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魔王城のグルメハンター  作者: しゃむしぇる
第6章 龍闘祭
208/351

第208話 第2ラウンド

208話~


「さて……第2ラウンド開始だ。」


 そう口にすると共に俺は魔神の腕輪に魔力を流し込む。するとバチバチと俺の体の周りで稲妻が発生し始めた。

 それを見た観客や他の五老龍達がざわめく。


「アイツ……雷も使えんのか!?」


「あらまぁ、多彩な技を持ってるのねぇ。ラピスの従者さんは。グロム、あなたの立場が危ういんじゃないかしら?」


「バカ言え、オレの雷撃に匹敵するほど強ぇ攻撃なんざできるわけねぇさ。」


「むっふふ、それは……どうかのぉ?」


「「っ!!」」


 そう話していたグロムとタラッサの背後にラピスが音もなく忍び寄り言った。


「はっ……相当アイツに入れ込んでるみてぇだなラピス。」


「無論だ。あやつは我が唯一認めた者だぞ?」


「自分が認めたからオレよりも強ぇ……ってか?」


「まぁ少なくとも我よりは強いからな。くっくく……。」


「「はぁっ!?」」


 ポツリと何気なく溢したラピスの言葉にグロムとタラッサは大きく目を見開いて驚く。


「さすがにそいつは……冗談だよな?」


「さぁ?どうかのぉ~。見ていればわかる。」


 そしてラピスが再び傍観を始めると同時に、俺は動いた。


雷爪(らいそう)


 ポツリとそう呟くと同時に俺の周りでバチバチと音を立てていた稲妻が腕輪をはめた手に集まり、大きな雷の爪を作り出す。


 俺はそれをソニアへと向かって振り下ろす。


「喰らえッ!!」


「っ!?」


 俺が雷爪で切り裂いた軌道をなぞり、ソニアへと向かって雷の閃光が飛んでいく。


 今まで俺の攻撃を真っ正面から受けていた彼女だったが、この攻撃で初めて身をかわした。ソニアという標的を失った雷の閃光は闘技場の壁を大きく切り裂いて止まる。


「………………。」


 呆然とそれを眺めていたソニアへと俺は近付くと、雷を纏わせた拳を龍系統の魔物の弱点である鱗の柔らかいお腹部分へと向けて打ち放つ。


「っ!?しまっ……きゃあぁぁぁぁぁっ!!」


 拳がピタリと彼女のお腹に触れた瞬間、バチバチと稲妻が彼女の体を伝う。

 いくら表面が硬くても、体の内部を伝う電流は防げないだろう。


 そして彼女が白目を剥いたところで雷の放出をやめると、ソニアは力なく地面に横たわった。その様子をエルデが確認しに来ると、ソニアの様子を眺めて一つ頷き俺の方に手を挙げた。


「エンラの従者気絶により、勝者はラピスの従者!!」


 エルデの声と共に歓声が沸き上がる。そしてソニアの主人であるエンラが闘技場の中央へと歩いてきた。


「うちのエンラを倒すなんてやるじゃない?」


 俺にそう告げると、彼女は人の姿のままで龍の姿のまま気絶しているソニアをひょいと持ち上げる。


「にしても、まさかあなたに嫉妬してたなんてね。ワタシの従者はこの子にしか務まらないのに……もう少しソニアの気持ちを察してあげる必要があるわね。」


 そしてクルリと踵を返すと、エンラはこちらに背中を向けながら言った。


「ま、ソニアのことを倒したんだから、このまま優勝までかっさらっちゃいなさいよ。それじゃあね。」


 それだけ告げると彼女は闘技場の奥へと戻っていった。


 そしてエルデが闘技場にいる全員へと向かって声をあげる。


「決勝戦、此方の従者対ラピスの従者の闘いは10分後とする!!ラピスの従者よ今は体を休めるのだ。此方の従者は強いぞ?」


「やれるだけやってみますよ。」


「うむ、健闘を期待している。」


 エルデにペコリと一礼すると、俺はラピスのもとへと戻る。彼女の側にはタラッサとグロムの二人もいた。

 彼らのもとへと歩み寄ったその時、グロムの右腕がバチッと光る。それと同時に俺の危険予知が発動する。


「っ!!」


 時間が止まったその瞬間には、俺の目の前にグロムの放った雷撃が迫っていた。いったい何の目的で攻撃してきたのかはわからないが……攻撃されたのなら敵意がある……ってことだよな?


 なら俺がとるべき行動は一つだ。


 止まった時間のなかで俺は剣を鞘から抜くと、グロムの喉元へと突きつける。すると時間の流れがもとに戻り、グロムが驚愕の表情を浮かべた。


「っ!?いつの間に……。」


「いきなり攻撃してきて何のつもりですか?」


「はっ、雷を支配するオレの前で雷を使うお前を試したんだよ。」


「それだけですか?」


「あぁ、それだけだ。」


「…………。」


「カオルよ、それを下ろすのだ。」


 ラピスにそう言われた俺は警戒しながらも剣を鞘へと納める。


「まぁグロムよ、今のでよくわかったとは思うが、迂闊にカオルに手出しはせんことだな。」


「あぁよ~くわかったよ。悪かったな。」


 後味が悪そうにそう口にしたグロムは俺達に背を向けて闘技場の奥へと行ってしまった。


「それじゃあ私も行くわぁ~。頑張ってね~。」


 グロムに続くようにタラッサも奥の方へと歩いていく。そしてラピスと二人きりになると、彼女が声をかけてきた。


「むっふふ、流石はカオルだの。残すはエルデの従者のみだ。」


「エルデの従者に関して何か情報はないのか?」


「兎に角硬いやつだ。それに魔法もなかなか使える。ソニアやリッカほどブレスは強力ではないが……厄介だ。」


「なるほど、まぁ一筋縄ではいかないと。」


「そういうことだの。」


 まぁ今は兎に角次の仕合までの10分間体を休めるとしようか。ソニアとの仕合でだいぶ魔力を消費したからな。


それではまた次回お会いしましょ~

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