七
「……どれに」
目の前に並べられたたくさんの着物。
それはどれも箏蔵にいたころよりも、質のいいものだと、一目でわかるほど、輝いていた。
まさかこの全てが私のために用意されたの……?
いえいえ、そんなはずないわよね。
旦那様は、いくら妖の王といえども、さすがにこれは……。
「はい、どれに、なさいますか?」
相変わらず、冷めた瞳で玲凛は、尋ねてくる。
「どれを選んでも……いいの?」
色とりどりの着物。
着てみたいと思わないわけがなかった。
「もちろん。すべては、花嫁様、あなたのために」
「私のため?」
「はい」
ええっ。
本当に、私のためにこれだけの着物が用意されたの。
恐れ多いけど、このまま玲凛を待たせるのはもっと気が引けた。
「じゃあ……」
私は、藍色の着物を指差す。
「これが、いいです」
「かしこまりました」
ーー手際よく、白無垢から、藍色の着物を着付けてくれる玲凛に感心しつつ、鏡を眺める。
そこに映っているのは、まぎれもない、箏蔵美冬……つまり、私だった。
今日は、私の十六の誕生日で。
今日この日のために私は今まで生きてきて。
そして、今日、死ぬのだと、妖に食べられるのだと思っていた。
それなのに。
「……死んでない」
そう、鏡に映る私の頬は、少し赤い。
血が通っている、証拠だった。
「死、にございますか?」
無感動な瞳を瞬かせて、玲凛が手をとめた。
「……あ」
思わず声に出してしまったけれど。
いつかは、旦那様に食べられる身なのだから、こんなことを思うのはおかしいのかもしれない。
今日になるか、少し先になるかの違いなだけなのだから。
「花嫁様?」
考えて俯いた私に、怪訝な声で、玲凛は、呼ぶ。
「あの、玲凛」
「はい、なんでしょう、花嫁様」
「今までの花嫁は、だいたいどのくらいで、旦那様の……雅楽様の、糧になれたのかしら?」