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魔王城のグルメハンター  作者: しゃむしぇる
第9章 新たな生活
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第318話 腐食地ミスト

318話


 クリスタによるトウカの勉強会が終わり、解放されたトウカは頭から煙を吹きながら机に突っ伏した。


「お疲れさまでした。一応教えられることは教えましたから、これからの生活に困ることは無いでしょう。」


「ううぅ……ウチが勉強嫌いなの知ってるくせに。」


「フフフ、社会勉強は必要ですよ。」


 すねた表情を見せるトウカの鼻をツンとクリスタは指でつつくと、今度は俺の方を向いて言った。


「カオルも付き合ってくれてありがとうございます。」


「大丈夫ですよ。こっちも聞きたい情報は聞けたので。」


 そして俺が立ち上がると、トウカが体を起こして問いかけてきた。


「カニバルのところに行くのか?」


「もちろん、善は急げってやつだ。今から行ってくるさ。」


 幸いまだ日は高い。アルマ様の次の食事まで時間もある。場所もわかっている。行かない手はない。


 すると彼女は立て掛けてあった殺生木でできた弓矢を携えて詰め寄ってきた。


「ウチも行く。カオルは確かに強い、でもウチにも神獣狩りとしての使命がある。だから一緒に行かせてくれ!!」


 そう言った彼女の眼には強い決意が宿っている。この様子だと何を言っても引かなさそうだな。


「わかった。じゃあ一緒に行こう。」


「……感謝する。」


「気を付けて行ってくるのですよ?怪我をして帰ってきたら……またお勉強ですからね?」


「それは嫌だッ!!」


「フフフ、それなら気を付けてきてください。」


「うぅぅ、わかった。」


 クリスタにおびえている彼女を連れて俺は移動魔法を使った。目的地はもちろん腐食地ミストだ。





 移動魔法でトウカに教えてもらった地図の場所へと移動すると、目の前にはユノメルのいる死の島とは比べ物にならないほどおどろおどろしい光景が広がっていた。


「ここが腐食地ミスト……。」


「見ての通りすべてが腐った沼地だ。」


 枯れ腐った樹木、ポコポコと臭気を放つ泡が底から浮き出しているどこまで底があるかわからない沼。骨になった魔物の死骸がいたるところに散らばっているという光景。


「この沼地の奥にカニバルが住んでいる場所があるはずだ。ひとまずはそこまで進もう。」


「わかった。」


 トウカの道案内で腐食地ミストを進んでいると、辺り一帯に深い霧が漂い始めた。


「霧が出てきたな。カオル、ウチの後ろから離れるなよ。」


 トウカの背中を見失わないように歩き続けていたが、どんどん濃くなってゆく霧のせいで遂に彼女を見失ってしまう。


「くそ、見失った。トウカー!!聞こえるか!!」


 大声で彼女の名前を叫んでみるが反応はない。


「見失ったのは今さっきだ、歩いているペース的に声が届かないはずはないんだが……。」


 不思議に思っていると、ナナシが話しかけてきた。


『主、この霧は少々特殊だ。この霧のある範囲一帯に魔法が展開されている。音や匂い、気配を全て遮断されているようだ。』


「なんだって!?」


 そうなると、トウカの後を追うのは無理だ。どうすればいい……。


 立ち止まって悩んでいると、ナナシが助言をくれた。


『魔力でできた霧ならば魔力で中和してやればいい。全身から魔力を放出して打ち消すのだ。』


「了解。」


 ナナシの助言通り体から魔力を放出すると、少し視界が取れるようにはなった。


「これだけ魔力を使っても視界がこれしか取れないのか。」


『それだけ魔力に関しては長けている者だということだな。思った通り今回の相手は相当に強いぞ。』


「……ナナシ、まさか今回のカニバルとかいう神獣を狙ったのって強いのがわかってたのか?」


『無論、弱い神獣なんぞに価値などない。それにそのカニバルとやらは……恐らく我らの獲物を奪った輩だ。』


「なんでわかる?」


『この霧から複数の魔物の魔力を感じる。あの玉座に伏していた神獣と同じ魔力を……。』


「なるほどな。俺にはそういうのはちっともわからん。」


『主にもいずれわかるようになる。…………タブンな。』


「はっ、多分かよ。」


 ナナシとそんなことを話しながら歩いていると、突然ブワッと眼の前の霧が晴れる。それと共に、とんでもない光景が目に入り込んできた。


「や、やめろぉぉぉぉっ!!」


「はへ?」


 視界の先にはなにやらヌメヌメのスライムのようなものに取り込まれかけているトウカの姿が……。


『主よ、あれで本当に大丈夫なのか?』


「さぁな、でもまぁ助けてやるか。」


 既に服の大部分を溶かされつつある彼女を助けるため、俺はアーティファクト手に魔物へと向かった。

 


それではまた次回お会いしましょ〜

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