時計がキッカケだろう。
時計と言っても日時計とかではない。
水時計でもない。
少なくとも懐中時計が普及し始めて変化し始めたと思う。
時間を意識して生活し始めたのは確かだ。
とはいえ田舎や離島で生活している者はそうでもない。
何故か分からない。
反対に都会に住むものは異常な迄に時間に縛られている。
此処らへんは分からん。
分からんのだが近年になって……。
正確に言えば腕時計が普及し始めて其れが酷く成っている気がする。
時間に対して神経質な者ほど腕時計を手放さない。
というか時計を見る頻度が多い。
僕?
殆ど見ないけど。
腕時計は捨てました。
アレを見たから。
アレに自分も支配されかけたかと思うとゾッとした。
今現在離島に引っ越し自給自足の生活をしてる。
時間に縛られない……。
違うな。
本当の事を言おう。
僕は怖かった。
腕時計の見る人の目。
全員の目。
いや違う。
時間を見ている。
だが時計を見てない。
全員首を僅かに傾げ何かを聞いていた。
腕時計から。
時計で時間を見ているのではない。
時計から何かを聞いてるのだ。
全員ではない。
毎回ではない。
だけど時々聞いてた。
腕時計から。
虚ろな目で。
偶然と思った。
だが聞いていたのだ。
ナニカを。
ナニカ。
恐らく時間に関するナニカ。
其れを虚ろな目で聞いていた。
念のためにと僕はビデオカメラで自分を撮影した。
一度目。
普通。
二度目。
普通。
三度目。
聞いていた。
時計から。
今度は意識して聞いてみる。
声が聞こえていた。
声が。
ああ。
そうか。
僕は此れを聞いていたんだ。
毎日。
毎日。
聞こえてくる原理は分かる。
其れが説明してくれたから。
時計に使われている金属と歯の詰め物
其れが偶然にも鉱石ラジオとして機能していた。
其れが何処からか流される電波を受信。
腕時計を持つものに囁いてたのだ。
辛うじて自我を取り戻した僕は腕時計を捨てた。
その後は速攻で仕事を辞め離島に引っ越した。
腕時計から流れる毒電波を聞く環境を変えたくて。