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魔王城のグルメハンター  作者: しゃむしぇる
第3章 魔王と勇者
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第077話 芽吹き

077話~


 勇者との面会から数日が経った。あの嵐のような一日が去ってからは何事もなかったように、いつもの日常が戻った

 アルマ様に料理を作り、暇を見つけてはギルドで依頼をこなす。


 そんな毎日を送っていたとある日の朝……普段通りに起きた俺は普段と少し違う光景を目にすることになった。


「くぁぁ……んん、んん?」


 いつものように起きて陽が射し込んでいた窓に目を向ける。そこには以前力の果実の種を植えたプランターがあるのだ。

 つい先日アルマ様にデザートとして四種類のステータスの果実をフルーツ盛りにして出したのだが、その時に残った種もそこに植えていた。

 

 最初に種を植えてからかなり日も経っているいるし、やはり人工的な栽培は無理なのか……と最近諦めていたのだが。


 今日……なんとプランターから青々とした若葉が4つも生えてきていたのだ。


「こ、これ……雑草じゃない……よな?」


 寝ぼけていた意識が一気に覚醒し、目の前の光景が現実か否かを確認すべく、俺はプランターに顔を近づけた。


「確かに種を植えたところから芽が出てる……間違いない。」


 芽が出たことは喜ぶべきことなのだが、それと同時にとある疑問も発生した。


「人工的な栽培が無理って結論付けられていたはずなのに……どうしてこれは芽を出したんだ?」


 何か特定の条件があるのか?誰も思い付かなかったような難しい条件が……。


 頭を捻って考えてみるが、考えられる要因が多すぎて結論に思い至らない。


「……こういうのは俺みたいに知識のない人間が考えても仕方がない。」


 餅は餅屋にということわざがあるように、これは詳しい人に聞いてみることにしよう。










 その日の夜……いつものようにギルドへと足を運ぶと、酒場には最早レギュラーメンバーとなりつつあるカーラと、毎日いるリルの姿があった。


「こんばんは。」


「おっ、今日も来たね。でも来てくれたところ悪いんだけど、今日は討伐依頼はないんだ~。」


「そうなんですか。でも、それはちょっと好都合だったかもしれないです。」


「ん~??それはどういうことかな?」


「実はちょっとカーラさんに聞きたいことがあって。」


「アタシにかい?」


「はい、実はこれなんですけど……。」


 俺は件のプランターをテーブルの上に置いた。


「これって……何の芽~?」


「アタシが見ても普通の草にしか見えないけどねぇ。」


「これ、実はステータスの果実の芽なんです。」


「「ブフッ!?!?」」


 俺がそう告げた瞬間に、二人は口に含んでいたお酒を驚きのあまり吹き出してしまう。


「ゲホッゲホッ!!な、なんだって!?」


「あ、いや……だからステータスの果実の芽なんです。……多分。」


「けほっ、ステータスの果実って、人工的な栽培は無理だって大分昔に研究結果が出てたと思ったけどなぁ……。」


「そうだよ。当時の研究機関が結論付けてる。」


「その話は俺もジャックさんから聞いてはいたんですけど……芽を出さないなら、種を持ってる意味がないな~って思ってダメ元で試しに土に植えてたんです。」


「それで芽が出たって?」


「はい。」


「試しに鑑定してみてもいいかい?」


「むしろお願いしたいところでした。お願いします。」


 そしてカーラはじっと四つの芽を眺め始めた。すると、声を震わせながら口を開く。


「……ま、間違いないよ。これは……ステータスの果実の芽だ。」


「えぇっ!?」


「い、いったいどうやったんだい?」


「特に特別なことはしてなくて……ただ土が乾かないように水をあげてただけなんですけど。」


「ま、まぁ……なんにせよこいつはとんでもない発見だよ。今の今まで語り継がれてきた常識をぶっ壊すようなとんでもない……ね。」


「常識だけじゃないよ。もし仮に、ステータスの果実が栽培可能ってことになれば、市場にもかなり影響が出るだろうね。まぁ、それもキミがこれをどうしたいかによるけどね。」


 そう言ってチラリとリルはこちらを見つめてきた。


「う~ん、別にどうしようってことは考えてなかったんですけど……。ただ、味が良い果物だったので、アルマ様のデザートに使えればなって思ってました。」


 俺がそう告げると、カーラとリルはお互いに顔を見合わせてクスリと笑った。


「あはは、キミらしいや。」


「まったくその通りだねぇ~。もうちょっと欲ってのはないのかい?その栽培方法を特定して研究機関に売れば……それこそ一生遊んで暮らせるカネだって手に入るんだぞ?」


「お金は……もう要らないです。」


 ただでさえ、まだあの時賭場で稼がせてもらったお金を使いきれていない。それに加えて毎月安定した給料が入るし……。


「まぁ、別段魔王様のためにそれを使うなら秘匿しといても良いんじゃない?むしろその方が私は良いと思うな。」


「アタシもリルの意見に賛成だ。」


「二人がそう言うなら、これは俺が裏でこっそりやっときます。」


「それが良いよ。私達も秘密にしとくからさ。」


「助かります。」


 まぁ、今はただ芽を出しただけだ。あくまでもこれは始まりの一歩に過ぎない。これをしっかりと成長させられるかは……俺次第。

 

 できればアルマ様には毎日美味しい果物を食べてほしいし……成功すれば良いんだけどな。



それではまた次回お会いしましょ~

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