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魔王城のグルメハンター  作者: しゃむしぇる
第1.5章 レベリング
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第029話 再び

029話~。すみません、体調が悪く執筆が遅れてしまっていました。ある程度回復はしてきたので、明日からも頑張ります。


 光が収まってくると、俺は見たことのある屋敷に転移させられていた。

 それはジャックたちも同様で……。


「あれ?ジャック~ここどこ~?お城……じゃないよね?」


 直前までラピスと遊んでいたらしいアルマ様は、見たことのない部屋をみて首をかしげた。


「こちらは私の別荘にございます。」


「なるほど、あの部屋自体が移動魔法の陣だったということか。」


 ジャックの答えにラピスは納得したようで、一つ大きく頷いた。


 状況を説明したところで、ジャックは軽く頭を抱えると、俺に向かって言った。


「カオル様、私めは魔王様に目を配らせねばならないようですので、お一人で行って頂きたいのですが……。」


「大丈夫ですよ。」


 彼の事情は良くわかる。だから一人で買い物に行ってこようとしたその時だった。


「カオル?どこ行くの?」


 不意にアルマ様に服の裾をきゅっと掴まれた。


「えっと……ちょっと買い物に――――。」


「アルマも行く!!」


「「え゛っ?」」


 思わぬアルマ様の言葉に、俺とジャックの口から思わずそんな声が漏れた。


「ま、魔王様外は危険ですので……。」


「やだもん、行くって言ったら行くの!!それにアルマ魔物なんかには負けないよ?」


「そ、それは重々承知でございますが……。」


 渋るジャックのことをアルマ様はひたすらに上目遣いでじっ……と見つめ続けた。

 

 すると、最終的にはジャックのほうが折れた。彼はしゃがんでアルマ様に視線を合わせると、まっすぐにアルマ様の目を見ながら言った。


「わかりました、では一つだけ約束してください。私と、カオル様から絶対に離れないよう……どうかお願い致します。」


「うん!!約束する~。」


 にこりと笑ったアルマ様は、俺の手をきゅっと握った。


「これで離れないもん。大丈夫だよね~?」


「えぇ、問題ありません。」


 そんなアルマ様の姿をみてジャックも笑う。


「ラピスはどうする?ここにいるか?」


「我も行くぞ。一人取り残されるのはつまらんからな。」


 ラピスもどうやらついてくるつもりらしい。


「それでは外に出る前に……皆様、こちらを。」


 そう言ってジャックはこちらに使い捨てのマスクを手渡してきた。


「外ではなにやら得体の知れぬ病気が流行っていると聞き及んでおります。なのでこちらを装着お願い致します。」


「ん~っ。」


 そう、この世界では未知の感染症が蔓延っている。万が一でも感染したら大変だ。


 そして全員がマスクを着けたところでジャックはパチンと指をならした。


「念には念を込めて、浄化の魔法もかけておきましょう。」


 彼がもう一度パチンと指をならすと、体の周りを青白いベールが包み込んだ。


「では参りましょうか。」


「うん!!行こ~っ!!」


 上機嫌なアルマ様に引っ張られ、外へと駆り出した。


 いざ外へと出てみると、やはり以前と同じく人の通りは少ない。これも例のウイルスのせいだろう。


 そういえば、俺があっちの世界で働くことになって結構時間が経ったが……ウイルスについて何か進展はあったのだろうか?

 こちらの新聞とかを読まないとそういうところはわからないな。


 目的の店へと歩いている最中、たまたま通っていた職業安定所の前を通りかかった。すると、やはり相も変わらずそこだけは人の出入りが多い。それだけ職を探し求めている人が多いということだ。

 そういう面を考えると、俺はラッキーだったのかもしれない。


 そんなことを思っていると、手を繋いでいたアルマ様が話しかけてきた。


「ねぇねぇカオル、ここ……なんか変だね。みんな元気ないみたい?」


 アルマ様は度々すれ違う人々を見て、違和感を感じ取ったのだろう。あっちの世界の人達と、こちらの世界の人達では温度差がありすぎる。アルマ様が不思議に思うのも仕方がない。


「ここには生きる希望を失った人達が溢れていますからね。」


「カオルもお城に来るまではここに住んでたの?」


「はい。その時は恐らくは俺も……あんな表情を浮かべていたと思います。」


 そう話すと、ジャックが横で笑った。


「ホッホッホ、初めて出会った頃のカオル様は表情にまるで余裕がありませんでしたからな。不安と焦燥感に駆られた余裕のない表情だったのを今でも覚えておりますよ。」


 まぁあの時は明日どう生きるかを真剣に悩んでいた時期だったからな。手に残っていたお金じゃ家賃すらも払えなかったし……。


 染々とあの時のことを思い返していると、ふと先程から一人……声が聞こえてこないことに気がついた。


(そういえばさっきからラピスのやつが静かだな。)


 チラリと横を見てみると、先程までいたはずのラピスの姿がない。


「あっ!?ラピスがいな……………あっ。」


 後ろを振り返ると、少し後ろの方でなにやらじっと一点を見つめて突っ立っているラピスの姿があった。

 迷子になったわけではなかったようだ。彼女の姿を確認して、ホッと胸を撫で下ろした俺はラピスの方に歩み寄った。


「ラピス?何見てるんだ?」


「むっ!?あ、いや……なんとも美味そうなものが並んでおると思ってな。」


「美味そうなもの?」


 彼女の見ていた方に視線を向けると、そこには食品サンプルの入ったショーケースがあった。ラーメンやカツ丼等々、とてもリアルに再現されたものがいくつも並んでいる。

 が、そのお店のシャッターは降りていた。


 そしてその食品サンプルにアルマ様も引き寄せられていく。


「ふわぁ……美味しそ~。カオル!!これ食べれるの?」


「残念ながら、食べられません。これは料理を模して作られた……言わばおもちゃのようなものなんです。」


「「えぇっ!?!?」」


 俺の説明にアルマ様とラピスの二人は思わず目を丸くした。


「こ、これが玩具とな!?」


「ここにあるオムライスとか本物みたいだけどね~。食べられないんだ……ざ~んねんっ!!」


 最近の食品サンプルのクオリティは本当に高い。至近距離で見ても本物と見間違ってしまうほどだからな。


「でもオムライス見てたら食べたくなってきちゃった。カオル!!今日のお昼ご飯……オムライスね!!」


「わかりました。ラピスは何がいい?」


「我か?我はこの……む?これは何て書いてあるのだ?」


 ラピスが指差したのはラーメンだった。


 あちらの世界と、こちらの世界では言語が違う。口で話す言葉は同じでも、文章にして表すとまったく別ものだ。あちらの世界の言語しか知らないラピスは日本語で書かれた()()()()という言葉を読むことができなかったのだ。


「ラーメンか。」


()()()()?これでそう読むのか?」


「あぁ。」


「むむむ……我の知らん言語がまだ存在していたか。この世は広いのだ。」


「それで?お昼はラーメンでいいのか?」


「うむ!!これを食ってみたいのだ!!」


 なら中華麺をすこし買っていくか。


「さ、昼御飯の時間になる前に帰りたいから早く行くぞラピス。」


「お、おいカオル!!我を置いていくでない~っ!!」


 なんだかんだ道草を食ってしまったが、再び目的の店へと向かって歩みを進め始めるのだった。

それではまた次回お会いしましょ~

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