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魔王城のグルメハンター  作者: しゃむしぇる
第1章 黄金林檎
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第006話 称号

第006話~


 アルマ様の黄金林檎を入手するためにそれから毎日、俺のレベリングと称してアルマ様と自分の命を懸けた手合わせが始まった。


 初日にレベルアップした時に会得した()()()()というスキルのおかげで、喰らえば死ぬような攻撃は避けることができる。だが、攻撃を避ければ避けるほどアルマ様は不機嫌になっていく。


「む~、カオルに全然攻撃当たんない。なんでなんで~っ!!」


 アルマ様が不機嫌になればなるほど、攻撃は苛烈になり俺のスキルの()()()()が精度を増していく。


(ふ~っ……危ない危ない。怒ったアルマ様の攻撃はやばいんだよな。)


 かといってアルマ様の機嫌をとるためにわざと攻撃に当たるわけにもいかず、ひたすらに回避に専念していると頭の中に何度目かの例の声が響いた。


『レベルが1上昇しました。またパッシブスキルである()()()()の熟練度が上昇したため、新たなスキル()()()を習得しました。』


(受け身?また新しいスキルか。)


 そう声が響いた瞬間だった。いつものように静止していた世界が突然動き始め、アルマ様の小さな拳がこちらに向かってくる。


「はっ!?」


 驚いたのも束の間、アルマ様の小さな拳が俺の腹にめり込んだ。


「うっ!!」


「あっ♪」


 俺の視界に最後に鮮明に映ったのはアルマ様の喜ぶ表情だった。それから先はもう何が起こったのかわからなかった。視界が急にグンと加速したかと思えば、その次の瞬間には背中が思い切り壁に打ち付けられ、視界がチカチカと暗転し、一瞬呼吸ができなくなった。


「かはっ──!!」


「やったやった!!今日はアルマの勝ち~♪……ってあれ?カオル大丈夫?」


 壁に打ち付けられ崩れ落ちた俺に向かってアルマ様が心配そうに歩み寄ってきた。


「な、なんとか……無事です。」


 幸いなことにも、アルマ様の攻撃をもろに喰らったのにも関わらず背中が鈍く痛い程度で済んでいる。これも先ほど会得したスキルのおかげなのだろうか……。


「えへへ~よかった~。カオルが死んじゃったら美味しいごはんもお菓子も食べられないもんね~。」


 にこりとアルマ様は笑うと、俺の手を引っ張って立ち上がらせてくれた。


「じゃあ今日はアルマが勝ったから、おっきいケーキお願いね~♪」


 鼻歌を口ずさみながらアルマ様はトレーニングルームを後にした。そして彼女がいなくなると、すかさず部屋の隅で見守っていたジャックがこちらに駆け寄ってきた。


「カオル様大丈夫ですかな?」


「ごほっ!!ちょっと背中を打ち付けたぐらいです。」


「よもや魔王様の攻撃を喰らって、生きておいでとは……レベルに見合わない耐久力ですな。」


 ホッホッホと笑いながらジャックはそう評価した。


 マジで笑い事じゃないんだけどな……。スキルってのがなかったら普通に死んでるぞ。


 そう心の中でツッコミを入れていると、再び声が響く。


『新たな称号を入手しました。』


「新たな称号?」


 聞こえてきた声に思わずそう聞き返すと、ジャックが驚きの声を上げた。


「むっ!?称号ですと!?いったい何の称号を手に入れたのです!?」


「あ、ちょ、ちょっと待ってください。」


 食い気味に問いかけてくるジャック。彼に静止の言葉を投げかけていると声が響く。


『あなたの新たな称号は()()()()()()()()です。称号効果によって防御力ステータスにボーナスが与えられます。また自然治癒能力が大幅に増加します。』


「……なんか()()()()()()()()って称号になりました。」


「ホッホッホ、なるほど。」


 それを聞いたジャックはクスリと笑った。そんな彼に俺は称号について問いかける。


「それでこの称号っていうのはいったい?」


「称号というのは何らかの条件を満たした際に与えられる……いわば実績のようなものです。おそらくカオル様が、魔王様の攻撃を喰らう事で機嫌をとったので与えられたのかと。」


「へぇ……ちなみに質問なんですけど、ジャックさんにも称号があったりするんですか?」


 ふと気になったので問いかけてみた。すると彼は自慢げに胸を張って答えてくれた。


「もちろん、私には()()()()()という称号がございますよ。」


 あぁやっぱり……。まぁそんなんだろうなとは思っていた。だがそれは彼にとって名誉なことなのだろう。とても誇らしそうに語っているからな。


 そうして彼が自分の称号について熱く語っていると、不意にハッと我を取り戻した。


「おっと、少し熱くなりすぎましたな。長話を聞かせてしまって申し訳ありません。カオル様にはこれから魔王様にケーキを作るという大事なお仕事が残っておりましたな。」


「大きなケーキって注文が入ってますからね。」


「ホッホッホ……どうか、よろしくお願いいたしますぞ。カオル様────。」


 ぺこりとお辞儀をしたジャックに見送られ、トレーニングルームを後にした俺は厨房へと入ると、せっせとアルマ様用の大きなイチゴのケーキを作るのだった。


 ちなみになぜ数ある果物ののケーキの中から、イチゴのケーキを選んだかと言うと、アルマ様の大好物がイチゴだからという理由だ。だがここで気を付けなければならないことが一つ……。イチゴが好きでも、アルマ様は酸っぱいイチゴが嫌いだ。だからケーキに盛り付ける際には細心の注意を払って盛り付けている。機嫌を損ねられても困るからな。


 今思えばこういうところでも機嫌を伺いながらやっているからこんな称号がついてしまったのかもしれない。


 そしてケーキを作り終えた俺はアルマ様の部屋の前へとそれを運んだ。すると、ちょうどジャックが部屋から出てきた。


「おぉ、もう完成したのですかな?」


「はい、お願いします。」


「承りました。では……。」


 ジャックはケーキを受けとると、再び部屋の中へと入っていく。すると、中からアルマ様の喜ぶ声が聞こえてきた。


「ケーキ来たっ!!カオル早~い♪それにアルマの大好きなイチゴのケーキ、えへへ、いっただっきま~す♪」


 喜んでくれて何よりだ。後は……味の感想を――――。


 聞き耳をたてていると、再びアルマ様の声が聞こえてきた。


「ん~~~~っ!!」


 聞こえてきたのは何かを堪えるようなそんな声。


 まさかイチゴが酸っぱかったか!?と、不安になったのも束の間……。


「おいし~っ!!」


 そうはしゃぐ声にホッと胸を撫で下ろす。


「美味しい……か。よかった。」


 美味しいと喜ぶ言葉は、何度聞いても料理人冥利につきるものだ。


 本当ならばどんな表情で食べているのか、間近で眺めたいが……それは恥ずかしいとアルマ様が許可してくれないからな。今は言葉を聞くだけで我慢しておこう。



それではまた次回お会いしましょ~

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